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三浦大知 × Chilla's Art。プレイヤーと作り手目線で語り合う、ホラーゲームの楽しみ方

『夜間警備』『例外配達』など、話題の短編インディーホラーゲームを制作する兄弟ユニット・Chilla's Artと、ゲームをこよなく愛する三浦大知。作り手とプレイヤー目線で語り合う、それぞれのホラーゲームの楽しみ方。

photo: Takao Iwasawa / styling: Yuya Murata / hair&make: Ryusuke Toyama / text: Keika Kishino, BRUTUS

兄(Chilla's Art)

はじめまして。実は、母が三浦さんをテレビなどでよく見ていて。僕らの作ったゲームを実況してくださっていることも知り、とても嬉しく思っていました。

三浦大知

そうなんですか!こちらこそ、ありがとうございます。僕は本当にチラズさんのただのファンなんですが(笑)、いつも勝手に楽しくプレイさせていただいています。

弟(Chilla's Art)

三浦さんの実況はプレイヤーとして丁寧にやってくださっている印象があって、作り手として光栄な気持ちです。むやみに反応で笑いを取るようなことはせず、純粋にゲームの中のホラー的演出や物語を味わってくれているというか。

三浦

とにかく作品を好きなことが伝わればいいなと思いながら、いつもプレイしています。正直、ゲームがリアクションをとるための材料になってしまうのは、ゲームファンとしては悲しくて。自分も音楽を作っているので、作られたものにちゃんとリスペクトを込めたいんです。

見ていてとても伝わってきます。

三浦

初めてプレイしたチラズさんの作品は『夜勤事件』。チラズさんの恐怖の生み出し方は本当に秀逸で。霊的なものと人間の怖さが融合している部分もそうだし、すべてが語られない良さがあるんですよね。『例外配達』もそうでしたけど、考察する余地があって、空白により恐怖感が増すところが大好きです。

夜間警備(2O23)
Chilla's Art作品の中でも過去最恐との呼び声が高いサイコロジカルホラー。多くの実況動画がYouTubeに投稿された話題作。プレイヤーは警備員となり、深夜の廃ビルの見回りを任される。エンディングは2種類。
(対応機種:PC)
例外配達(2O21)
配達員となり、段ボールを届けていくホラーゲーム。深夜、主人公はある5階建てアパートで配達作業をするが、なにやら住人たちの様子がおかしい。やがて襲いかかってくる、思いもよらない恐怖体験とは……。
(対応機種:PC)

嬉しいです。出てくる人物一人一人が怪しく見えるように、意識して作っているところがあるので。

ただキャラクターを配置しているわけではなく、全員に感情や理由を設定しているんです。

三浦

やっぱり!「何かが起きそう」という、“イヤな感じ”の生み出し方は、チラズさんたちにしかないものがあると思っています。

ちなみに、三浦さんが初めてプレイしたホラーゲームは何ですか?

三浦

原点になった作品は2つ。画面から漂う怖さをよく覚えているのは『Dの食卓』。謎解きも理不尽で、毎回同じところででっかい石に轢き殺されていた記憶があります(笑)。もう一つは『オーバーブラッド』。「なんか怖い」と最初に感じたのは、この2作品ですね。チラズさんの、ホラー好きになったきっかけは?

幼少期をアメリカで過ごしたんですけど、その当時観た、ハリウッド版の映画『呪怨』。その後も兄弟でホラー映画をよく一緒に観てましたね。ゲームを本格的に始めたのは10代になってからです。

『バイオハザード4』に始まり、高校を卒業してから兄弟でいろいろなゲームをやりましたね。そうやって一緒に遊んでいろんな作品を観ているとお互いのセンスや好みの傾向もわかってきて、兄は特に映像、僕はどちらかというと物語性を重視していました。

三浦

なるほど。だからチラズさんの作品は映像とストーリー性も兼ね備えているんだ。合点がいきました。

三浦大知とゲームクリエイター・Chilla's Art
カーディガン46,200円(チノ/アントリムTEL:03-5466-1662)、カットソー28,600円(サイドスロープTEL:03-5488-6390)、パンツ26,000円(ジュゲム/ヘムトPR TEL:03-6721-0882)、靴下1,980円(トワロニエ/ガーデン渋谷TEL:03-3770-5002)、靴18,700円(フットインダストリー/足下工業TEL:03-6434-5763)

ホラーに浮かぶ“見えない怖さ”。サウンドでも想像をかき立てる

そういえば、なぜか僕たちのゲームは海外の配信者に人気があって。

三浦

日本を舞台にしたものが多いからですかね?僕はゾンビやクリーチャーが出てくるのも好きですけど、日本特有のホラーって、世界から見ても怖いのかもしれませんね。自我や怨念が煮詰まっている感じが画面から溢れ出るような空気感というか。その絶妙にイヤな感じがチラズさんの作品からも感じられて引き込まれます。

日本のホラーの感じ、わかります。昔から日本を舞台にしたゲームが少ないなと思っていて、それで自分たちで作りたかったんですよね。

怨念にも通じますが、キャラの感情を感じさせることは大切。特に、僕らのゲームは短編なので、一曲を聴いているような感覚でプレイしてほしい。キャラの感情面やサウンド面でも、いかに怖いという感情を湧き立たせるかを考えています。

三浦

僕も音をしっかり聴くために、ゲームをプレイする時はヘッドホンを必ず着けています。目に見えない恐怖を感じるのに、サウンドはとても重要ですよね。想像をかき立てられて、より恐怖感を覚えます。

そうですよね。僕らも、最近の作品ではスプラッシュ・スクリーン(導入画面)に「ヘッドホンを着けることを推奨します」と表示しています。ちなみに、ほかにゲームをする際のマイルールはありますか?

三浦

目には良くないですけど、部屋を暗くする。そうすることで闇の表現もちゃんとキャッチできる気がして。ホラーには“見えない怖さ”もあると思うんです。

いいですね。真っ暗な闇にもグラデーションがあるし、「何かがあるかもしれない」と考えるのもいい。僕が必ずやるのは、スタック(画面内で動けなくなった状態のこと)しても、すぐに解決すること。作り手が何を表現したいかを純粋に理解したいので、原因を調べてスムーズに解決。すぐに続きをやります。

三浦

チラズさんは、やっぱり作り手の視点でプレイされるんですね。

そうなのかも。逆に実況する時はどんなお気持ちなんですか?

三浦

一人でプレイする時と同じテンションで、いちゲームファンとして楽しみたいなと。「配信だから」とは特に意識しない。でも、視聴者と一緒に進めている感覚は強いと思います。怖がりなので、本当は一人では最後までやれないゲームもあるんですよ。

実況配信することで「やるぞ」と、自分を鼓舞しているところもある。でもチラズさんの作品は細かいところにヒントがあるので、くまなく回りたくなります。視聴者には「早く先に進んでよ」と思われるかもしれないけど(笑)。

細部まで遊んでもらえるのは、作り手からすると、とても嬉しいことですよ!

三浦

自分ももの作りをしているから、どう作っているのか細部まで見たくなるんです。それにしても、チラズさんは新作を2ヵ月置きに発表していたこともあったけど、全作品が濃い。それを兄弟だけで作っているなんて、ある意味、その情熱もホラーかも……。

一理ありますね(笑)。これからも、たくさん作り続けます!

Chilla's Artの私的ベストホラーゲーム

Nun Massacre(2018)

ブラジルのPuppet Combo制作。寄宿学校を舞台に、神出鬼没の修道女から逃げる探索アドベンチャー。「質が高く、インディーホラーへの貢献度に感銘を受けた作品の一つ」
(対応機種:Sw PS5 PS4 XBX PC iOS)

Nightmare of Decay(2022)

ゾンビや狂信者がはびこる屋敷を歩き、数々の謎を解き明かしていくサバイバルホラー。「全難易度をクリアしたほど大好きな作品。突然現れヒットした部分にも感化された」
(対応機種:PC)

三浦大知の私的ベストホラーゲーム

HORROR TALES:The Wine(2021)

パンデミック後の世界で、地中海の架空の島を探索し、治療薬のワインを探す。「じっとりと湿度のある地中海の風景が本当に不気味。3部作らしいので続編も楽しみ」
(対応機種:Sw PS5 PS4 XBX PC)

Killer Frequency(2023)

深夜ラジオのDJとなり殺人鬼からリスナーを救うホラーアドベンチャー。「DJがストーリーテリングをするという映画のような形式と、ホラーがうまく組み合わさってます」
(対応機種:Sw PS5 PS4 XBX PC MQ2)

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