教えてくれた人:ゴルフジャーナリスト・三田村昌鳳
「バンカーや池にボールを打ち込んでしまうのは罠(ハザード)を仕掛けた設計家がいるからです。設計家を意識してプレーすると“あそこのバンカー、気になるでしょ”みたいな造り手の声が聞こえてくる。これもゴルフの醍醐味です」
設計家にも個性がある。エリート、職人、芸術家、奇才、そしてレジェンドプレーヤー。
「日本の設計家の歴史は1930年に来日したチャールズ・ヒュー・アリソンから始まりました。アリソンの助手だったのが井上誠一、上田治です。井上のコースは自然を生かした曲線的な“柔”のレイアウト。一方、京大出身のエリートだった上田は迫力のある“剛”のデザインが特徴。デズモンド・ミュアヘッドは遊び心がある奇才です。
米国出身のロバート・トレント・ジョーンズ・ジュニアは勧善懲悪のアメリカらしい設計でバーディとボギーがはっきりするから盛り上がる。米国のスター選手、ジャック・ニクラウスは繊細な性格がコースに表れています」
設計家の存在が頭の片隅にあると、よりゴルフは奥深いものになる。
井上誠一
芸術性と戦略性を融合させた日本の第一人者
●「井上誠一のコースにハズレなし」といわれており、初心者から上級者まで楽しめるコースレイアウト。
● 師匠であるC・H・アリソン同様、その土地の自然を生かしつつ、高い戦略性を誇る。
大洗ゴルフ倶楽部(大洗/茨城)
初期の名作・大洗GCについて井上は「シーサイドリンクスという土地に恵まれて宝物のようなコース」と語るほど、とても気に入っていた。
その他設計したコース
霞ヶ関カンツリー倶楽部・西コース(川越/埼玉)
鷹之台カンツリー倶楽部(千葉/千葉)
伊勢カントリークラブ(玉城/三重)
上田治
京大出身のエリート!ダイナミックな設計
●「東の井上、西の上田」と比較される存在。大型重機を積極的に使用して大胆な高低差をつけるのが得意。
● 京都大学で造園学を専攻。1930年代に欧州・米国でコース設計を学んで世界基準のゴルフ場を設計した。
茨城ゴルフ倶楽部(つくばみらい/茨城)
西日本のコースが多い上田だが、最高傑作といわれるのは茨城GC。女子ツアー『ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ』の舞台。
その他設計したコース
小野ゴルフ倶楽部(小野/兵庫)
古賀ゴルフ・クラブ(古賀/福岡)
大阪ゴルフクラブ(岬/大阪)
加藤俊輔
競技性の高いトーナメントコースの革命児
● 日本伝統の箱庭・庭園型のコースではなく、大きな池やポテトチップス形のグリーンが特徴。
● 1980〜90年代のバブル期は年間に10以上の設計コースがオープンしたことも。90年代ゴルフブームの寵児。
JFE瀬戸内海ゴルフ倶楽部(笠岡/岡山)
スコットランドを彷彿させる日本屈指のリンクスコース。瀬戸内海の風がハザードになるような設計。『〜全英への道〜ミズノオープン』を過去に19回開催。
その他設計したコース
ザ・ゴルフクラブ竜ヶ崎(龍ヶ崎/茨城)
片山津ゴルフ倶楽部(加賀/石川)
太平洋クラブ御殿場ウエスト(御殿場/静岡)
赤星四郎
日本ゴルフ界の父!トップ選手から設計家へ
● 米国留学から帰国後、1920年代にはプレーヤーとして『日本アマ』で2度優勝。国内で約20コースを設計。
● フェアウェイやラフは大地の起伏をそのまま生かし、芸術品と称賛されるコースが多い。
箱根カントリー倶楽部(箱根/神奈川)
赤星が「ここは陸のリンクス。箱根でこれ以上、ゴルフコースに適した土地はない」と語ったクラブ。コース全体が富士箱根伊豆国立公園内にある。
その他設計したコース
霞ヶ関カンツリー倶楽部・東コース(川越/埼玉)
芥屋ゴルフ倶楽部(糸島/福岡)
富士カントリークラブ(御殿場/静岡)
Robert Trent Jones Jr.
世界で300コース以上設計の巨匠
● 世界で最も有名なゴルフ設計家。父のR・T・ジョーンズ・シニアは約500コースを設計。
● 設計哲学は「リスクと報酬」。果敢に攻めたショットがバーディチャンスにつながるレイアウトに。
ゴールデンバレーゴルフ倶楽部(西脇/兵庫)
1987年、世界基準のトーナメントコースをコンセプトに設計した開場のゴールデンバレーゴルフ倶楽部は国内屈指の難易度を誇る。
その他設計したコース
桂ゴルフ倶楽部(苫小牧/北海道)
美浦ゴルフ倶楽部(美浦/茨城県)
オーク・ヒルズカントリークラブ(香取/千葉)
Charles Hugh Alison
日本のコース設計の草分け的存在
● 井上誠一、上田治、赤星四郎に影響を与えた英国人設計家。脱出困難な“アリソンバンカー”が有名。
● 3ヵ月余りで東京GC、川奈ホテル富士コース、廣野GC、藤沢CCを設計し、霞ヶ関CCなど4コースを改造。
川奈ホテルゴルフコース 富士コース(伊東/静岡)
世界ゴルフコースベスト100に毎年選出される、国内のゴルファー誰しもが憧れる格式高いコース。「日本のペブルビーチ」とも称賛されている。
その他設計したコース
廣野ゴルフ倶楽部(三木/兵庫)
旧・東京ゴルフ倶楽部 朝霞コース(朝霞/埼玉)
茨木カンツリー倶楽部 東コース(茨木/大阪)
青木功
米国の華やかさに英国の厳しさを融合
● 米国の名門コースの華やかさと、英国風リンクスの厳しさを融合した独自のスタイル。
● 通算1,200試合以上に出場した経験を生かしたグリーン手前の「エプロン」が名物。
ザ・ノースカントリーゴルフクラブ(千歳/北海道)
「私のコース設計の集大成にして最高の出来」と自身で語るクラブ。米国の名門コースと同レベルの芝のコンディションを目指し、日本初のオールべント芝を採用。
その他設計したコース
カントリークラブ・ザ・レイクス(笠間/茨城)
ゴールド木更津カントリークラブ(君津/千葉)
城里ゴルフ倶楽部(城里/茨城)
Jack Nicklaus
約200コースを設計した米国ゴルフ界の帝王
● 現役時代からニクラウス・デザイン社という会社を設立して、本格的にコース設計ビジネスに参入。
● 世界各国で約200コース、日本だけでも約30コースを設計。巧みに池やバンカーを絡めた戦略性が特徴。
PGM石岡ゴルフクラブ(小美玉/茨城)
ニクラウスが約10年間かけて設計したアメリカンスタイルのコース。「私が知る限りにおいて日本のベストコースだ」と自身で評価する。
その他設計したコース
東京クラシッククラブ(千葉/千葉)
六甲国際ゴルフ倶楽部(神戸/兵庫)
三甲ゴルフ倶楽部 ジャパンコース(三木/兵庫)
Desmond Muirhead
設計界の奇才!一度見たら、忘れない独創性
● 絵画やアート、神話や音楽などのインスピレーションをゴルフコースで表現する奇才。
● 米国ではミッションヒルズCCやミュアフィールド・ヴィレッジなど王道の名門コースも設計。
富士クラシック(富士河口湖/山梨)
葛飾北斎の富嶽三十六景を題材にした富士クラシック。16番には卍(まんじ)形のバンカーがあり、17番はホール全体で富士と大波を表現。
その他設計したコース
セゴビアゴルフクラブ イン チヨダ(かすみがうら/茨城)
若木ゴルフ倶楽部(武雄/佐賀)
ニュー・セント アンドリュースゴルフクラブ・ジャパン(大田原/栃木)
Pete Dye
ついた異名は「悪魔の設計家」
● パー3のホールで、アイランドグリーンと呼ばれる池に囲まれた浮島グリーンを造ることが代名詞。
● 世界トップ100に選ばれるトーナメントコースを多く手がけて、2008年に世界ゴルフ殿堂入り。
新・西山荘カントリー倶楽部(常陸太田/茨城)
戦略性の高いリンクスコース。6番には全長200ヤードのバンカーがあり、17番パー3はミュアヘッドの象徴でもあるアイランドグリーン。
その他設計したコース
PGMマリアゴルフリンクス(木更津/千葉)
ゴルフ5カントリー 美唄コース(美唄/北海道)
成田ヒルズカントリークラブ(栄/千葉)