ずっと一緒に作品を作りたかったんです
南沙良の3年ぶりの主演映画『愛されなくても別に』が公開される。『響け!ユーフォニアム』シリーズなどで知られる武田綾乃の同名小説を、今注目の新世代の監督、井樫彩が映画化したものだ。

友達も作らずバイトに明け暮れる南演じる大学生の陽彩(ひいろ)が、南と同じく孤立している同級生の雅(みやび)(馬場ふみか)や水宝石(アクア)(本田望結)と関わり合うことで、それぞれが、これまで彼女たちの精神的な呪縛になっていた毒親との関係を乗り越えていく、シスターフッドをテーマにした映画だ。
実は、南が井樫の作品に出演するのはこれが2度目だ。
「井樫さんとは、ずっと一緒に作品を作りたいねという話をしていたので、実現できてすごく嬉しかったですね」
演じた陽彩というキャラクターについてはどうだったのか。
「陽彩は、私と重なる部分があるなと思って。陽彩は、不幸中毒のようなところがあって、不安でいることに安心感を覚えるというか。私はあそこまでじゃないですけど、気持ちはよくわかる。そういう意味ではやりやすかったかもしれませんね」
その役作りには、監督から手渡された「あるもの」が役立ったという。
「撮影に入る前に、監督が映画には描かれていない陽彩のバックストーリーや、人生の年譜のようなものを作ってくださったんです。こういうのは初めての経験でしたね」
まさに井樫流の演出術というところだろうが、ほかにも監督のこだわりのように感じられるところがあるという。
「この映画でも、水族館や水槽が出てくるんですが、井樫さんの作品では、水や火の描写がとても多いような気がするんですよね。それがとても美しいんです」

第42回吉川英治文学新人賞を受賞した武田綾乃の同名小説を、2016年の中編映画『溶ける』がカンヌ国際映画祭で注目された新進気鋭の井樫彩が映画化。毒親との関係に苦しむ3人の大学生を南沙良、馬場ふみか、本田望結が演じる。7月4日、全国公開。
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