LIGHTING/CLOCK
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ミッドセンチュリーのイメージを体現するような、ポップで明るいデザインをネルソンは数多く残した。その代表作には、100種類以上のバリエーションが存在した「ボールクロック」や造形が楽しい「バブルランプ」があり、共に当時は〈ハワードミラー〉から製品化された。いずれもデザインの可能性をわかりやすく伝えようという、ネルソンの意図を感じさせるものだ。一方でインテリアの表層を飾り立てる風潮に対し、彼は常に批判的だった。
EXHIBITION
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エキシビションは、建築やグラフィックなど幅広い領域に通じていたネルソンのディレクション力が存分に発揮された分野。特に大規模だったのは、冷戦期の1959年にモスクワで開催されたアメリカ博と、64年のニューヨーク博でのクライスラー館だ。アメリカ博ではイームズやバックミンスター・フラーと組み、アメリカの産業やデザインを強力にプレゼンテーション。クライスラー館は、博覧会場で来場者数第3位を記録した。
CORPORATE DESIGN
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ネルソンは1947年に自身のスタジオを設立し、やがて分野ごとに数名ずつのスタッフを抱えるデザイン事務所へと発展させた。グラフィックの仕事は〈ハーマンミラー〉とコラボレーションした設立当初に始まり、61年にロゴを手がけた「アメリカン・エキスプレス」はじめCIデザインも行った。長年ネルソンの右腕だったアーヴィング・ハーパーや、後にメキシコオリンピックを手がけたランス・ワイマンらがグラフィックのスタッフを務めた。
STORAGE SYSTEM
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家具を単体としてだけでなく、住空間の構成要素として捉えたネルソンにとって、収納システムの革新は初期からのテーマだった。1945年、『ライフ』誌に掲載された彼の収納壁は、〈ハーマンミラー〉との仕事の契機となる。また57年発表の「CSS」は、天井と床に固定したポールを支柱とする画期的な収納システム。壁面収納としても間仕切りとしても使うことができ、引き出し、デスク、照明など豊富なオプションが用意されていた。
WORKPLACE ENVIRONMENT
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ミッドセンチュリー生まれのデザインは、当初、一般家庭よりもオフィスなどで普及した。ネルソンも〈ハーマンミラー〉に関わった頃から執務用デスクを手がけ、特に同社がオフィス家具に注力していった1960年代にはこの分野で功績を残す。64年発表の「アクションオフィス」は、一つのデスクに向かって仕事するスタイルに代わり、高さや機能の異なるデスクを使い分けるもので、ロバート・プロプストのコンセプトをネルソンが具現化した。
FURNITURE
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現在は家具デザイナーとして名前が挙がることの多いネルソンだが、その作風はとても一言で表現できない。近未来的フォルムに彩られた「スワッグレッグチェア」も、ポップでかわいい「ココナッツチェア」も、ミッドセンチュリー流のミニマリズムを思わせる「プラットフォームベンチ」も、すべて彼の代表作。こうした多様性は、スタイルよりデザインのプロセスや構造によって新機軸を開こうとした、ネルソンらしさの表れともいえる。