ライブのMCやテレビにラジオ、ブログやファンクラブ向けのコンテンツに、SNSの数々……さまざまな場面で、気持ちを言葉にして伝えることが求められるアイドルたち。時には多くの人が涙を流したり、日々の活力を得たりするほどに、心を揺り動かすパワーを持っている。
2024年4月にメジャーデビューしたガールズグループ〈ME:I〉(ミーアイ)のMOMONAさんは、ファンの間で「ME:Iの日本語担当」と呼ばれ、彼女の思いを言語化する力にはメンバーも厚い信頼を寄せている。言葉を紡ぐことが好きになったのは、小さな積み重ねを自信に変えてきたからだという。
「小さな頃から母が友達のような距離感でアドバイスを求めてくれたり、対等に接してくれたりして、年齢関係なく意見しやすい環境で育ちました。ただ、10代半ばは芸能の仕事を始めていたこともあり、葛藤を抱えることも。大人に意見したくても、今の自分の発言に説得力はあるのかと考えてしまいました。
でも、その葛藤があったから今がある。デビュー1年目は、リーダーの私の発言が直接グループの第一印象につながる場面が多くありましたが、どんな時も臆せずに思いを伝えるためには、説得力のある自分でい続けることがすごく大事だなと。
そのために、自分に自信を持っていたいから、どんな小さなことにも丁寧に向き合うよう心がけました。些細なことですが、ものを使った後は次の人が気持ちよく使えるよう整えておくなど、自他に対して一つ一つ誠実な行動を取る。その小さな積み重ねが自信になって、大きな場所でも堂々と発言できるんです」

どんな状況でも心の中に溶け込む言葉を
誰かに言葉を届ける時に大切にしているのが、受け取る側のメンタルとシチュエーションを意識すること。プラメやブログなど一方的に発信しているように見える場面はより一層、相手の顔を強く想像するという。
「ライブMCなら、みんなが曲を聴いた後にどんな温度感でどんな言葉が欲しいのか想像しますし、プラメはいろんな状況の人に届くので、寄り添う気持ちで書いています。みんな、生きているだけでたくさんのことがあって、ハッピーなのか辛いのか、状況もさまざま。どんな時に読んでも心にスッと入っていけるように、直感的にわかりやすい言葉を選ぶよう意識しています。うまく伝わっていないと感じたら、たとえ日本語の文法的に間違った文になったとしても、何度でも調整します」
活動を共にする10人ものメンバーや、韓国など国境を超えて関わる運営スタッフに思いを伝える時も、相手の状況を想像する力が役立つ。
「類は友を呼ぶって言葉がありますけど、〈ME:I〉はその真逆。個性がバラバラでそれぞれ素敵なので、チームとして目標を持ちつつ、“私が干渉しない方がこの子のいい部分が生きるだろうな”と思うことも。メンバーに伝えたいことがある時は、以前は気づいたらすぐ言っていましたが、それは私の勝手なタイミング。
相手が状況を理解して改善しようとするまでにベストなタイミングがあると気づいてから、伝え方が変わりました。メンバーへの理解を深めるためにも、一歩引いたところから観察するように心がけています」
尊重が心の根底にあるだけで、伝え方も受け取り方も変わる。
「この一年でいろいろな初めてを経験して関係性を構築していく中で、どんな人とも気持ちよくお仕事するためにはリスペクトがすべてだと。人間、目には見えない計り知れない部分がたくさんあるし、心に余裕がないと自分勝手になってしまう。私自身を好きでいるためにも、相手にリスペクトを持っていたい。その気持ちがあれば、伝え方がきっと丁寧になりますよね」
思い起こされるのは、YouTubeで公開されていた〈ME:I〉のレコーディング風景。韓国のスタッフの指摘に疑問を感じたMOMONAさんは「わからないです」と、その場の空気に流されることなく発言。仕事仲間として相手に敬意を持つからこその言動だった。
「気持ちを正直に伝えるのもリスペクトの形の一つ。基本、海外の方とは通訳さんを介して交流していますが、自分なりに伝え方を考えた結果、わかりやすく端的に自分の言葉を届けるべきだと思いました。説明しすぎると誤解を招く可能性もあるし、場面によって言葉を使い分けることが大事。まだまだ私は成長途中だと思うので、これから出会う言葉によって自分も変化すると思いますが、伝える力も含めて成長していきたいですね」

MOMONAがファンやメンバーに言葉を贈る時のマイルール
・常に自信と責任を持って発言できる自分でいる。
・受け取る相手の状況や心情を慮(おもんぱか)る。
・どんな相手へもリスペクトと寄り添う気持ちを持つ。