〈メゾン マルジェラ〉が好きなのは、「コンセプチュアルでアートピースのような面もあり、これ見よがしな“ハイブランド感”があまりないところ」と山口一郎さんは語る。メゾン創始者、マルタン・マルジェラの実験的な姿勢に惹かれている。

ユニフォームのように同じ服装を貫く時期もあったが、昨年公表したようにうつ病を発症したことで、心境の変化があった。「もう元の自分に戻れないと思い、変化を楽しむことにしました。ファッションに対しても勇気みたいなものが出てきて、それまで着用したことのなかったアクセサリーや未知のブランドに挑戦するようになったんです」
シーズンの始まりには散歩がてら表参道から青山まで連なるショップを順に訪ね、面白い発想だと思えば着るつもりがなくても「応援する」気持ちで購入するように。必要がなくなったら人に譲ったりするが、〈メゾン マルジェラ〉のアイテムは多くがクローゼットに残る。
今季の〈メゾン マルジェラ〉のベースとなった「ワードローブを大切に保存し、再生する」という考え方には、「ものを長く使って大事にしようという日本人ならではの情緒」との共通点を感じるという。さらに、「古いもの」は、音楽活動においても重要だと語る。「過去を参照してもの作りをする方が“新しい”ものが生まれる。それらを現代の人々に受け入れられるようにするためのバランスの取り方が“オリジナリティ”なのでは」