昔ながらのスクリーンプリント技術を使いながら、NYを代表するアーティストやデザイナーたちのTシャツ制作などを手がける、ブルックリンのプリント&デザインスタジオの〈LQQK STUDIO(ルックスタジオ)〉。
業界内で知る人ぞ知る存在だった彼らだが、オリジナルのグラフィックTシャツやDJイベントが注目されたことをきっかけに、NYのカルチャーシーンを代表する一つのブランドへと進化を遂げた。それに伴い、オリジナルウェアを作りだした当初は、ハットとTシャツを数点ずつだけを作って友人たちに売っていたという彼らも、10周年を迎えるこの秋冬からは年に2回しっかりとした点数を揃えたコレクションを発表する形式へとシフトさせる。
ファウンダーのアレックス・ドンデロにとって、この挑戦は「やりたいことを続けられるようにする」方法の一つだという。
「今までは、気が赴くままにデザインして売り出すというやり方で、業界の流通スケジュールにも従っていなかった。でもそうすると小売店としては僕らのブランドは扱いづらいから嫌がられちゃって(笑)。だから、オンラインに専念していたけど、今は僕らの商品の背景にあるストーリーを伝えるために、ショップの存在の重要性を感じている。シーズン化してリリースすることで店頭での取り扱いも増えて、商品を実際に手に取って見てもらえるようになればとも思っているんだ」
服に込められたコレクティブなエネルギー
〈LQQK STUDIO〉というブランドの持つ面白さは、インディペンデントなNYのクリエイターたちを束ねながら、彼ら自身も現役のDJとして人気クラブでレギュラーを持ったり、〈109 Montrose〉というフィジカルな空間を新たに作ってオリジナルミックスCaffeine FMも発信するなど、NYのシーンに根づいたカルチャーを生み出し続けているところだろう。NYというサバイバルな町だからこそ必要な、サポートし合うコミュニティのあり方を、ファッションを通して常に発信し続けている。
「かつてNYにお店もあったカルロス・スインガーによるテクノ/レイブショップ〈Liquid Sky〉のアパレルラインのように、周りのカルチャーをサポートしながら多くの人たちにインスピレーションを与えたい。僕らもそこそこ知名度が上がったと思うけど、実際に着てくれている人たちも、友達の友達だったり、何かしら僕らのDNAを理解してくれる人たちで、ブランドが僕ら自身から離れすぎてないと思う。“ファッション”をやってるとは思ってないんだ。
マーチ(ミュージシャンなどのオリジナルグッズ)のようなものかな。服はあくまでも僕らのアイデンティティの一つであって、いわゆるファッションブランドってわけじゃない。次は家具を作ってるかもしれない。それもまた〈LQQK STUDIO〉のあり方なんだよ」
今回の新作は、アレックス自身が着たいものを中心に、コレクションの基盤にもなるようなベーシックアイテムが多く取り入れられている。
「僕は印刷業を生涯ずっとやっていくつもりだから、服は汚れてもいいものじゃないと。そんなワークウェアの機能性と、大胆なグラフィックや色使いが特徴的なレイブシーンの2つが今回のテーマ。さらにオックスフォードシャツやフリースのように、幅広い人たちが着ることができる定番の要素も取り入れた。
例えば“トラッド”も、僕にとってはベーシックを意味する。シンプルなパンツやシャツで、そこにレイヤーを加えて自分らしいスタイルが作れる基盤になるものだ。僕らのことを知らない人たちにも、こういうベーシックなアイテムを足がかりに〈LQQK STUDIO〉を着てもらいたい。コンスタントに商品を作って、僕らのサークル以外の人たちにも知ってもらうことが次のチャレンジだね」