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〈スタジオドーナツ〉のデザイナー2人が〈リクシル〉で学ぶ「断熱」のこと 第1回

春まぢかとはいえ、朝晩はまだまだ冷え込む今日この頃。東京・阿佐ヶ谷に事務所を構えるデザインユニット〈スタジオドーナツ〉の鈴木恵太さんと北畑裕未さんに、〈リクシル〉の断熱について知ってもらうことに。3回にわたってお届けする、第1回だ。

Photo: Kenya Abe / Edit&Text: Akio Mitomi

公私ともに縁がなかった「断熱」

スタジオドーナツの主な仕事は店舗などのインテリアデザインだ。

「われわれは見た目第一でデザインするので、断熱を考慮することは基本的にありません」と、鈴木さん。

「事務所も築50年の木造なので断熱はゼロ、賃借している自宅も建築家によるRC造の名作住宅なのですが開口部はシングルガラスで寒いです」と、北畑さんも笑う。

そんな2人が訪れたのは、東京・新宿の〈リクシル〉ショールームに併設された〈住まいStudio〉。戸建て住宅の新築や改築を検討している施主や設計者向けの、断熱用建材に特化した施設だ。

健康な生活の条件は18℃以上の室温維持

〈住まいStudio〉ではまず、ヒートショックの実情についてプレゼンテーションを受けることに。

ヒートショックとは、暖かい居室や浴室と、寒い洗面室やトイレとの温度差が、心臓や血管の疾患を引き起こす現象。東京23区では2009年〜18年の10年間で、12月〜3月の月平均気温が10℃を下回る時期に、入浴中の死亡者数が毎月150人を超えている。

また全国のデータでは、2013年の入浴中の死亡者数が約19,000人で、同年の交通事故死者数4,338人の4倍超もあった。また47都道府県で比較すると、入浴中に心肺停止状態になった高齢者の割合は香川県が1位、兵庫県が2位、滋賀県が3位と西日本に偏っている。

日本の住宅は断熱が不充分?

では、なぜヒートショックが起こるような環境が生じるのか?最大の理由は、住宅の断熱性能が充分でないことにある。充分な断熱を施した住宅では、家全体が一定の温度に保たれやすいので、居室や浴室と、洗面室やトイレとの温度差が少なくなる。

前述のランキングで断熱対策が充分な北海道や東北地方で入浴中の心肺停止割合が低いのは、もともと暖房効率を高めるために充分な断熱対策を施した住宅が多いことを物語っている。

世界に目を向けると、2018年には世界保健機関(WHO)が、持続可能な開発目標(SDGs)のゴール3・健康とゴール11・まちづくりの達成のために、冬季の室温を18℃以上に保つことと、新築・改築時の断熱を「強く勧告」している。

「そういえば、事務所に泊まったドイツ人の友人が、『日本は寒い』と言っていました……」と、北畑さんが振り返った。

断熱で様々な症状の改善も

「自宅も常にファンヒーターで温めながら、結露防止のため除湿機をかけている状態です」と、鈴木さん。実はこれ、家具の裏側にカビが発生して空気を汚す原因になるという。

ちなみに近畿大学建築学部岩前研究室の調査によると、断熱性の高い家に住み替えた人は気管支喘息、のどの痛み、アトピー性皮膚炎、手足の冷え、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎の症状が改善する傾向が見られるという。住宅の快適性は健康につながるというわけだ。

次回は〈住まいStudio〉内に再現された昔の家・今の家・これからの家を体験して、断熱の大切さをスタジオドーナツの2人に実感してもらう。

スタジオドーナツ 鈴木恵太・北畑裕未
昔の家・今の家・これからの家の窓や断熱材が比較できるカットモデルを見学。それぞれの家を実際に体験する模様は次回お届けする。

リクシル