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強烈な熱狂は50年の時を経ても圧倒されます。『Live At The Cheetah Vol.2』ファニア・オール・スターズ。バラカンが選ぶ夏のレコード Vol.8

ピーター・バラカンが選ぶ32枚のレコードストーリー。「ピーター・バラカンがオーナーのリスニングバー〈cheers pb〉で夏にかけるレコードの話を聞きました」も読む

illustration: TAIZO / text: Kaz Yuzawa

『Live At The Cheetah Vol.2』Fania All Stars(1972年)

強烈な熱狂は50年の時を経ても
圧倒されます。

2021年の2月15日、ファニア・オール・スターズのリーダーだったジョニー・パチェーコが、85歳で亡くなりました。そのパチェーコの提案で1968年に結成されたファニア・オール・スターズは、パーマネントなバンドではないものの、ラテン系の人々を中心に絶大な人気を博しました。サルサのスーパースターたちが一堂に会するわけですから、当然と言えば当然ですが。

『Live At The Cheetah』は、そんな彼らが1971年8月26日に、ニューヨークのダンスホール、チータで開催したコンサートのライヴ盤。なぜか2枚組ではなく、前後半が別々に発売されているこのアルバムの、『Vol.2』に入っている「Ponte Duro」をオススメに選んだ理由はこの曲で会場の盛り上がりが最高潮に達するからですが、『Vol.1』ももちろん、文句なく素晴らしいです。僕はさほどサルサに詳しいわけではありませんが、このメンバーの演奏の素晴らしさ、そのアツさに参りました。

今回の32枚はどちらかといえば、夏をゆったり過ごすのに向いたレコードが多いのですが、これは別。噴き出す汗をものともせずに踊り倒す、真夏のサルサの熱い夜です。

このコンサートの模様は『Our Latin Thing』というドキュメンタリー映画にもまとめられていますが、70年代ニューヨークのスパニッシュ・ハーレムでの生活風景がコラージュされていて、こちらもまた素晴らしいです。7月2日から角川シネマ有楽町で開催する『ピーター・バラカン音楽映画祭』(pbmff.jp)で2回だけ特別上映するので、興味のある方はぜひ足を運んでください。来られない方はYouTubeでも、何度でも観られます。一度観たら何度でも観たくなりますから!

Fania All Stars

side B-1:「Ponte Duro」

ジョニー・パチェーコの作詞・作曲で、ファニア・オール・スターズの代表曲の一つ。『Our Latin Thing』では闘鶏に熱くなってるラテン系のおっさんたちの映像にオーヴァーラップするようにこの曲が始まります。その感じがまさに「Ponte Duro」、「つらいけど頑張れ」。サルサは熱いね。