日本料理 研野(岡崎)
食通がこぞって注目する、
イノベーティブ和食の全皿を披露!
とりわけ飲食業界が大変なこのタイミングで、店を構えた若き料理人がいる。
料亭〈菊乃井〉で10年、中華の名店〈京、静華〉で1年、その間にはNYの寿司店やイノベーティブレストラン〈LURRA°〉での経験を積んだ酒井研野さん、31歳だ。「日本料理は引き算の料理。足し算の要素を学べば、可能性が広がると感じて」と振り返る。
2021年3月に開店するや否や、予約困難な人気店へと躍り出た。料理は月替わりの1本。コースを通して日本料理の端正さを持ちながら、手打ち麺や中華食材、スパイスなどがアクセントになり、皿に緩急が生まれる。足し算の食材使いも新たな調和を感じさせ、若々しく新鮮。時代にジャストフィットした日本料理は、今後の進化にも期待せずにはいられない。
割烹しなとみ(御所東)
御所東に静かに幕を開けた、
正統派割烹で知る京の味。
好きなものを思うままに注文し、作りたての上質な料理が供される。近頃登場する日本料理店で、意外と少ないのが割烹というスタイル。自分が行きたいのはそんな店と、理想の割烹を構えた店主の高橋集一さん。
料理には毎朝汲みたての下御霊神社に湧く地下水を使い、京丹後の無農薬米をはじめ、作り手の顔が見える食材を選ぶ。控えめな存在ながら、旬を伝えるお浸しは割烹で長く修業を重ねた高橋さんのスペシャリテの一つ。漬け地を替え2度漬け込むことで、口いっぱいにだしと食材の旨味が広がる。間違いのない味が揃う、正統派の登場が嬉しい。
To.(御所南)
全メニュー制覇を目論みたくなる
革新的居酒屋の実力。
八ツ橋などを取り入れた独創的なイタリアンを展開する〈fudo〉の姉妹店として登場。料理を手がける店長の吉田伸介さんは、イタリアンで料理人のキャリアをスタートさせ、自由度の高い料理をカフェで繰り出してきた経歴の持ち主。
「居酒屋にありそうなメニューをイタリアンで作ったらどうなるか」をベースに組み立てる料理は、辛さをサラミの一種・ンドゥイヤでつけたサルシッチャ麻婆豆腐など、スパイスや発酵食品をふんだんに使い、パシッと決まる味の着地点が絶妙。目も喜ぶひとときが待っている。
ラクイイッカイ(四条烏丸)
互いの魅力を
存分に引き出し合う、
おだしとワイン。
少し不思議な店名から、料理の想像をするのは難しい。実は名前を屋号にした店主、羅久井一介さんが提案するのは「おだしとワイン」の組み合わせだ。
鹿児島・枕崎の本枯れ節と北海道・羅臼の天然昆布でとった和だしを基本に、肉や野菜、魚介を使ったフレンチや中華などのだしを使い、和食からイタリアンまで幅広い料理に仕立てる。ワインは料理を引き立てる、ミネラル感があるもの中心のセレクト。店の奥にはコースで料理にじっくり向き合うカウンターの〈kanna.〉があり、2つの店舗が共存するのもユニーク。
ha ra(河原町今出川)
鉄板BLTをひっさげて、
次の時代のカフェが来た!
喫茶文化の町・京都にカフェブームが巻き起こったのは2000年の頃。火つけ役となったのは1999年、鴨川に面する五条楽園に誕生した〈efish〉だった。空間もフードも居心地も、すべてがお洒落で上質というカフェは瞬く間に注目を集め、2019年10月に惜しまれつつ閉店するまで長く京都カフェの代表であり続けた。
一目惚れで7年間働き、最後の店長を務めたのが〈ha ra〉店主の原こころさん。「一緒に働いたスタッフもオーナーも素敵で、それが店の安心感につながったのかな」と振り返る。「閉店したからこそ、京都で店をと思いました」と、2020年8月、鴨川と京都御苑に囲まれた場所に自店を作り上げた。
「お腹と心を満たす店」を思い、店名は自身の名前とお腹のダブルミーニングに。BLTを作るためキッチンに鉄板はマストだったと聞くだけで、その本気ぶりが伝わってくる。鉄板で焼いた、ベーコンの脂で香ばしく焼き上げたパンで作られるBLTには、すでに虜になったファンも多数で、行列になることもしばしば。
〈efish〉のライムジュースや金魚鉢、原さんも感じた心地よさなど、人々の思い出に残る大切な部分を受け継ぎながら、電機店をリノベした空間や家具には原さんのセンスが凝縮。フードにもらしさを加え、さらなる進化を遂げる。京都だからこその、次の時代を作るカフェがここに誕生したのだ。