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再び故郷・益子に向き合うとき、写真家・髙橋恭司は何を思ったのか

益子町出身の写真家、高橋恭司の写真展『益子人—高橋恭司が撮る益子に暮らす500人の肖像—』が開催。

Text: Naoko Sasaki

町の人を撮る秘訣は
偉そうにしないことかな(笑)

幼少期から高校までを益子町で過ごした髙橋恭司。「当時は実家の近くにも登り窯がたくさんあって、そこらじゅうから煙が上がっていました。友達にも窯元の子供が何人もいたし、窯場を通り抜けて学校に通ったり、薪を積んだ納屋が遊び場でした」。益子町を離れて約40年、近年になって益子町の地域誌やガイドブックに写真や文章を寄稿したり、町内のギャラリーで作品を発表するなど、故郷の町と創造的な関係性を結び直している。

「この写真展は、益子町に住む知人から”写真で町を紹介できないか”と相談されたのが始まり。その娘さんが”じゃあ、町の人たちを撮影したら?“と提案してくれて」。

2020年の秋から2021年の夏にかけて、0歳から94歳まで500人を超える人々の顔を撮り下ろした。カメラは70年前に製造された〈ハッセルブラッド〉。

高橋恭司 撮影風景

「地域のサロンや草刈りのボランティアさんたちが集まる丘、お寺の幼稚園、陶芸家さんの工房など、いろんな場所に出向いて撮影しました。久々の故郷での60歳デビュー(笑)。40年ぐらい会ってなかった従兄弟の子供が偶然いたりして。地域にコミットすることができて、役に立ててよかったなと思っています」。

高橋恭司 益子人

撮影は520人を超えたというからセレクトにも苦労したのかと思いきや。「一人につきシャッターを切るのは1回。中には目をつぶっている人もいますが、それも個性とシンプルに考えて」。そんな一瞬を切り取った写真が2Lサイズのプリントで展示される。

「この状況下なので、派手な展示ではなく小さいプリントで。旧濱田庄司邸には特別に2枚だけ大きなプリントを展示する予定です。入場無料だから、地元の人同士で足を運んでもらって静かに盛り上がってくれたらいいなと思っています」