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君は“K-JAZZ”を知っているか?

BTSRMにV、坂本龍一に見出されたSe So Neon、その周りにジャズミュージシャンがいるのはご存じだろうか?世界からも注目されるポップスの台風の目には、彼らの存在が欠かせない。盛り上がる韓国のシーンで何が起こっているのだろうか?BTSのRMによる『Tiny Desk Concert』でも演奏したベーシストのジェシン・パク、キーボーディストのドクスキムの二人に話を聞いた。


本記事も掲載されている、BRUTUS「JAZZ is POP!!」は、2月15日発売です。

text: Daichi Yamamoto

まず、お2人はどのようにジャズと出会い、プレーヤーとなったのでしょうか?

Jaeshin Park(以下J)

まず幼い時はJ-POPやロックが好きだったんです。その後音楽教室に通っていろんなジャンルを勉強する中でジャズを深く知るようになりました。20歳の頃から弘大(ホンデ)の〈Club Evans〉などのジャズクラブで毎週演奏するようになってからは、よりハマっていきましたね。兄さん(DOCSKIM)と出会ったのも、〈Club Evans〉で行われているジャムデーでした。

DOCSKIM(以下D)

アメリカで過ごした幼少期から日本のアニメがすごく好きだったのですが、『カウボーイビバップ』のサントラを聴いたことがジャズリスナーとしての始まり。『サムライチャンプルー』を観てNujabesを知ってからは、彼のような音楽を作りたいと思うようになりました。ただ当時はヒップホップやエモロックが特に好きだったし、ジャズプレーヤーとしては大学に入って友達からビル・エヴァンスを聴かされたのが始まりでした。

お2人はBTSのRMやSe So Neonのファン・ソユンのバンドでも演奏されていましたが、現在はどんなお仕事が多いですか?

J

Paul KimのバンドやK-POP関連が多いですね。兄さんと一緒にやったTiny Desk ConcertのRMのライブは忘れられない経験でした。

D

韓国に来てからはまずシンガーソングライターのソ・テジのバックでキーボードを演奏しましたし、その後プロデューサーのPdoggに誘われてBTSなどの楽曲のプロデュースもするようになりました。

BTSのRMによる『Tiny Desk Concert』。キーボードはDOCSKIM、ベースはJaeshin Park。ほかにも韓国のジャズを代表する面々が参加。

プロダクションについてはどのように勉強されたのでしょうか?

D

YouTubeです。グラミー賞を受賞したプロデューサーが解説してくれる動画とか勉強できるものがたくさんありますから最高ですよ。ピアノにハマったのと同じくらい夢中になればプロデューサーになれるのでは、と思いましたね。

お2人をはじめ韓国ではジャズミュージシャンのK-POPなどメジャーシーンとのコラボが増えていますが、その背景にはどんな変化があるのでしょうか?

D

昔の歌手たちってただ現場に来て歌って帰るだけの人が多かったんですよ。でも最近は現場に最初から一緒にいて、演奏について意見をくれたり、コードとかメロディ、楽器のポジションに対する自分の考えを持っている人が増えています。演奏者と何かを一緒に作っていこうと思ってくれているんだと思います。以前なら大衆向けだから無難にやろうとなることも多かったんです。

J

ファン・ソユンのTiny Desk Koreaのライブを例に挙げると、彼女はメンバーを集める時、知らない人にもどんどん声をかけていました。Instagramでディグしているんだと思います。バンドメンバー同士はほとんどが初対面でしたが、ソユンの頭の中で想像していたものがあったはずです。プロデューサー的なマインドがある人が増えていますね。

シーンのこれからについては、どんな期待をしていますか?

J

韓国でも先輩だからとかじゃなくて、本当にミュージシャンとしてリスペクトできる人が増えてきました。例えば個人的にはJK Kimも、ピアニストのカン・ジェフも、まだまだたくさんいますが、本当にかっこいいです。そう考えると、ジャズシーンは良くなりましたね。

D

未来がとても明るい気がします。韓国のジャズシーンを完全に変えてしまうような、新しいものを作れる人がたくさん出てきました。

2人が選ぶ、韓国の新しい名盤

Jaeshin Park

『We Go Forward』Hwansu Kang
2021年リリースの注目の若手ベーシストのピアノトリオ編成でのデビューアルバム。「演奏は言うまでもないし、心に響く曲たちだった」。ドラマーはジェシンと共にRMのTiny Desk Concertにも参加したJK Kimが参加している。
『House on the Rock』MeariNam
クラシックとジャズの両方をルーツに持つピアニストのアルバム2作目。「Amazing Grace」のカバーからブルース曲のラストまですべて彼女の鍵盤のみで演奏される。「演奏は言うまでもないし、心に響く曲たちだった」
『Timeline』Youngwoo Lee Quartet
学生時代から親交があるというジェシンが「天才だと思う」と言うピアニストによるカルテットの9曲入りアルバム。テクニカルだが、スムーズでメロディックな演奏からは様々な風景や感情が浮かび上がる。

DOCSKIM

『Evolution』Lee Sang Min
数々の有名アーティストの作品やライブで演奏してきた、韓国を代表するドラマー。韓国での活動後、バークリー音楽院に留学、帰国後発表した初作品。「先進的なドラマーで、ミュージシャンとしても、芸術家としても尊敬している」
『Crumbling』Mid-Air Thief
日本では“空中泥棒”としても知られるインディーミュージシャンの2ndアルバム。「知った時は韓国
にこんなアーティストがいたのかと衝撃を受けました。楽曲をよく聴いてみるとジャズが好きなんだということがわかりますね」
『Theme for the Han River』DJ Soulscape
韓国のクラブシーンを代表するベテランDJ兼プロデューサー。「高校生の時に初めて聴きましたが、僕が憧れるスタイルとサウンドを持っているヒップホップ・プロデューサーがいることに驚き、誇りに思いました」