ゲームと映像と猫が生活の中心
——話題になったMV等のクレジットでMELTMIRRORという名前をよく見かけていました。なぜこの名前に?
メルトミラー
10年以上前に作ったブログのIDをそのまま活動の名前に使っていて。文法的にはmeltingが正しいんですが、当時日本の〈MELT-BANANA〉というバンドが好きで「溶かせ!」と叫んでいるようにも見えていいなと。
——シリカゲルやaespaら、多くのアーティストのMVを制作されていますが、映像に携わったきっかけは?
メルトミラー
大学では東洋画を専攻していました。しかし、思考のスピードと手が動くスピードが徐々にズレていき、そのスピードを一致させるために新しい媒体を探す必要があって。たまたま映像制作が自分に合っていたので、そのまま。
ゲームも同様で、映像制作を続けていたらまたスピードが合わなくなってゲームに辿り着きました(笑)。その時々で自分に最も適した媒体を探しながら活動を続けています。
——ゲームと映像、どのくらいの割合で活動されていますか?
メルトミラー
だいたい半分ずつです。でも、昨年はかなりたくさんのMVの演出を手がけたんですが、aespaの「Whiplash」で完全にMVへの欲求が解消されてしまい、今年はMVの仕事はもう一切受けないと決めました。
ゲームの企画もいくつか進行しています。一つはナイキの新しいスニーカーDn8のソウルでの発売記念展示で公開された『dining 8』。これは徹底的にゲームメカニクスに基づいたパズルゲームです。
また、RIIZEのアルバムリリースと連動した展示で公開される、短い会話形式のRPGも開発が終わったところです。このゲームは私が長年手がけている『P.O.G』が基になっています。
——ゲーム開発のコレクティブisvnの活動について教えてください。
メルトミラー
isvnでは、主にテーブルトークRPG(TRPG)を制作しています。機器を介さずに対話でゲームを展開していくものです。
2024年にソウルにあるイルミン美術館で『루키쨩의 미래(ルキちゃんの未来)』(ディレクター:キム・ドイ)を発表しました。自分の誕生日にルキちゃんは亡くなってしまいます。友人であるプレーヤーが、ルキちゃんに新しい未来を与えるために悲しみを乗り越えて過去の時間に飛び込む、というヘビーな内容のゲームです。
通常のTRPGは短くても3時間ほどかけてプレーするんですが、美術館だったので1時間に設計しました。
——映像やゲーム制作には視覚的な効果はもちろん、物語性やゲーム性、戦略等非常に複雑な要素が絡んでくると思いますが、MELTMIRRORさんのインスピレーション源は何ですか?
メルトミラー
日常のあらゆる瞬間が、普段から考えているアイデア同士を結びつける丈夫な紐の役割を果たしてくれると思っています。飼っている猫2匹がじゃれ合って遊んでいる姿をよく眺めています。予想不可な運動感が良いインスピレーションになります。
でも、根底にあるのは学生時代に読んだ日本漫画の影響が大きい。諸星大二郎やつげ義春のように非線形的な物語の漫画が好きでした。つげ先生の『ねじ式』を読んだ時の理解の領域を超えた本能的な感動は忘れられません。その時初めて、イメージの力は常識や論理を超えると知りました。
——今後の活動はゲーム開発が主軸になっていくのでしょうか?
メルトミラー
今年を起点にどんどんゲームの比重を高めていきたいですね。映像作品としては個人的な短編作品を一本完成させたいです。ヴィクトル・コサコフスキー監督『GUNDA』のように圧倒的なイメージを持つ作品を作りたいですね。
今の韓国を定点観測するための人、場所、本
People

俳優、監督、漫画家でisvnのメンバー。漫画作品に『도이만화일기(ドイの漫画日記)』。「漫画家としての彼女が好き。物語の中に相反する感情が描写され、爽やかさの中に冷笑と虚脱感、微細な憂鬱の残香が漂います」。
Instagram:@doi_back
Place

「インディペンデントな映画の上映会やワークショップを開催しており、私も時々参加しています。韓国の新しい視覚芸術を知りたい方におすすめ」。
住所:ソウル特別市退渓路45キル22-6 イルホビル4F503号
Instagram:@sorigrim.org_
Book

光州事件の記憶を描く。「彼女の文章を読むと、身近な日常の言葉が、いかに深い感情や記憶を宿すことができるのかを再認識させられます。最も暗い場所から最も明るい場所まで、内面の高低差を叩くようにして、心を大きく揺さぶります」