撮影の現場で生まれる“意外性”がたまらない
——『D.P. -脱走兵追跡官-』などのドラマや数多くの映画に出演し、様々な役を演じていますが、俳優という職業を選んだきっかけは?
もともと映画を観るのが大好きで、どのポジションでも構わないので、何かの映画作品の中に存在したい、映画の中の一つの要素になりたいという気持ちがありました。俳優としても活動していますが、同時に映画の監督やプロデュースもしています。映画という世界の中で生きていたいんです。
また、人前に立つのは今でも恥ずかしいし照れてしまうんですが、同時に好きなことでもあります(笑)。
——俳優という仕事のどこに魅力を感じていますか?
撮影の時は、進行の妨げにならない範囲内で、僕はテイクごとに感情を変えて表現するのが好きなんです。そうして、映画という一つの世界に入り込んで世界観を作り上げていくんですが、その体験自体が面白い。ユニバースのような感じというか、未知の世界を旅しているような。
それから、撮影の現場では、まるでプレゼントのように、偶然、思いも寄らないことが起こります。それが大好き。インタビューも同じですよね?事前に質問はもらっていたんですが、実は読んでいません。読まないでライブでお話しした方が楽しいかなと思って(笑)。
——素敵です(笑)。今回、韓国で一大ムーブメントになった映画『脱走』が日本で公開されることになりました。まずは作品をご覧になった感想を。
いつも自分が出演した作品を観る時は、恥ずかしくなってしまうんですが、この映画は自分が出たことを忘れるくらいのめり込んで、スピーディな展開を楽しんでしまいました。
また、製作スタッフの皆さんが登場人物に接する優しさや愛情が、観ていても感じられて気分がよくなる映画ですよね。そして、自分があんなにポマードが似合うとは思いませんでした(笑)。
——確かに、お似合いでした。映画では幼馴染みのギュナムを追い詰めるヒョンサンを演じました。あまり感情を顔に出さない難しい役柄だったと思いますが、意識されたことは?
この映画のストーリー自体はすごくシンプルで、北朝鮮から逃げる男と追撃する男が一直線に進んでいく。一方で、ヒョンサンの心はとても複雑に揺れ動いています。秒単位で感情は変わっていくんですが、表情と感情がつながっていない。その心と表情のギャップを見せたかった。
彼はピアノを弾くアーティストでもあるので、彼の中にしかないメトロノームが刻むようなリズム感がある。それを追撃するシーンでも感じられるようにしました。一つの役柄というのは、俳優一人が作り上げているわけではありません。
今回は、衣装や髪形からも多くのインスピレーションを受けました。衣装を見た時に、ヒョンサンはとてもファッショナブルな人だと感じ、同時に自分の内面を気づかれないように頑張っている人なんだなと思いました。
——映画では自由を手にするために奮闘するギュナムと、葛藤しながらも自分の役割を全うするヒョンサンという正反対の2人が登場します。選べるならどちらの人生にしますか?
難しい質問ですね……。12時間ずつ分けて生きることはできないでしょうか?(笑)
どちらかと言えば、私は追われる人になりたい。追い詰めるのは、すごくストレスを受けるんですよね。役を演じ、映画を観終わった後に感じたのは、この2人はお互いを補完し合う存在ということ。2人で1人というか。
対決の最後、ライフルスコープに捉えているのにわざと撃たない。ずっと追撃をしてきてギュナムを殺したいのに、一方では殺したくない。その正反対の気持ちは何なんだろうと、観るたびに考えてしまいます。
——次の作品を教えてください。
『あなたの国』(仮)という共同監督をした作品の撮影が終わって、毎日3分、撮影した映像の編集をするのが楽しみになっています。毎日やっても全然終わらなくて(笑)。なんとか形にできればと思っています。

今の韓国を定点観測するための映画
『脱走』
『あなたの国』(仮)
