——変化の激しいソウルの街で8年も継続されているなんて驚きです。イェジさんはもともとデザイナーを志していたのでしょうか?
イ・イェジ
いや、違うんです。デザインの勉強もしたことがなかったんですが、何かを作りたいという強い気持ちがあったので、技術を学ぶ学校へ行きました。そこではPhotoshopやIllustratorの使い方やデザインの基礎を学び、卒業してショッピングモールの会社で働いていたんですが、本当に肌に合わなかった。
今は自分が会社を経営しているので気持ちもわかりますが、当時は、なんで私にはやりたいことがあるのに、人から言われたことをやらなきゃいけないの?と。それなら自分でブランドを立ち上げようと思ったんです。
——ブランド名〈Shesaidthat〉は、すごく覚えやすい名前なんですが、どういった由来が?
イ・イェジ
私はあれもこれもやりたい!という思いが強くて、会社も合わなかった。せっかく独立するなら自分がやりたいことだけをしていようと、ブランド名も「私が好きなものだけを集めた」という意味で、この言葉にしました。
——それは子供の頃から?
イ・イェジ
ソウルにもわりと近い京畿道(キョンギド)で育ったんですが、本当に何もない田舎町で、娯楽といえばテレビを見ることくらい。ものを作ることは好きだったので、すごく大きなカードに手紙を書いて友達に渡したりしていましたが、その程度。ソウルには行きたいけど、怖くて尻込みしていて。私はきっと田舎にずっととどまるんだろうと思っていました。
——デザインの道へ進むきっかけがどこにあったんでしょうか?
イ・イェジ
洋服がすごく好きで、中でも〈アルバニック〉というブランドが好きで、その服に関連する仕事に就きたいと、カスタマーサービスの部署に潜り込んだんです。そこで、デザイナーさんや代表の方の仕事を傍目(はため)に見ていたんですが、すごくカッコよく見えた。
また、田舎にいた時は、お給料って生活のためにすべてを使うのだと思っていました。ですが、ソウルの人たちは稼いだお金を趣味に費やしたり、自分を向上させるための勉強に費やしたりしていた。その姿を見て、すごく衝撃を受けたんです。
——〈Shesaidthat〉は日本でもすごく人気があるんですが、人気に火がついたきっかけは?
イ・イェジ
最初に人気が出たのは台湾だったんです。ある時ソウルの店に1人の男性が来て、ごっそり20万円分くらい商品を買っていったんです。どうやらその人は台湾のアイドルやセレブが集うセレクトショップの人だったらしく、そこから世界中で人気が出ました。
——ソウルは流行がすぐに移り変わってしまう場所ですが、長く続けてきてどんな苦労がありましたか?
イ・イェジ
人気が出たのは嬉しいことだったんですが、半面それで忙しくなりすぎてしまい、自分が気に入らない商品を出してしまったことがあって。でもその商品がヒットしてしまった。
その時すごく不安にもなったし、嫌な気持ちにもなりました。自分が好きなことをやるべきか、人から好かれることをするべきかって。スランプ状態だったんですよね。いつもの自分とは違う、韓国の人たちが好きなシンプルなデザインの別ブランドを作ったことも。でも、自分とは関係ない他人の視線を気にしすぎていて。売り上げは悪くなかったけど、精神的に疲れてしまいました。
その時に、ほかの人が何と言おうと、自分が好きなことを続けるのが一番大事だと学びました。もちろん他人に迷惑をかけない程度で。これからも、好きなことに忠実に生きていきたい。

今の韓国を定点観測するためにチェックすべき本、YouTube、音楽
Book

オム・ジヘ(엄지혜)によるエッセイ。タイトルは「気難しく好きな人」を表す。様々な職業の人と会いインタビューをしてきた記者の経験のある著者が会った人の良い面を綴った本。「私は人と話すのは好きなんですが、他人にあまり興味がない。でもこの本を読んで、人の良い面を見ようとする作家のようになりたいと思えました」
YouTube
『연국의 내일(ヨングクの日常)』(@PlanBYeonguk)というタイトルのYouTubeチャンネル。1984年生まれの写真家であるチョ・ヨングクがロンドンに留学。現地での生活やヨーロッパを旅行する様子を綴ったVlog。「イギリスだけじゃなくていろんな国の様子が観られて面白い。昨年彼は帰国したんですが、次がどうなるのか楽しみです」
Music

韓国R&B界最強のタッグと言われるSUMIN & SLOMのコラボアルバム。「最近こればかり聴いています。好きな理由はとにかく歌が上手なこと!そしてカリスマ性がありますよね。アイドルの曲だったとしても聴いただけでSUMINだとわかる。キャッチーな曲作りをしながらも彼女らしさを込めているのが、ものすごくカッコいい」