——ジュンモさんはバーを始める前は何をされていたのでしょうか?
ジュンモ
もともとはDJとして活動を始めて、〈Midnight Seoul Club〉というクラブのレジデントDJとしても働いていました。その後、韓国で最初にリスニングバーを始めた店があって、今はなくなってしまったんですけど、そこで働いていて、独立して〈HILLS & EUROPA〉を開業しました。
——音楽にハマったのには何かきっかけがあったんですか?
ジュンモ
幼い頃から音楽はすごく身近にあったので、いつから好きかと言われるとわからないのですが、20歳の頃にアメリカに旅行に行って、友人にクラブに連れていってもらったのがめちゃくちゃ面白くて。そこで初めてクラブ文化に触れた記憶があります。
——どんな音楽を聴いていましたか?
ジュンモ
僕が高校生から20歳くらいの時、渋谷系のクラブミュージックが流行っていて、大沢伸一さんとかスタジオアパートメントとかの音楽を聴いていました。DJの活動を始めてからもそういった音楽を流したりしていました。
——いわゆるクラブでかかるような踊れる音楽と、今リスニングバーでかけているような聴く音楽は、少し雰囲気が異なりますよね?
ジュンモ
そうですね。クラブDJをしていた時はCDで音楽をかけていて、レコードを集め始めたのは、リスニングバーの〈ディスクサブ〉で働き始めてからなんです。その時に、今まで好きだったクラブミュージックは60~70年代のジャズやファンクが変形したものなんだということがわかって。それなら根本にある音楽に触れてみようと思ったんです。それからは、クラブでDJをする時もジャズやファンクをかけるようになりました。
——なるほど、それでレコードをディグるようになったんですね。主にどこで探していますか?
ジュンモ
韓国では年に2回大きなレコードフェアがあって、最初は何もわからないまま行って、ジャズやファンクが好きなんだけど何を買えばいいか?って聞いて20枚くらい選んでもらったりしていました。その後は、当時はソウルにレコードショップがあまりなかったので、主に日本のディスクユニオンやHMVで買い付けていました。
——お店の内装や店内の雰囲気にヴィンテージ感があってスタイリッシュなのですが、コンセプトは?
ジュンモ
特にコンセプトを決めていたわけではないんだけど、日本のジャズ喫茶の文化に憧れがありました。それをそのまま持ち込むというよりは、今の時代に合うような形で展開したいなと思いました。昼はコーヒー、夜はお酒を飲みながらレコードが鳴らす音楽をきっかけにいろんな年齢の人が集い話し合う、そんな場所です。現在の物件を見た時に、ここにスピーカーを置いたら音の反響がいいなとか、ここには家具を置きたいとかイメージが湧いてきたんです。家具に関してはヴィンテージのものもいくつかありますが、新品から使い始めてだんだんと時間が経過してきてエイジングされてきたものもあります。レコードにしてもそうですが、空間から時間の流れを感じてもらえるといいのかなと思います。
——日本で好きなミュージックバーはありますか?
ジュンモ
東京は下北沢にある〈リトルソウルカフェ〉が好きです。すごく小さな店なんですが、オーナーさんがカクテルを作りながら、レコードを一枚ずつ丁寧にプレーするその姿を見て、いつもカッコいいなと思っています。店の雰囲気もすごく居心地がいいんです。日本に買い付けに行く時は、最初にこの店に行って、次の日からレコードを探しに行くのがルーティンです。
——ソウルの面白さ、魅力はどこにあると思いますか?
ジュンモ
K-POPやK-Cultureなど「K-○○」とつくものに世界中から注目が集まっているようですが、その現象自体が興味深いですよね。また、ソウルは世界のどこの大都市と比べても流行が変わるのが速いと思います。良い面も悪い面もあると思いますが、僕はそこが面白いなと思っています。

今の韓国を定点観測するためにチェックすべき音楽、店
Music

みんな大好きNewJeans(現・NJZ)。プロデューサーのミン・ヒジンが仕掛けるポップな中に誰もが感じる懐かしさを秘めた曲とコンセプトは世代を問わず人気がある。「どの曲も好きですが、『Bubble Gum』の清涼感のあるメロディラインはいいですよね。懐かしさの中に複雑なシンセポップ調のサウンドが潜んでいるので聴いていて飽きません」
Shop

2021年に開店したレコードリスニングバー(ソウル特別市龍山区新興路99−7)。5坪ほどの小さな店。選曲はサウンドトラックから、シューゲイザー、韓国のインディーズまで幅広い。「ウイスキーを飲みながら本を読んでいる若い一人客がいて、そんな過ごし方ができるリスニングバーの雰囲気がいいと思いました」
Instagram:@snailrecordandbar
photo/Tetsuya Ito