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「韓国文化通信」Vol.11 タトゥーイスト、イラストレーター・Kim Miki

今、最も“要注意”すべき韓国カルチャーを牽引するキーパーソンにインタビューし、その変化を定点観測していく本連載。第11回はタトゥーイスト、イラストレーターのキム・ミキさん。

text: Keiko Kamijo / coordination: Kim Jinon (TOKYO DABANSA)

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——一枚の絵の中に物語が感じられるような独特な世界観の絵を描かれますが、どのようなカルチャーに触れていたのでしょうか?

キム・ミキ

子供の頃は、恥ずかしがり屋の子供だったので、一人で絵を描いたり、本を読んだりして想像の世界を膨らませるのが好きでした。学生時代は韓国に『밍크(ミンク)』『윙크(ウィンク)』という月刊少女漫画誌があったんですが、それがすごく好きでした。普通の少女漫画です。あとは日本のアニメをビデオでよく観ていました。『팬돔보이(ベンドムボイ)』(日本版は『ジャンケンマン』)も好きで、主題歌が絵描き歌になっていたんですが、それをよく覚えています。

——なるほど。現在のちょっとホラー感のあるタッチというよりはかわいらしい感じですね。怖い漫画が流行したりはしていなかったのですか?

キム

そうですね。中学生や高校生の時に伊藤潤二の漫画とかにも触れてはいましたが、特に好きだったわけではありません。現在のスタイルに影響を与えているとしたら、映画なのかもしれません。韓国の映画というよりは日本の映画で、監督だと岩井俊二作品と、『陽炎座』の鈴木清順、今敏や増村保造の作品も好きです。

——古い作品もありますね。鈴木清順にはどうやって辿り着いたんですか?

キム

最初に作品の存在を知ったのは本当に偶然で、ネットサーフィンしていた時に、鈴木清順作品の一枚のビジュアルを見かけたんです。それで監督の名前を知って、映画を観てみたら……。色の美しさに驚きました。

——なるほど、納得です。現在はタトゥとイラストの仕事をされていますが、どちらが先だったのでしょう?

キム

絵が好きでずーっと描いてはいたのですが、特に専門的に絵の勉強をしていたわけではありませんでした。高校を卒業し、絵を描きながらできる仕事はないかと考えていた時期にタトゥに興味が湧いて。友達の友達でタトゥーイストの方がいたので、習ってみようと思って始めたのがきっかけです。11年前くらいでしょうか。

——タトゥとイラストでは随分感触なども違うのでは?

キム

それまで紙に描いていた時と、肌の上に絵を描くのって全然感覚が違います。まずは人の肌に描くのって緊張しますよね。最初は豚の皮を使って練習して、その後は自分の肌や親友の肌で練習しました。人によって肌の質感や弾力が違うので、同じ絵を描いても全然印象が変わる。そして、人は動きますよね?動きで立体感が出るのも発見でした。また、タトゥというのは、基本1対1の作業です。私の性格的には社交性がなくて、人に会うのは苦手。なんですが、タトゥの作業を通して少しずつ人を知り、完成したタトゥを見るのはとても面白いですね。

——モチーフに猫やカマキリがよく登場します。このモチーフを描くのは楽しいというのはありますか?

キム

猫は飼っていますし、大好きです。カマキリは、以前映画で、交尾をした後にメスがオスの頭を食べるというセリフが出てきたのにショックを受けたことからよく描いているのだと思います。でも猫を描く際も、ただ猫の顔を描くというよりは、体の部分にクロースアップしてみたりと、映画的な表現方法を考えながら描いています。あと、モチーフで言うと、「目」は子供の頃から描くのが好きな部分です。形もテクスチャーも面白いし、感情が一番出るので描いていて飽きません。

——今後挑戦したいことは?

キム

最近陶芸を習い始めました。まだまだ練習中ではありますが、自分の作品として発表できるように頑張ります。

タトゥーイスト、イラストレーターKim Miki

今の韓国を定点観測するためにチェックすべき音楽、器、アート

Music

LEENALCHI『Sugungga』
LEENALCHI
6人組のバンド。韓国の伝統民族音楽であり口承芸能でもある「パンソリ」を80年代風のポップに再構成、新しい感覚のダンスミュージックを展開。1stフルアルバムの『Sugungga』は様々な音楽賞を受賞した。Instagram:@leenalchi

Craft

joheejinの器
joheejin
1990年生まれのセラミックアーティスト。彼女の作品は小さなボタンくらいのサイズの粘土を何百個、何千個とつなぎ合わせて器を作る。「同年代の陶芸の先生ですが、影響を受けています」。Instagram:@joheejinceramics

Art

Ahn Taewonの作品
Ahn Taewon
1993年生まれの作家。画像の形式で流通するミームをモチーフに、3Dモデルを奇妙に歪ませ、現実と仮想の中間物のような作品を制作。4月16日まで東京・渋谷のDIESEL ART GALLERYで個展『deep sea fish』開催。Instagram:@ppuri_
photo/Daiki Tajiri

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