——DQMというお名前の由来を教えていただけますか?
DQM
もともとドキュメンタリーの制作をしていたのですが、だんだんと領域が広がっていき、ファッションやアイドルのMV制作、そして最近では映画の撮影なども担当しています。本名がダウンで、YouTubeのアカウントを作る際にドキュメンタリーを撮るダウンという意味で「dawnqmentary」にして、音を拾ったらDQMになりました。
——ドキュメンタリーに興味を持ったきっかけを教えてください。
DQM
子供の頃、海辺の町に住んでいて、祖母が刺し身屋をする大家族に育ちました。いつも父が家族をビデオで撮影していて、人が話しているところを撮影する時にすごくタイトなアングルで撮影していた記憶があります。中学、高校では放送部で撮影をしていました。また、テレビ番組の『인간극장(人間劇場)』が好きでドキュメンタリーの勉強をするように。
その後ドキュメンタリーを撮っていこうと強く心に誓ったのは大学2年生、母が亡くなった時です。あんなにたくさん映像を撮っていたのに、母の映像が2本しかなくて。周囲の人たちをきちんと記録していく、それが自分の宿命なんだなと。
——DQMさんの映像は、観る人の感情を喚起するようなところがあります。撮る時に気をつけていることは?
DQM
ありがとうございます。私は映像を撮る際に、編集やカッティングでカッコよく見せるのではなく、対象となる人物の感情ラインに沿って、その人を見届けるようなカメラワークで、観る人に感情が伝わるよう気をつけています。
——自分自身で撮影がうまくいったな、と思った作品を教えてください。
DQM
チョ・ヒョンチョル監督の『너와 나(The Dream Songs)』(2022年)ですね。私自身、まだ作品から抜け出せていない状態で(笑)。自分が関わったからだけではなく、私の人生にとって大切な一本になりました。
——撮影時に心に残ったエピソードはありますか?
DQM
ラストシーンで主人公の2人が学校のそばを歩くシーンがあるのですが、監督から桜の咲く頃に撮りたいと言われました。私はそれまで人間にしか興味がなかったのですが、その言葉を言われてから、いつ新芽が咲くのだろう、と木ばかりを観察して過ごしました。そのうち自分の中に新しい感情が芽生え始め、桜の花が咲いた時、もう涙が止まらなくなったんです。
結局、撮影では桜は撮影しなかったんですが、監督はこの感情を味わってもらいたくて、私に伝えたのかなと。撮影プロセスの過程で受け取った感情は、忘れられないものになりました。
——現場では、どのように映像のアイデアを形にしていくのでしょう?
DQM
『너와 나』の場合は、すべてのカット、絵コンテの一つずつを入念に監督と話しながら進めていきました。ほかのクライアントがいる作品等でも、基本的には同じです。例えば、クリエイティブディレクターから出てきた絵コンテに対し、私が映像的、感情的なディテールを詰めていく。命を吹き込んでいくような作業になります。
——韓国で好きな場所、映像のインスピレーションが湧く場所は?
DQM
犬の散歩をしに〈하늘공원(ハヌル公園)〉によく行きます。ベンチに座って息抜きをしたり、考え事をしたり。もともとゴミ処理場があった埋め立て地なのですが、時々霧が発生して、ちょっと体にはよくないかもしれませんが、深い霧が思考を促します。
——今後やりたいことは?
DQM
北極がなくなる前に撮影をしに行きたいです。でも、もうその時は迫ってきているかもしれませんが。