——サン・ヤウンさんは幼い頃、どんなカルチャーに触れてきましたか?
San Yawn
90〜2000年代の幼少期に、自然に触れていたのは漫画、アニメ、ゲームです。その中でもゲームは、文明国家を築いていく『Civilization』と、サッカーチームのマネジメントをするシミュレーション『Football Manager』でよく遊んでいました。今考えると、自分がプレーヤーとして活躍するのではなくゲーム内の不確実な出来事に対してプレーヤー自体をメイキングする点は、今の自分の役割とつながるところがあるかもしれません。
——自分で音楽を作るようになったのはいつ頃からですか?
San Yawn
歌手になりたくてオーディションを受けたこともあります。歌手を目指すようになってから、ヒップホップやラップに興味を持つようになって、トラックを作り始めました。当時、Pharrell、Diplo、The Quiettらの活動を見ていて、音楽を仕事にするにはプレーヤーだけじゃなくてプロデュースするっていう方法もあるんだと驚きました。そんな感じで、歌手からプロデュースへと興味の方向がだんだん広がってきたんです。
——2018年にBalming Tigerを結成した経緯を教えてください。
San Yawn
最初は気の合う音楽仲間と一緒にDJパーティをしようと企画したんです。でも見事にうまくいかず、悲しい結果に終わりました。その時、自分たちがカッコつけて見栄張った結果こうなったんだと反省して、いつもの音楽をそのまま見せる方法を考えてBalming Tigerになりました。すごく強い意志があって始めたわけではなくて、いつもの自分たちの活動を見せて、みんなに笑ってもらいたいと思ったんです。
——Balming Tigerのもの作りはどのように行われていくのでしょうか?
San Yawn
最初にメンバーとコミュニケーションをとって進めていきますが、決まった作業スタイルや方法はありません。一人のアイデアから広がる場合もあるし、僕が考えた企画を相談して進めたり、第三者から話が来たりする場合もある。メンバーは本当に個性豊かなので、全員の意見を一致させるというよりは、もう少し大きなビジョンに向かって一緒に時間を過ごし、お互いの信頼感を得て自然に進んでいく感じ。議論をまとめるんじゃなくて11人が信頼し合って1人になるような。言葉にするのはとても難しいのだけれど。
——これからの韓国を面白くするキーパーソンを挙げるとしたら?
San Yawn
シリカゲルのキム・ハンジュさんと映像作家のソン・ウンフさんの2人。キム・ハンジュさんは韓国のインディーズミュージックシーンのなかで欠かせない人であり、これからも大きな影響を与えるでしょう。ソン・ウンフさんは2002年生まれの韓国のビジュアルシーンで一番輝いている人。『January Never Dies』の映像制作をしていただきましたが、独特な世界観を持つ稀有な人です。
——韓国内でよく行く好きな場所を教えてください。
San Yawn
1人で行くなら生まれ育った釜山(プサン)。夢に出てくる風景はいつもこの場所です。友達と行くなら済州(チェジュ)島。海もあって閑静でソングキャンプ(共同制作)しに行くのに最適です。大切な人と一緒に行くなら、お寺。あまりしゃべらなくてもお互いのことを感じることができる場所、心を無にできる場所です。
——ご自身の音楽やその活動で目指していることを教えてください。
San Yawn
矛盾する存在を好みます。それは人も創作物も同じ。矛盾したものを作り、両極の考えを持つ人たちを会わせ、滞っている体制や集団に混乱を引き起こしたりすることを楽しんでいます。