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年明け直前。企画展『米と藁。』でしめ縄と藁文化、ひとりの職人の生き方に触れる

2024年も残すところ、あとわずか。新しい年を迎えるにふさわしい展示が、六本木の「21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3」にて開催されている。愛媛県西予市で50年以上もしめ縄職人として活動する上甲清(じょうこう・きよし)さんの展示『米と藁。』だ。

text: Taichi Abe

上甲清さんは米寿を迎えた88歳。昔は草鞋の製作なども手がけたが、今ではしめ縄専用の稲を自ら栽培して、田植えから稲刈りまでを丁寧に行い、作品を作り上げる。時に重い切り株でできた作業台に藁の一端を固定しながら、手で擦り合わせて縄を綯い、完成した一点一点は静謐感が漂う凛とした佇まい。

伝統的な文化を継承しながら作り出される彼の藁細工をより多くの人たちに知ってもらいたいと考えた、清さんの孫・上甲智香(じょうこう・ちか)さんが立ち上げた「孫プロジェクト」に、インテリアスタリストとして活躍する作原文子さんたちが率いるMountain Morningが共感し、今回の企画展が実現した。


会場では、清さんのしめ縄の展示はもちろんのこと、愛媛での田植えから製作までの様子を追ったフォトグラファーの当山礼子さんの写真や、岡川太郎さんによる映像が楽しめる他、清さんが藁細工を作るときの道具類を現地で撮影したフォトグラファーの山口恵史さんの写真などが展示されている。また、清さんの作品の一部は購入が可能(数量限定につき、完売の際はご了承ください。ご購入いただくお客様へ、個数限定のご案内をする場合があります)。

もともと、しめ縄は五穀豊穣や無病息災、平和などを祈念して、年始に歳神様を家に迎え入れる準備ができたことを表し、厄を払うために飾るもの。年明け直前のこの時期に、上甲さんが作るしめ縄を通じて、彼が継承する藁文化、そして上甲さんのものづくりの姿勢と生き方を体感してみるのはいかがだろうか。