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それぞれの“孤独のグルメ” 第6回:板谷由夏(第3話:看護師長・高垣晴美役)

『孤独のグルメ』は究極のリアリティドラマだ。主⼈公・井之頭五郎はもちろん。キャストやスタッフの⾷体験、現実に存在するお店やメニューはそのままドラマに刻み込まれる。2025年1月10日に公開する『劇映画 孤独のグルメ』に先駆け、特別編『それぞれの孤独のグルメ』の放送と配信を記念して、タイトルそのままにお話を聞いた、全7回の短期集中連載。第6回は板谷由夏(第3話:看護師長・高垣晴美役)。

text: Atsunori Takeda

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ビジネスマンがランチメニューをつつく真昼の焼き肉店で、板谷由夏演じる高垣晴美は、グランドメニューから自由に肉を選び、にんにくを焼き、豪快に喰らう。彼女は都内総合病院の看護師長。ハードな夜勤明けは、心身共に「肉」を欲するのだ。その健啖家ぶりは、かなり板谷さん本人のイメージに近い。彼女の食の根っこにあるのは執念と自由。そんな板谷由夏の「孤独のグルメ」とは。

肉を焼く板谷由夏

一発勝負の食のシーンには、素が出やすい⁉

『孤独のグルメ』の食事シーンは「本番一発なので、お好きに食べてください」と言われました。最初こっちから撮って、次にあっちから撮りますので、っていう段取りはきちんとあるんですけど、本当に最初から順撮りで1回。

食べてる最中のモノローグは台本には書かれているんですが、「いくらでもズラせるので気にしなくていいですよー」って。それでもあたまの中でモノローグを流しながら、

自分で一からお肉を焼いて食べました。ドラマですので、作中の看護師さんの女性を演じて焼肉に向き合ったつもりです。でも仮にそこで板谷の“素”が出ていたとしたら、もしかしたら食べるところでは嘘をつけないのかもしれないですね。

私の場合、食事中はモノローグではないんですよ。おいしいものを食べたら、「あ、おいしい!」ってリアクションが出てしまう。口に出してます。誰かと一緒だったらあーだこーだ感想言うし、1人でもお店のおばちゃんとかにめっちゃ話しかけます(笑)。ひとりでごはん、全然食べにいきますよ。今やそれがすごく楽しみだったりもします。

一食入魂。執念の店選びが出会いの軌跡を呼ぶ

プライベートでは長らく母親として、ごはんの切り盛りをしているので、ロケや舞台で、泊まりで地方に行くときは「しめしめ」って思うんです。1人かどうかはさておき、自分でお店を選んでごはんを食ベにいく機会自体、そんなにないですからね。

なので、店探しは執念です。絶対にその土地の美味しいものが食べたいし、失敗したくない。知り合いの中から地元の出身者を探して、その家族に聞いてもらったりもします。それから料理家や、レストランをやってる友達など……徹底的にリサーチします。

もちろん、それ以前にも同じようにリサーチはしていて、「いずれその土地に行ったときのために」、グーグルマップに星をつけています。出かけた先で「今日はこれが食べたい!」ってメニューがポンと頭に浮かぶ場合もありますよね。そのときはまたゼロからリサーチ、あるいは飛び込みもやります。定番ですけど、タクシーの運転手さんに聞いたりまさに『孤独のグルメ』を地で行ってますね。

この間、京都で運転手さんに教わったうどん屋さんは最高でしたね。つゆがかき玉になっていて、すすると茶碗蒸しを食べてるみたいな食感と味わいなんですよ。そこにエビ天が、さかさまに2本刺ささってる。まるで「犬神家の一族」みたいなんですが、「日本のお出汁って最高なんだ」ということにあらためて気づかされ、ハマっています。

自分史上最高に自由度が高い今のごはんのあり方

自分ひとりなら、おいしいお酒とアテがあればよかったんです。でも、親になると事情が違って、子どもは与えられたものが自分のベースになり、それによって成長していくでしょう。ごはんをおろそかにしてはいけないという思いから、さらに執着するようになったのかもしれません。

家ではごはんをつくるし、家を離れるときはその日数分のつくりおきを夫に託して、彼が作れるものは何食かおねがいして。豚汁と餃子とミネストローネは息子たちに野菜を食べさせるのに最適な、うちのおなじみのメニューだったんですよ(笑)。それが子どもたちも成長し、今年からひとり留学し、下の子も6年生になったので、私がいないときは夫と次男の男2人で「よし、今日は王将いっちゃおうぜ!」とか「ラーメンにするか」みたいな楽しみ方をするようになって(笑)。

なんだか、“ネクストステージ”に到達したみたいな気持ちですね。舞台でポンと5日間ぐらい大阪とかに気兼ねせず行けるようになったし、滞在先で必死に好きなものを探して食べられるようになったし。あと、食べたものを家で再現するのも楽しいし。今、食に関しての自由度は生涯最大級に高いですね!

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