ゲームクリエイター:〈Onion Games〉木村祥朗
思い出のゲーム
ゲームを作るプロたちの仕事ぶりを間近に感じた、『ロマサガ2』の開発現場
中学生の時、畑の真ん中にある電器屋でアップルⅡの『ロードランナー』を触って感化され、自分でもゲームを作るように。高校でいったん離れて演劇などに興味を持ったんですが、『FF Ⅲ』や『FF Ⅳ』を遊んだこともありスクウェア(現スクウェア・エニックス)に入りました。「自分も『FF』を作りたい!」というより、プロがどうやってゲームを作ってるのか興味があったんです。初仕事は『ロマンシング サ・ガ2』のマップ制作でした。
僕はスクウェア初の新卒採用で、末端も末端。周りはディレクターの河津秋敏さん(『サガ』シリーズの生みの親)をはじめ知識豊富でマニアックな賢い方ばかり。テスト勉強ができる頭の良さというより、機転が利くとかアドリブが得意とか未来への懸念や予測力が強いとか、問題を解決しようと努力する、みたいなスタンスというか。あの日の経験があるから、どこの現場でも僕は一生懸命です。
大事なのは「ゲームからゲームを作らないこと」だと思っています。動機はいつも日常にあって、演劇や映画、現代アート的なものを観て、感動したり「おおっ!」てなったりした時に初めて生まれるもの。『moon』を作った時もそうです。
僕はスクウェアを3年で辞めて、もうゲームは作らないぞという気持ちでペルーを旅したんです。するとアグアスカリエンテス駅の広場に屋台が出ていて、子供たちが交代で『FF』を遊んでたんですよ。「ストーリーものをみんなでやってるの⁉」って感動して。
ゲームってすごいなってモチベーションで帰国して、仲間たちと『moon』を作りました。勇者ばかりが正しいんだろうか、という疑問は、あの頃のRPGの作り手はみんな抱いてたんですよ。それを形にしたのが僕たちだっただけ。チーム全体にサイケデリックやラブ&ピースを重んじるヒッピーフィーリングのような空気がありましたね。
これまでシリーズものをやらずにきました。だから『moon』の兄弟的な『ストレイチルドレン』を作るにあたって、過去作を意識しながら開発するという初めての体験をしています。コンプラとか道徳、世の中の風潮を気にして売れるか売れないかに焦点を合わせようとすると悩んでしまう。なんだかわからないけど面白い!自分の気持ちに正直に、そう思えたらいいと思うんです。
木村さんの代表作
moon(1997)
ストレイチルドレン(2023)