「新しいことへの興味は突然やってきます。その心が震えるサインを見逃さず、素直に受け入れることを心がけてきました。10代ではじめたお笑いも、そう。トークだけでケラケラと女性を笑わす芸人の姿が僕の目にはとてもセクシーに映りました。男としてかっこいい。だから自分もやってみたい。はじめる動機はいつも単純なことでした」
食指が動くことは、まずやってみる。そこには年齢も一切関係なく、片岡さんは気の向くままに、30歳を越えてからも新しいことをはじめ続けた。
「お笑いと並び、子供の頃から憧れていたボクサー。32歳でプロを目指そうと決めてから、当然ながらたばことお酒を断ちました。その姿を見て、ストイックな人と、周りは思った方もいたでしょう。ただ、実際は禁欲的な気持ちは一切なく、未知を探求する時間が快楽的すぎて、楽しさで満たされていました。これは57歳からはじめたヨガにも言えること。ヨガルーティン、瞑想を終わらせて朝の身支度をすることが日課になってから、毎日就寝は17時頃に。そして、22時には起床。そこからヨガを5時間。普通では考えられない昼夜逆転した生活を10年間、365日続けています。
友人との食事会に参加する頻度がめっきり減ってしまったことは言うまでもありません」と、何かを断つ覚悟はスタートラインに立つ際、常に持ってきたそう。
「ただ、今までいろんなことをはじめてきましたが、趣味は一つもないんですよね。全部、真剣勝負。逆にはじめるかどうかの見極めも早くて、ゴルフは1日でやめてしまいました」という片岡さんが、次に極めようとしているのが、ファッション。
「これまで三十数年にわたり、スタイリストに選んでもらっていた衣装を自分で用意するようになりました。ヨガをはじめてスリムになった体にぴったりとフィットする服を探す。
メンズの既製服ではぶかぶかなので、知人の仕立て屋さんを駆使したり、細身のレディース服から私が着られそうなデザインを選んでジェンダーレスなコーディネートを考える。これまでとは全くアプローチが違う、新たな挑戦です。
当然、壁にブチ当たり、落ち込むこともあると思います。そんな時は、“絶対に大丈夫”と自分自身を鼓舞する。これまではじめてきた自信があるから、今回も大丈夫だと信じられるんです」
片岡鶴太郎の「はじめる。」年表
1972年(18歳):芸人をはじめる。声帯模写の片岡鶴八師匠に弟子入り。
1986年(32歳):ボクシングをはじめる。JBC主催のテストを受け、プロライセンスを取得。
1992年(38歳):墨彩画をはじめる。新たな表現を養うため、芸術の世界へ。
2011年(57歳):ヨガをはじめる。ヨガマスター、トウドウ先生に指導を受ける。
2017年(63歳):ファッションをはじめる。メディア露出する際、自身で服を用意するように。