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宮本佳林&小片リサが惹かれるSF物語

自身の新たな感覚が“目覚める”お気に入りのSF作品は?ハロー!プロジェクトOGで歌手の宮本佳林さんと小片リサさんにインタビュー。2024年7月1日発売BRUTUS「夏は、SF。」の掲載内容に加筆&アザーカットを追加した、拡大版をお届けします。

photo: Kodai Kobayashi / hair & make: Megumi Kuji / text: Nozomi Omori

細部まで完璧に計算された、ロジカルな物語に惹かれて――宮本佳林

SFで最初にハマった作品が『ワールドトリガー』でした。ほぼ現代の話だし、SF設定が現実と近いので、ほんとうにありそうというか、それこそ自分が隊員になったら……みたいな妄想も楽しめるんです。

ジャンプ系の漫画をよく読むんですが、ジャンプのSF漫画って、緻密に計算された作品が多い気がします。理屈に粗がないところが好きです。『Dr.STONE』なんか、私の理解が到底およばないような科学の知識やアイデアがたくさんちりばめられていて、そういう部分にも惹かれます。

あっと驚くどんでん返しも大好物で、『彼方のアストラ』のストーリーはよかったですね。これから読む人は、絶対ネタバレを踏まないように気をつけてください(笑)。

「少年ジャンプ+」の新しい連載はリアルタイムで全部追っているんですけど、SFだと、今年スタートした『深層のラプタ』がめちゃめちゃ面白いですね。画力が高いのにまず引き込まれて。人間の男の子がAIと恋をするという話なんですが、1話ですでに意外な展開があって、この先いったいどうなっちゃうんだろうって。続きが楽しみです。

MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース/「マーベル・コミック」を原作とし、かつ同一の世界観のうえに成り立つ映画作品群)は、知人に布教されたのをきっかけにハマりました。2カ月くらいで、フェーズ1からガーッとまとめて観て。ドラマの『ロキ』がいちばんよかったですね。この時間線と、別の時間線があって……という話がとにかく好き。時間変異取締局(TVA)とか、現実にありそうじゃないですか。

ちなみに、私がこれまでに出演してきた舞台も、なぜか時間ものが多くて。Juice=Juice時代に主演させていただいた演劇女子部『タイムリピート~永遠に君を想う~』から連続して、タイムループやタイムスリップをテーマにした作品に携わらせてもらっています。ループものは、舞台の上だと演じるのがけっこう難しくて、最近だと『悪嬢転生』という作品をやっていた時は「あれ、一体今人生何周目だっけ」みたいな(笑)、不思議な感覚になりました。なぜなんでしょうね。私、タイムスリップしがち?もしかしたら本当にループしているのかも……みたいに、自分の中で妄想が膨らむところが、楽しくていいんですよね。まあ、かく言う私は、バッチリ1周目ですけどね!

現実とはどこか違う世界へ。庵野秀明作品から受けた大きな影響――小片リサ

中学生の頃、親に内緒で夜中に布団をかぶって、こっそり携帯で動画を観る習慣があったんです。関連動画でたまたま流れてきたテレビアニメ版『新世紀エヴァンゲリオン』のオープニング映像のカッコよさに衝撃を受けて、そこからオリジナルのテレビ版を観漁りました。

アニメはもともと好きだったんですが、広く浅くというより、深く狭くというタイプ。同世代の子がみんな観ていた初期の『プリキュア』シリーズよりは、私が生まれる少し前にやっていた『美少女戦士セーラームーン』や『カードキャプターさくら』にピンポイントでハマっていました。『セーラームーン』シリーズでも、最終章の『セーラースターズ』が一番好きだったりして、同世代の感覚とはちょっとズレているかもしれません。

『エヴァ』から庵野秀明さんにハマって、『ふしぎの海のナディア』『トップをねらえ!』『彼氏彼女の事情』を観て。アニメを観つくしたあとは、実写の『ラブ&ポップ』に行き、最終的には『式日』にたどり着き。映画の舞台になった山口県宇部まで、ひとりで聖地巡礼にも行きました(笑)。

エヴァがSFだとは意識していませんでしたが、現実とはどこか違っている作品が基本的に好きなんです。だから好きな作品にSFが多いのかも。それも、完全に想像で作られた物語じゃなくて、何か元ネタがあったり、別の道をたどったりすると、ぼんやりと違った答えが見えてくる。そんな作品が好きですね。

庵野さんが天才すぎて理解を絶する部分もたくさんあるんですけど、「こういうことなのかなあ」と考え続けると、どこかにある正解にたどり着ける気がする。そこが私にとってのSFの魅力なのかもしれません。

リアルタイムで観られたのは、2012年公開の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』からなんですが、1997年の『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』とか、劇場公開の瞬間に立ち会いたかったですね。エンディングで主題歌の「魂のルフラン」が流れるところ、客席はどんな反応だったんだろう、って。現実とは少し違う世界で描かれる、濃厚すぎる人間ドラマが好き。今まで意識していなかったけれど、やっぱりエヴァもSFですね。

『トップをねらえ!』は、1作目を観たあと、しばらく間を置いて『2』を観たんです。『2』のほうは、個人的には庵野さんというより鶴巻和哉さんの作品だと思うし、主人公のノノちゃんもぜんぜん庵野さんらしくないキャラクターなんですけど、そのノノちゃんにハマって、『2』が大好きになりましたね。

宮本佳林&小片リサが選ぶSF4作品

『ワールドトリガー』

著:葦原大介/2013年~連載中/28万人が住む三門市に異世界への門が開き、出てきた怪物たちを界境防衛組織〈ボーダー〉が迎え撃つ。「壮大だけど緻密。味方同士で模擬戦をしているだけですごく面白い。“トリオン体”の設定や各キャラも最高」(宮本)

『ロキ』

監督:ケイト・ヘロンほか/2021年〜配信/アベンジャーズから逃亡した裏切りの神ロキは、時間の流れを守る時間変異取締局本部に連行される。「入り組んだ物語に脳ミソフル回転。MCUで一番好き。私も時間変異取締局本部で働きたい!」(宮本)

『新世紀エヴァンゲリオン』

著:貞本義行/1994~2013年連載/TV版・旧劇場版に基づくコミカライズだが、ストーリーやキャラに独自解釈が加わっている。「アスカ派だったので、『シン・エヴァ』のラストに納得がいかなくて……。一番しっくりくるのは貞本版です」(小片)

『トップをねらえ2!』

監督:鶴巻和哉/2004〜06年発表(OVA)/前作の12,000年後、宇宙怪獣と戦い続ける人類。アンドロイドのノノは宇宙パイロットを夢見るが……。「結末の衝撃がすごすぎて。前作がここでつながるか、と。たぶん人生で一番感動した映像作品です」(小片)