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金本凜太朗と仁科勝介。若手写真家2人が語る、SNS時代の写真論

独自のセンスで切り取られる景色の数々に様々な媒体からのオファーがやまない写真家・金本凜太朗さん。今回話をするのは、日本全国の市町村一周の旅をまとめた作品集『ふるさとの手帖』でも話題を呼んだ写真家・仁科勝介さん。1990年代後半生まれの二人の写真家同士が、考えることと、そして写真とSNSについて。

photo: Katsusuke Nishina / text: BRUTUS

SNSから考える写真家像

仁科勝介

金本さんは出身が広島、僕も大学が広島で、〈広島蔦屋書店〉さんを通して知り合ったんですよね。普段からSNSで写真を拝見していて、毎回思いつきもしないようなアイデアで撮っているので、その辺りの話を聞きたいなと。

金本凜太朗

ありがとうございます。

仁科

金本さんは写真をしっかり学ぶために学校に行っていたと思うんですけど、独学でやってきた僕から見ると羨ましいなと。

金本

いえいえ、一時期学校に行かなくてもよかったのかなと思うこともあったんです。それまでの写真が撮れなくなった時期があって。逆に、高校時代の写真を見ると、無敵な感じなんですよね。無意識に撮っていて、すごくピュアな写真が撮れている。学校に通って人の写真を見るようになって、撮れなくなった時期があったんです。

金本凛太郎

仁科

なるほど、そんなことがあったんですね。金本さんはもともと、鳥を撮っているイメージがあるんです。野鳥を撮るのが趣味でカメラを始めたと聞いたことがあったんですが。鳥を50mmや35mmの単焦点レンズで撮っても、面白くないわけで、いろいろな工夫をしないといけない。金本さんの写真の面白さはそこから繋がっているのかなと思っているんです。

金本

確かに繋がるかもしれないですね。小学校の頃はコンデジで野鳥を撮っていて、中学校に上がるタイミングで一眼レフを買ったんです。最初の目標は大きなレンズを手に入れて、鳥を大きく撮ることだったんですね。ただし、標準レンズもついていたので、それでも遊んでいました。

仁科

鳥の撮影から始まってそれ以外の対象を撮り始めたのはいつなんですか?

金本

だんだん写真表現に興味が湧いてきて、中学1年生のときには、ブレやボケで遊んで、ひたすら撮っていました。例えばビー玉越しで撮ってみたり。その頃からInstagramもやっていて、基礎的なことはそこで学んだ気がします。この写真はどうやって撮っているんだろうと、いろいろ考えましたね。

仁科

僕たちはインスタやSNSがある時代から写真をやっているわけですが、Instagram始めたの早いですね。僕は高校後半ぐらいだった気がします。

金本

僕はInstagramができて1年目くらいに始めたんです。まだ写真好きのコミュニティみたいな感じでしたね。最初は正方形しか上げられなかったですし。

仁科

金本さんは写真での表現が好きだから、すごくInstagramと相性がいいなと思っていました。世の中のみんなは、なんでこんな写真が取れるんだろうと思っているはずなんです。しかも嫌みもなく、オリジナルで。そういう感じは高校の頃には確立されていた感じなんですか?

金本

どうなんですかね。特に意識はしていなかったんですけど、学校での勉強は今考えるとやはり役に立ったのかなと。

仁科

ちなみに写真も含め、いろいろなインプットはしていますか?

金本

写真はたくさん見ます。人の個展に行くことは多いですよ。モチベーションを上げるために見ることは多いかもしれないですけど、個人的には、あんまりインプットしていないですね。

仁科

写真が撮れなくなることはあるんですか?僕は自分の写真が面白くないなってことがあるんです。

金本

あるかもしれないですね。でも、そもそも外に出ているか出ていないかもあるかもしれないです。面白いものがあったら撮りたくはなっちゃいます。

仁科

レンズを覗くと、こうなるって先にわかるんですけど、わかってて面白そうだったらシャッターを切るし、そうじゃなかったら切らない。

金本

あとは日によって違いますね。僕は一日の情報量が日によって違うことがあるんです。それはテンションだったりが原因なんですが、色や形が目にすごく入ってくるときがある。

撮れなくなった当時は、スランプの意識はありつつも撮ってはいたんです。とはいえ、なんだ、これはみたいなことが多かったですが。

金本凛太郎

仁科

最近はクライアント依頼も増えていると思うんですが、金本さんのテイストで好きに撮ってくださいというときも多いですか?

金本

そうですね、そんな仕事は最高です。ただ好きに撮りすぎてもだめなので、ある程度課題があったほうが楽しいですね。

仁科

プレッシャーではない?

金本

そうですね。こないだメルセデスベンツのウェブで写真を撮ってほしいと依頼されたときは本当に自由だったんです。ウェブ記事で写真家とコラボする企画だったので、自由度が高かったですね。仕事となるとある程度課題が与えられた中で、今後のためにアピールすることも必要になる。あとは一緒にやっている人が写真のことをわかってくれる人もいいけど、わかってくれない人にわかってもらえるような写真を撮ることも面白いです。

ポートレートを撮るということ

仁科

今やっている中で、やりたいことと、できることが近づいている感じはしますか?

金本

そうですね、だんだん近づいている感じはあります。

仁科

じゃあ、あとはもう走るだけですか?

金本

いや、まだやりたいジャンルはたくさんあります。特にポートレートが撮りたいですね。普段は物や風景などの無機物ばかりで人を撮るとしてもスナップの一部が多くて。

仁科

ポートレートって何だろうっていつも考えているんですけど、ポートレートって物凄いジャズっぽいなと思っていて、その場で成り立つ一発勝負。完璧な演奏と言うよりはその場のアドリブという感じが近いというか。

金本

ポートレートとして人に向き合う感じになると、スタイルは変わりそうですね。石田真澄さんもそうだし、川島小鳥さんもそんな感じがします。

仁科

このあいだ篠山紀信さんの写真集『Santa Fe』をあらためて見たんですが、絶句するほど強い写真で、言葉にすると陳腐なんですが、すごいなあと。

金本

人を撮る時に話さないというスタイルもあると思うんですけど、そういった自分なりのスタイルを見つけていくのも面白いですね。今はある意味無機物を対象にポートレートを撮っているという考え方もできるんです。変な表現ですが、写真を撮る時には人より物と会話するほうが得意な気がしています。それは一つの課題でもあるんですけどね。

仁科

人を撮るとき、無意識でいられますか?

金本

やっぱり人を撮る時は気を使いますよね。人を見るのか、背景を見るのかで意識も変わってきそうな気もします。

仁科

今後どこか行ってみたいとか考えていたりしますか?

金本

こだわりはなくて、どこでもよかったりするんです。今はやりたいコンセプトがあって、それを撮りたいなと思っています。封筒の中の写真を撮っているんです。

仁科

すごいな……。それはどうやって気づくんですか?

金本

なんでしょうね。窓があるから光透かしたらどうなるかなって気になるんです。

仁科

普痛の人が通り過ぎてしまうところを写すのが写真の面白さだと思うんだけど、金本さんはその超オリジナル視点が素敵だなと。

金本

言葉で伝えるのがどうしても苦手なので、写真で共感してもらいたいんです。

金本凛太郎