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〈レショップ〉コンセプター・金子恵治が探求する、無名のヘリテージ

かっこいい大人は今何に惹かれるのか、ファッションを舞台にする〈レショップ〉コンセプター・金子恵治が、新たに集め始めたアーカイブは、スタイルやクリエイション、さらには生き方にまで大きな影響を与えていた。

photo: Shinsaku Yasujima / text&edit: Keiichiro Miyata

古今東西の誰かが愛した、
無名のヘリテージを探求する

アイビーやフレンチ・アイビーなど、古今東西のトラッドは、大人の普遍的なスタイルだが、金子恵治さんはそこに新たな解釈を加えてアーカイブを収集している。

「トラッドは日本では広く浸透していますが、海外では“ヘリテージ”という言葉で紹介されます。ヘリテージ=伝統服は、シーンが加わるとスタイルになるという考えのようで、例えば避暑地では普段穿くチノパンの裾を切ってショーツにしてしまうという具合」

こういった個人のアーカイブが、結果として、代表的なスタイルとして語り継がれてきたのだという。

「僕たちがイメージするトラッドはあくまでも歴史の断片にすぎないんです。国やシーンが変われば、当然着こなし方は変わる。時代が変われば、そのシーンの捉え方も変わる。ある時代に登場した伝統服であるヘリテージは“点”と捉え、そこに現代を生きる個人の解釈が加わると“線”となり、スタイルとして確立するというのが持論です。

ブリーチしたデニムシャツや、1950年代にどこかのテーラーにオーダーしたハンティングジャケット、自らスタッズを打ち込んだデニムジャケットなど、歴史に残らない無名のヘリテージはたくさんあります。その経年変化は、個人が愛でていた証し。教科書には載っていないトラッドの変遷を辿る、ヘリテージ収集を今年から始めました」と、独自の視点でトラッドを探求。その一部がここで紹介された服だ。

「僕の解釈では、アメリカ西部の人にとってはウエスタンもヘリテージ。それを現代の僕が、ここ日本の風土で着こなすことでトラッドに昇華できるのではないか、と考えました。

実際に、80年代のパリに同じような考えで服をセレクトする〈エミスフェール〉というショップがありました。それをお手本に、僕がディレクションするレショップを2023年春にリニューアルする予定です。まだ探求途中のトラッドの新解釈を、そこでお披露目できたらと思います」