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進化する日本の香水〈KAN IZUMI〉。自然豊かな島から生まれる、香りのクリエイション

香水は西洋のもの、という考えはもう古い。日本発のフレグランスも続々誕生し、世界で評価も上昇中。今、日本人ならではの繊細な感性が生み出す香りに迫る。

photo: Kunihiro Fukumori / text: BRUTUS

“感覚の蘇生”を世に問いかけ、アーティストとして活動する和泉侃(かん)さんが創作するそれは、フレグランスというより、アートワーク。

ハッとするほど素材の香りが鼻腔の奥を突いて、作家の意思を強く覚える。そんな唯一無二のもの作りは、兵庫県・淡路島から生まれる。かつて香木が漂着した、日本の香文化の始まりとしても知られる地で、和泉さんは原料の栽培から蒸留、調香までを手がけている。

香水の蒸留施設
蒸留施設で精油を抽出する活動も行う。

「いきなり抽象的な話になりますが、今日まで文明が進化したことで、最も失われた感覚が嗅覚ともいわれているんです。そんな人間本来の身体感覚をどうすれば再生できるのか、常々考えながら“感覚の蘇生”を掲げて香りを作っています。今までのプロダクトの領域にとらわれず、自分が表現したいものとレシピを作ることが僕のクリエイションの肝かもしれません」

自然豊かな島でたくさんの植物に触れることで、原料の理解をその手で深める。「クオリティやオリジナリティにも直結する」が、何よりも「ロマンがある」と語る和泉さん。自身のクリエイションのみならず、〈マメクロゴウチ〉や〈CFCL〉といったファッションブランド、ミュージシャン、ホテル、レストラン、展覧会からも依頼を受け、香りを制作している。

「請け負う場合はリサーチにリサーチを重ねたうえで、クライアントにシンクロするように自分を重ね、最後に“自分を抜く”イメージで作業をします。そのうえで、服を一枚羽織るように、身にまといたくなる香りを心がけています。一方、自分の創作ではただ表現したいものを作る。

最新作は2024年8月に〈DDD HOTEL〉でインスタレーションとともに発表した《NOISE CANCELLATION》。都会の喧騒を相殺するような嗅覚への身体感覚アプローチを表現しました。これは最近追究しているジャンルでもあります。まだまだ研究している原料、表現したいものは尽きそうにありません」

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