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あの人も、家で瓶ビールを楽しんでいます。Vol.3 滝口悠生「日常の中で味わう、小さな幸せ」

今では居酒屋やレストランなど、一部の飲食店でお目にかかることのできる瓶ビール。生ビールや缶ビールが一般的な時代においても、手酌でグラスに注いでちびちび味わったり、仲間とお酌し合ったりして飲み進めるこのスタイルには、特別な魅力があるものだ。関東・関西・九州に店舗を展開する酒専門店〈カクヤス〉が「瓶ビールの無料宅配サービス」を通じて提案するのは、家で瓶ビールを楽しむ豊かな時間。小説家として日々執筆に励む滝口悠生さんも、仕事や家事、そして子育ての傍ら、瓶ビールを飲む束の間の時間を楽しんでいた。

photo: Kenya Abe / text: Emi Fukushima

注ぎながら飲む、という最高の贅沢

「お酒はほぼ毎日飲んでいます。飲み始めはビールで、あとは焼酎か日本酒に移行することが多い。量をたくさん飲むわけではないですが、一日をお酒で締めるのがなんとなく習慣になっています」

滝口悠生さんが暮らすのは、都内の閑静な住宅街に位置する一軒家。ここを拠点に仕事をしながら、家族と日々を送っている。家族の中では主に料理担当だという滝口さん。傍らにお酒を注いだグラスを置いて彼がキッチンに立つ様子は、一家のごく日常的な風景だ。

台所に立つ滝口悠生
夕食の支度をする滝口さんの傍にはビールを注いだグラスが置かれる。こうしてお酒を飲みながら料理をする時間が束の間のリフレッシュになるのだそう。

「日中は仕事をして、夕方に子供を保育園に迎えに行きます。帰ってきて夕飯の準備を始めると同時に、キッチンでちびちび飲み始めるのがいつもの流れですね。その日の仕事が終わっていれば、子供が寝た後に、翌日の朝ご飯の用意をしたり、溜まっていた家事や事務作業を片付けたりしながらもう一杯やることもあります」

日常的にお酒を楽しむ滝口さんにとって、ビール自体はごく身近な飲み物。手に入りやすさや保管のしやすさゆえに、自宅の冷蔵庫には缶ビールが並ぶことが多いそうだが、だからこそ、時折瓶ビールと相対する機会に恵まれると「なんとなく気分が高揚する」のだそう。中でもグッとくるのが、“注ぐ”というアクションだ。

「自分のペースで注ぎながら飲めるのも心地いいし、周囲とシェアできるのも嬉しいんですよね。子供が生まれてからは、夜に飲みに出かける機会はグッと減りました。その分、打ち合わせでの外出がてら、お昼に仕事仲間と軽く飲む機会も増えたんです。昼から生ビールをジョッキでグイグイ飲むと、軽い罪悪感に苛まれるんですが、瓶ビールを頼んで周りと分かち合いながら飲むと、どこか慎ましく飲んでいる感じがして気分がいい。結果的に『もう一本』と手を伸ばしてしまうので、飲む量が減るわけではないんですが(笑)」

瓶ビールに滲み出るのは、さまざまな人間性

そんな特別な魅力を持つ瓶ビールは、滝口さんの小説にもしばしば登場する。その佇まいや独特の存在感ゆえに、世界観づくりに一役買ったり、展開の起点になったりすることもあるのだとか。

「そもそも僕自身が町の小さな中華店や昔ながらの居酒屋が好きで、作品の中でよく描いています。そこでのシーンに瓶ビールとグラスを登場させることで、グッと雰囲気が出るんですよね。それに瓶ビールは、注いだり、注がれたりという動作が紐づくもの。一人ひとりがそれぞれ飲む印象の強い缶ビールや生ビールとは異なり、登場人物同士の会話や交流の起点になることがあるんです。人と人との間にあって、その場や空間を繋ぐ一つのモチーフとして機能してくれることがありますね」

台所で立ちながら本を読む滝口悠生
煮込み料理などの待ち時間には、積読していた本をキッチンで開くこともある。そんな折にもお酒は欠かせない。

例えば、ある老人の死をきっかけに集まった親族たちの一幕を描いた芥川賞受賞作『死んでいない者』でも、随所に瓶ビールが出てくる。栓抜きを使わずに窓の桟を使って器用に瓶ビールの蓋を開ける人がいたり、手酌でビールをどんどん注ぎ足す人がいたり。あるいは、瓶ビールをラッパ飲みして泥酔する人がいたり。開け方、注ぎ方、飲み方の随所に登場人物たちの個性が滲み出ている。

「栓を開けることやビールをグラスに注ぐことが得意な人もいれば苦手な人もいるし、手酌が好きな人もいればお酌されなきゃ気が済まない人もいる。瓶ビールを取り巻く一挙一動には、その人の人間性や日頃の習慣が出ると思うんですよね。

ビールをグラスに注ぐ様子
以前に比べれば飲む時間は短くなってきたという滝口さん。ビールのほか、最近は黒糖焼酎をロックで飲み、短時間でガツンとお酒を楽しむ。

またお店の場面だったら、冷蔵ケースにどんなふうに瓶ビールが収納されているか、どんな栓抜きが使われているのか、栓抜きは冷蔵ケースにくくり付けられているのか、各テーブルに置かれているのか……などいろんな可能性があります。そのディテールによって、そこがどんなお店で、どんな人たちが集まる場所なのかを暗に示すことができる。瓶ビールを囲むという行為を介してさまざまな情報を盛り込めることも、瓶ビールを描くことの面白さです」

あくまでも気負わず、気楽に飲めるお酒として

小説の登場人物たちは瓶ビールに対してさまざまな飲み方のスタイルを持つ一方で、滝口さん自身は「蓋は栓抜きを使って普通に開けるし、注ぎ方も泡の分量も適当。特にこだわりはないんです」とのこと。むしろ、何も考えずに気楽に飲めることが心地いい。

瓶ビールをあける滝口悠生
時にはビール片手に、ゲラを読み直したり、メールを返したりなどの仕事の作業をすることも。

「仕事関係の飲み会では特に、気を使って少しでも空いたら注ぎ足してくださる方も少なくないのですが、僕は『それぞれ手酌でやりましょうよ』と思うタイプ。家で飲むときも、ビールに合わせるおつまみは手の込んだものじゃなくておかずの残りで十分です。強いていうなら銘柄は、サッポロ黒ラベルや赤星を選ぶことが多いかもしれません。缶ではあまり選ばないアサヒスーパードライも、瓶だと不思議とより美味しく感じられてたまに飲むことも……と、結局あまりこだわりはないですね」

日頃からよく、家で飲むお酒の購入には〈カクヤス〉を利用しているという滝口さん。瓶ビールの宅配サービスについては、「やっぱり瓶ビールの難点は保管場所の確保なので、飲みたいときに1本単位でクイックに持ってきてくれて、空瓶の回収まで行ってくれるのはありがたい。より気軽に手に入るようになったら、お酒のバリエーションが増えて飲む楽しみも広がりそうです」とのこと。今後は、晩酌のお供が瓶ビールとなる回数も増えるかもしれない。

「最近、3歳の娘が乾杯を覚えました。時々、彼女はお茶のコップで、僕はビールを注いだグラスを突き合わせていて。娘がお酒を飲める年齢になったら、同じ瓶から注いだビールで乾杯してみたいですね。でも、別にお酌はしてくれなくてもいい。それぞれ手酌で十分です(笑)」

瓶ビール