家に帰ったら、呪物にお礼を言っています。「今日もありがとうございました。お疲れ様でした」と
京都で暮らしていた修験者の方が亡くなり、知り合いの骨董商がその遺品の権利を買ったんです。遺品の中のある箱を開けた瞬間、ボタボタッと鼻血が出たそうで。それが匠の藁人形(画像右)だった。連絡をいただいて、すぐに引き取りに伺いました。ねじられたうえ、「バンザイ」状態に上がっている両腕。頭から股間まで、急所には釘が打たれている。
丑の刻参りに用いられる藁人形は、木に打ちつけられるものなので、保管されているものは珍しい。つまり、匠の技術を持った呪術師が専用の場所で丹念に呪詛を行ったものだとわかる。しかし、怨念が強すぎたため、修験者が預かっていたんじゃないかと推察しています。
そうして自宅へ持ち帰ったんですが、数日後、不思議な出来事が起きたんです。真冬の深夜3時頃。アパート階下から“カーン、カーン”と釘を打つような音が聞こえた後、念仏を唱える声がした。窓を開けても下には屋根があるのでよく見えないんですが、向かいの家の住人も外を覗いている様子で。
つまり、霊などではなかった。でも、声がやんだと同時に階下へ下りてみると、誰もいないんです。腑に落ちませんでしたが、ついでだからと思って缶コーヒーを買いに近くの自販機まで行くと、途中の家の軒先に、肩を落とした無気力状態の年配の女性が立っていて。
こっちを見て「お前のせいだろ!」と言うんです。箱に入っていた人形の呪いが、蓋を開けることで拡散し、ご近所さんに憑依したのかもしれません。もしご迷惑をおかけしていたら、本当に申し訳ないと思います。
自宅の呪物部屋を呪術師に見てもらったこともあって、助言をいただきました。日本には、祟り神を祀ることで福をもらう御霊(ごりょう)信仰があり、呪物を大切にすることで、ものすごく運気を上げてくれることがある。
しかし、少しでもおろそかにすると、びっくりするほどすべてを奪われるそうなんです。僕にとってはチャーミーがそういう存在ですね。あの子は、7年前ほど前に怪談イベントのお客さんからプレゼントされたもの。
口の中にお米が詰まっていたので、取り除いたりした結果、次々と仕事が来るようになったんです。正直、僕よりも売れっ子で、チャーミーの方が先に上京していますから(笑)。しかし、過度にかわいがると取り憑(つ)かれてしまうので、あくまでもビジネスパートナーというスタンスは崩さないでいて。
取材では仲睦まじくしていますが、家に帰ったら「今日もありがとうございました。お疲れ様でした」と、一定の距離を保ちつつ、お礼を言っています。