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VERDYと注目の米若手アーティスト、ジュリアン・クリンスウィックスの邂逅を目撃せよ

ジュリアン・クリンスウィックスは現代アーティストとしてキャリアに収まらない新たな表現を模索し続けている。ビヨンセやジェイ・Z、ルイ・ヴィトンやミュウミュウとの協働も記憶に新しい彼は近年、パーソナルワークの制作も行っている。世界初公開となる新作での個展『Solo Tumult』が渋谷PARCOと大阪のRise Above Galleryで巡回したばかりである。ギャラリーを主宰するグラフィックアーティストのVERDYを迎え、クリエイションの秘密に迫る。

photo: changsu / text: Chikei Hara / interpretation: Yuta Sakane / edit: Sogo Hiraiwa

ビヨンセが信頼を寄せる、28歳の現代アーティスト、ジュリアンの素顔に迫る

VERDY

やっと会えたね。LAにいる友達やパートナーがみんな口を揃えて「ジュリアンに会った方がいい」って君のことをよく話してくれたよ。

ジュリアン・クリンスウィックス

僕もVERDYと今日会えることがどれだけ嬉しいことか。あなたのアートワークやWasted YouthのアイテムをLAでもずっと見ていたよ。

VERDY

ジュリアンの仕事はいつも格好いいしどのコラボレーションでもクオリティが統一されていてすごいと思ってる。いつもどういう思いでクリエイションしているの?

ジュリアン

小さい頃からスケートボードにずっと触れてきて、世界を360度見渡すことについて考えてきたことが大きい。スケートボードにしてもどこでやるか、どういうファッションやマガジンから影響を受けるかを探すところから始めるから360度に世界が広がって見えていた。

僕は幼い頃から何でもやらせてくれる環境で育って、お母さんや友達にいろんな探究心を持つ大切さを教わった。スケートボードに絵を描いたり、学校でエッセイを書いたり、何かに興味を持って写真を撮った幼少期の経験が、自分の気持ちを何よりも大切にしていることにつながっている。

Julian Klincewicz

VERDY

ハイブランドのキャンペーンも多く撮っているけど、どれも作家性があって作品のようだよね。

ジュリアン

ブランドとのコミッションワークはアーティスト・イン・レジデンスに近くて、お題に対してアーティストとしてどう面白くするかを考えることが大切だと思っている。そうした現場にリスペクトできる人やメンターが多くいてくれたおかげで、いろんな物事に対して360度考えられる人たちから多くのインスピレーションも受けてきた。

今までブランドとの仕事を通して自分を表現してこられたから、ブランドが与えてくれるお題やプロジェクトの価値が僕自身の大切にしていることに合致していたということでもあるし、すべてが自分の大切なプロジェクトであったと思う。最近はアーティストとして何を伝えられて、どんなバリューを大切にすることができるかについて考えてる。

VERDY

ピュアな思いを聞けて嬉しいな。

VERDY

コミュニティを築く意識

ジュリアン

グラフィックやアートディレクションまで、多岐にわたるVERDYのクリエイションも圧巻だよ。インスピレーションを受け続けるモチベーションはどこにあるの?

VERDY

日々感じることや思ったことを覚えておくことかな。面白いことや新しいことを作りたい気持ちが常にあるから、自分の大切な感情を忘れないようにしてる。

ジュリアン

そう思ったきっかけは?

VERDY

20代後半までいろんなバンドやブランドの仕事を言われるがまま描き続けていて、誰でもいい仕事を引き受けているだけではダメだと思った。そんな時にいつも支えてくれているパートナーを思って作った「Girls Don't Cry」というメッセージがきっかけになって、自分が表現したかったのは内側にある感情や気持ちだったことに気づいた。

ジュリアン

クールだね。僕は10代で仕事を始めて、今28歳なんだけど、この数年で自分のパーソナルアイデンティティとやりたいことを意識することが多くなってきた。

VERDY

誕生日に毎年の目標を決めると、前に記事で読んだけど今も続けてるの?

ジュリアン

そうだね。28歳の目標はアーティストとして何が言いたいのかを明確にしてコンセプトを深掘りしたいと思っている。VERDYはどんなことを大切にしているの?

VERDY

僕は自分のプロジェクトもブランドとの仕事やコラボレーションもすべて同じ感覚で作っていて、オファーが来ているからには自分らしくやることが一番重要だと思っている。Girls Don't CryやWasted Youthのように自由が制限されない自分らしいクリエイションを徹底しているよ。

ジュリアン

Rise Above Galleryみたいな自由で開けたコミュニティを築く意識はいつからあるの?

VERDY

LAで有名なクリエイターが若い人を積極的にキャッチアップしているシーンを目撃して、日本にはそういうかっこいいコミュニティがあまりないなと思って。それに大阪に住んでいた10代の頃、面白い展示が東京でしかやらないもどかしさも感じた。それで2023年の2月に大阪でギャラリーとピザ屋を開いたんだ。自分はラッキーなことに好きな仕事で食べていける状況だから、今はコミュニティを築くことで次の世代が様々な人々や世界につながる懸け橋のような役割になりたいと思っている。

ジュリアン

最近は何を目標に仕事してる?

VERDY

1年前に娘が生まれたんだけど、娘が中高生になる頃に自分の仕事のピークを見せられるように頑張りたいな。15年後くらいに“自慢のお父さん”であるために今やるべきことが明確になった。

ジュリアン

最近トランスフォーメーションに興味があって、今いる立場と真逆のところに行った時に何を感じるのか知りたい。すぐは叶わないと思うけど、5年以内に月に行って、エクストリームな体験による変化をいろんな人に知らせたいと思ってる。

左から、Julian Klincewicz、VERDY。

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