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音楽の神に愛される才人、ジョン・バティステにインタビュー



昨年のグラミー賞で「最優秀アルバム賞」はじめ5冠に輝いたジョン・バティステ。彼の音楽はジャズからR&B、アメリカンルーツ、クラシック、ひいてはニューエイジまで、あらゆる音楽因子を感じさせる。例えば、深い悲しみを湛えたジャズの名曲「Saint James Infirmary Blues」を心を震わせる美しさでプレイしたかと思えば、「Be Who You Are」ではニュージーンズらと底抜けにハッピーなパフォーマンスを繰り広げる。一筋縄どころか、縄が何本あっても追っつかない才能の持ち主である。

photo: Keisuke Fukamizu / hair&make: Katsuki Chichii / text: Kaz Yuzawa

全宇宙ラジオがコンセプトの新作を携え、ジョン・バティステ登場

ジョン・バティステ(以下JB)のようなジャンルに収まらない破格のアーティストの場合、あまりに桁外れで訳がわからないという声をたまに聞く。そこで今回は本人に、彼の音楽的な輪郭を語ってもらった。

ジョン・バティステ
ジョン・バティステ

優れた音楽家は一つのジャンルじゃ語れない

BRUTUS

まず、あなたに影響を与えた音楽体験を教えてください。

JB

ありすぎて難しいけれど、1つは11歳の時に母がクラシックピアノのレッスンに通わせてくれたこと。ここが僕のピアニストとしての原点。

といっても当時はビデオゲームにハマっていて、BGMを耳コピーして弾けるようになったことが一番嬉しかったんだけどね(笑)。

2つ目は14歳の時にアルヴィンおじさんのバンド、アルヴィン・バティスト&ザ・ジャズトロノーツに参加できたこと。

あのバンドはアメリカンルーツからフリージャズまで何でもできて、彼らのそんな姿勢に感銘を受けたんだ。あの体験は僕の背中を押してくれたし、余計なものから解放してくれたよ。

そして決定的な出会いになったのが、高校生の時に観たブライアン・ブレイド&ザ・フェローシップのライブ。

すごいメンバーが持てる能力のすべてを捧げて生み出すコレクティブなバンドサウンドは、音楽を超えた精神性を感じさせてくれた。音楽の可能性を示してくれたと言ってもいい。この3つはいずれも、今のジョン・バティステにとって欠かせない因子だよ。

BRUTUS

では、アーティストとして大切にしていることは?

JB

自分が今、何をしているか、自分は何をやりたいのかを、はっきり自覚すること。もちろん完璧に自覚することは難しいが、そうしようという意志がとても大切だと僕は思う。

かつてデューク・エリントンが「優れた音楽家はみな、オリジナルを持っている」と語ったように、才能豊かなアーティストはジャンルの枠じゃ語れない。

ロバート・グラスパーがグラスパーとしてしか語れないように、僕も常にそういう存在であろうと思っているよ。

『WORLD MUSIC RADIO』
JBがラジオ番組のホスト、ビリー・ボブとして、宇宙から集めた音を全宇宙に向けて放送するというコンセプトの超大作。ニュージーンズ、ラナ・デル・レイほかゲストも多数参加。前作を超える傑作と大評判。Verve。
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