あたらしい心地いいに会いに行く
早朝の湖畔。蓮沼さんがマイクを構える。佇まいが静かな人だ。フィールドレコーディングで使う高性能マイクは、自分の立てる微細な音も拾ってしまうから気配を消す必要がある。静けさこそ音を捉える秘訣かもしれない。
「葉っぱが揺れていて、奥で無数の鳥たちが鳴いている。そんな場所が好きです。不規則性とレイヤーですね。そういう場所に身を置くと、人間が真似しようとしても不可能な、自然にしかなし得ない音だなと実感するんです」
時折、自動車の走行音なども聞こえるが、蓮沼さんは「音は音ですから」と頓着しない。「僕の場合、自然音だけ抽出するフィールドレコーディングとはちょっと違います。自然と同じように都市にだって良い音は存在していますから」
しばらくレコーディングを続けた後、湖畔から離れ、すぐそばの森にフィールドを替える。職業柄スタジオにこもって作品作りに勤しむことも多いそうだが、同時に日常的に外に出ることを意識しているという。
「音楽に限らず僕が手がけるアート作品全体に言えることではあるんですが、見つけてくる、取ってくる、という感覚が強いです。そういうなにかとの出会いは、外に出ないと生まれにくい。だから外に出ます。それが一番顕著なのがフィールドレコーディングですね。機器を使って解像度を上げることによって、今まで気づいていなかった音の存在を発見することがあるんです」
蓮沼さんは、歩きながらさまざまな場所にマイクを向ける。時折足を止め、じっと佇む。
「録音している最中は、マイクが拾ってくる音を聴くと同時に、直接自分の耳でも周辺の音を拾っているわけです。2つの音を聴いている。だから後で録音を聴いたとしても、その時、その場所にいた自分が聴いた音というものを再現しているわけではないんです。その再現性のない独特な音の重なりがとてもライブ的です」
その微細な差を感じ取るために、できる限り固定観念を捨てるのを意識しているという。指向性を広く、自分をニュートラルな状態に置き全体を聴く。
レコーディングを一区切りして湖畔まで戻り、静かに揺れる水面を眺めながら「JJ」を楽しむ。「無炭酸かつ無糖(*1)だから刺激が少ない。うるさくないお酒ですよね。常温でもおいしいから野外に持ち出しやすくて、アルコール分も適度でやんわりと、心をほぐしてくれる感じがあります」
蓮沼さんにとって心地よい状態というのが、それだ。心と体がほぐされた時。そういう状態でこそ、良い音を見つけることができる。
「音楽もお酒を飲んで聴いた方がいいと思っていますし、僕自身ストイックな音楽ほどお酒とともに楽しむことが多いです。音楽は字の通り楽しむものですから、リラックスした状態を作ることも大切だと思います」
先ほどまで静寂に包まれていると思っていた湖畔は、心地よい音で満たされていることに気づく。そんな偶然の音楽によって心と体が解きほぐされた時、世界の解像度が上がる。蓮沼さんは、また静かにマイクを湖畔に向けた。

左・中/無糖(*1)・無炭酸・プリン体0(*2)で体に優しい「茉莉花〈ジャスミン茶割・JJ〉」335㎖ 167円、480㎖ 226円。軽やかな飲み口で食事にもよく合う。右/ジャスミン茶割り以外にも、ソーダや緑茶割りに向く「ジャスミン焼酎 茉莉花」500㎖ 660円。20年以上のロングセラー。