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シャルロット・ゲンズブールが初監督作『ジェーンとシャルロット』で味わった「撮る側」の苦労と喜び

10代前半で銀幕デビューして以降、役者として第一線で活躍し続けてきたシャルロット・ゲンズブールが、長いキャリアの中で初めてメガホンを取った。自身の母との関係性を見つめ直すその映画が『ジェーンとシャルロット』である。シャルロットは2018年の東京でカメラを回し始め、約2年の中断を経て、ようやく撮影を終えたのだという。「決して簡単な道のりではありませんでしたが、私はすべての瞬間を楽しんでいました。特に編集の段階では、一種の魔法のようなものを感じましたね」

photo: MANABU MATSUNAGA/ReallyLikeFilms / text: Kimi Idonuma

母、ジェーン・バーキンと向き合い直した時間

自身の母との関係性を見つめ直すその映画が『ジェーンとシャルロット』である。シャルロットは2018年の東京でカメラを回し始め、約2年の中断を経て、ようやく撮影を終えたのだという。「決して簡単な道のりではありませんでしたが、私はすべての瞬間を楽しんでいました。特に編集の段階では、一種の魔法のようなものを感じましたね」

初監督作となる『ジェーンとシャルロット』でシャルロット・ゲンズブールが映し出したのは、自身と母との関係性。その母とは、俳優、歌手として世界中の人々から愛され、今年7月に惜しまれながらこの世を去ったジェーン・バーキンである。互いに親愛の念を持ち続けていた一方で、その気持ちをあまり相手には伝えてこなかったのだという2人。だからこそ、劇中で明かされる両者の思いには特別なものがある。

シャルロット・ゲンズブール

「母に伝えたいメッセージがありました。しかし面と向かって伝えるのではなく、間接的に彼女に届けたいと考えていたんです。ですからある晩に書いた手紙を読み上げて録音し、映画の中で聞いてもらうことにしました。何度も手直ししたような手紙ではなく、自然にぱっと思い浮かんだ言葉を綴ったような内容です」

「歩み寄るための口実」としてバーキンにカメラを向け始めたシャルロットは、撮影を通じて、確かな関係性の変化を感じていたという。

「あの期間、私たちの距離はすごく近くなりました。毎日のように顔を合わせていましたし、ある種の共犯関係が生まれていたのだと思います」

そう話すシャルロットも現在、映画監督イヴァン・アタルとの間に生まれた子供たちを育てている最中だ。
「出産を経験したことで、母に対して寛容な気持ちになれた部分も多くありました。私も完璧な人間ではないと自覚するようになったんです」

人生を信頼して、思うままに進んでみる

今回の映画にはシャルロットが母の「人生や人を信頼している」ところが好きだと話す場面がある。取材時の言葉からは、そんなジェーン譲りの姿勢が垣間見えた気がした。

「私はもともと子供が欲しいと願っていましたが、出産前に“ちゃんと育てていけるか”と考えていたら、産めなかったかもしれません。考えすぎは、私にとってブレーキになってしまうんです。ですからやっぱり自然体で、今その瞬間を生きること。出産に限らず、心配は直前にするぐらいがちょうどいいのではないでしょうか。思うように進んでいけば大丈夫じゃないかと思っています」

『ジェーンとシャルロット』本予告