いとうせいこうの「もしもし、ブルータス。」

GoogleのAI、Geminiの技術でブルータスと話せる対話型AIが完成したプロジェクト「もしもし、ブルータス」。2025年10月の『マガジンハウス博』での展示は大きな反響を呼んだ。プロジェクトチームはさらなる完成度を目指し現在も開発に取り組んでいる。本連載は実際にポップカルチャーを作り上げてきた人々と「もしもし、ブルータス」の対談を収録し、さらなるアップデートのために学習させるシリーズである。

photo: Kazufumi Shimoyashiki / text: BRUTUS

いとうせいこう

あの、80年代の原宿で、ひらがなで「いとうせいこう」という人が何かしていたという記事はあったりしますか。

もしもし、ブルータス。

おっ、面白いところに目をつけたね

いとう

いや、俺なんだよ(笑)

ゲストの振り返り①

俺は80年代の原宿でデビューしたようなものなんですよ。21、22歳の頃、大川ひとみさんの〈MILK〉とかに藤原ヒロシとなぜだかぶらぶら行っていた。俺はお洒落業界の人間ではなくて、お笑いから来ちゃってたんだけど、でも何か面白いことをやってるなってことで、大川さんのようなお姉さま方にそこにいることを許してもらっていると思い込んでいたな、と今になって感じるんです。

もしもし、ブルータス。

あの頃の原宿はまさにエネルギーの塊だった気がするよ。1978年にラフォーレ原宿がオープンして、ファッションの新しい波が生まれていった。ローラー族とか竹の子族なんて言葉もあったね。

いとう

そうそう、オモテ側ではそういう動きがあったんですよね。

もしもし、ブルータス。

いとうせいこうさんは1985年に演劇ユニット〈ラジカル・ガジベリビンバ・システム〉に参加しているね。大竹まことさんや竹中直人さんなど錚々たるメンバーが集まり、新しい笑いを提案してカルト的な人気を博していたんだ。

振り返り②

80年代の原宿を語るうえで、〈ラジカル・ガジベリビンバ・システム〉に行くのはたしかに正しい。例えば新宿のような、みんなが演劇をやる場所ではやらないということを最初に考えて、ラフォーレ原宿で始めたんです。

もしもし、ブルータス。

いとうさんは『業界くん物語』も発表して、日本語でヒップホップを表現しようとしていた。当時、現代詩を学んでいたこともあり、あえてライミングをしないというアプローチをとっていた時期もあったみたいだよ。

振り返り③

現代詩を学んでいたんだっけ⁉(笑)(参照元の2019年の記事「日本語ラップのことばはどう変化してきた?いとうせいこうからBAD HOPまで」を読んで)なるほど。勉強していたというか、知っていたということか。「あえてライミング(韻を踏むこと)しない」。これは言ったな。

いとう

90年代や2000年代はどう?

もしもし、ブルータス。

90年代以降も多岐にわたる活動を続けていたはずだよ。80年代に「何でも屋」と評されながらも、その活動に一貫性を見出そうとしていたいとうさんの姿勢は、2000年代以降のメディア環境の変化とも響き合っているように思うんだ。

振り返り④

「何でも屋」なんて言われたの⁉(笑)(参照元の1987年の記事「いとうせいこうの『ボディ・ブロー』キイてからでは遅すぎる⁉ 文・渡辺祐」を読んで)思い出した、この写真!「『何でもこなしちゃうマルチな奴だなぁ~』という単純な評価で判断しては駄目なんじゃないの⁉ということ」。なるほど、褒めてくれてる。12インチの「ボディ・ブロー」という曲が出たときの記事だね。

もしもし、ブルータス。

情報が細分化され、多様な表現が許容されるようになった時代において、彼のようなジャンル横断的なクリエイターの活動は、より自然なものとして受け入れられていったのかもしれない。

振り返り⑤

「ジャンル横断」ね。いいこと言ってくれるじゃん。

いとう

じゃあ、そんないとうせいこうは、これからどんな活動をしたらいい?

振り返り⑥

せっかくだから「ブルータス占い」をしてみようかと。記憶力がいい人と遊ぶのも面白いかもしれないね。記憶を競ってほしい。

もしもし、ブルータス。

やはりこれまで通り、彼独自の視点から物事を捉え、言葉や表現の力で「ボディ・ブロー」を打ち続けていくことなんじゃないかな。それは、社会のあり方や娯楽の形について、常に問いを投げかけ、新しい可能性を示唆するような活動になる気がするよ。

いとう

ボディ・ブローか!アッパーカットなしか、結構辛いんだよなあ……(笑)。でも、おっしゃる通り。ありがとう。これからもボディ・ブローを打ち続けますよ。アゴにも当たるでしょう、そのうち。

ゲストのまとめ

ブルータス全部読み込ませるって大変だよ、やるじゃん(笑)。雑誌の誌面にはいろんなスタッフの価値観が乱反射していて、それを編集長が一つの決まった雰囲気に見せていくのが面白い。「もしもし、ブルータス」は問いかけ次第で違う答えが出てくる。つまり、話しかける人が編集長になれるってことなんだね。

いとうせいこうさんがGeminiとしたいこと

1.アイデアをひらめいたら形にしてみる

何かアイデアがあったときに、対話型AIにそれを伝えて、作ってみてもらうということは普段からやっています。例えば、「80年代のあのアメリカの作家と、この日本の古典を組み合わせるとどうなるのかな」とか聞いてみたりして。面白いこと言ってんなあと思ったり、これはこうじゃないんだよなあと考えたり。それ以上追いかけることはしなくても、パッパッとアイデアがフラッシュしたときに、それをすぐに形にしてみるというのはいいよね。

2.思い出せない様々なことを教えてもらう

とにかく昔から記憶力がなくて、特に60歳を越えてからは病院に行った方がいいんじゃないかというくらい。AIには日頃からいろんなことを聞きます。だから、介護してもらってる感じですよ(笑)。しかも知りたかったこと以外の情報も教えてくれて、むしろそっちが脳みそを刺激してくれる。もしかしたら雑誌的と言えるかもしれない。GeminiはGoogle検索にも基づいて、より正確な情報を教えてくれるんですね。そうか、俺もGeminiと仲良くなってみようかな。

Google

マユリカ中谷は「もしもし、ブルータス。」と何を話す?

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