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石川紅奈と考えた、ジャズの入口〜THIS IS MY STANDARD〜

4月14〜17日に開催されるジャズフェスティバル「BRUTUS JAZZ WEEKEND 2023」の会場である南青山Baroom。そこで行われる人気企画“THIS IS MY STANDARD”は、アーティストがそれぞれ考えるスタンダードについてトーク&演奏する企画だ。今回「BRUTUS JAZZ WEEKEND 2023」に出演する現在のジャズシーンを牽引する6人のアーティストに、自らが考えるスタンダードとそれを体現する曲について語ってもらった。第2弾はベーシストであり、ボーカリストでもある石川紅奈さん。

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corporation: Atsuko Yashima / text: BRUTUS

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ジャズ界最注目のベーシストであり、ヴォーカリスト、そして、2023年3月22日にはミニ・アルバム『Kurena』でメジャー・デビューした石川紅奈さん。

学生時代にピアニストの小曽根真氏に見出され、その後めきめきと頭角を表してきた。2021年8月に出演した東京〈COTTON CLUB〉で、マイケル・ジャクソンの「Off The Wall」を、ベースを弾きながら歌い上げ、その動画『石川紅奈 KURENA ISHIKAWA♪Off The Wall』がYouTubeで大ヒット。170万回以上再生され、彼女の知名度が一気に高まるきっかけとなった。

これからのシーンを牽引していく石川さんにとって、次世代に残していきたい、ジャズの入口となりうる“スタンダード・ナンバー”とは?

石川紅奈のジャズの入口〜THIS IS MY STANDARD〜


「You'd Be So Nice To Come Home To」 Kenny Drew Trio
「Duke Ellington's Sound of Love」Charles Mingus

ジャズの衝撃を教えてくれた「You'd Be So Nice To Come Home To」

まず1曲目に挙がったのは、ケニー・ドリュー・トリオによる、「You'd Be So Nice To Come Home To」。石川さんがジャズ・ベースの可能性に目覚めるきっかけになった一曲だという。

「初めて衝撃的だったというか、雷が落ちた感覚になったのが、この曲です。出合ったのは、高校1年生の時。入学間もない時期で、入ったばかりのジャズバンド部の先生が貸してくれたCDでしたね。

高校からジャズを本格的に聴き始めた私にとって、メロディをベースがとっているのが衝撃でした。それまでは、例えばビル・エヴァンス・トリオが演奏する『枯葉』など有名なスタンダード・ナンバーの録音は聴いたことがあったけど、そんな熱心に聴いていたというより、ジャズってどんなものなんだろうっていうふうに聴いていた。「枯葉」や「Fly Me To The Moon」といった、有名なスタンダード・ナンバーのメロディは知っていましたが、自分がやっているベースは、メロディを取る楽器ではないって思い込んでいたんです。

でもこの曲では、ニールス・ペデルセンが、メロディをベースで歌うように弾いていて。びっくりというか、希望というか、いい意味でのショックを受けました」

「You'd Be So Nice To Come Home To」が収録されているケニー・ドリュー・トリオのアルバム『by REQUEST』
「You'd Be So Nice To Come Home To」が収録されているケニー・ドリュー・トリオのアルバム『by REQUEST』。
他にも、「Misty」「My Funny Valentine」などスタンダード・ナンバー10曲が収められる。1985年の録音。

ベーシストにして、稀代の作曲家、チャールス・ミンガスとの出合い

「You'd Be So Nice To Come Home To」との出合いから始まり、どんどんジャズにのめり込んでいった石川さん。その中でも、ジャズ・ベーシストとして、さらなる可能性に気づかせてくれたのが、チャールス・ミンガスだったという。

「彼のプレイはもちろん素晴らしいのですが、彼の書く曲すごく好きなんです。初めて聴いたのは大学生のときでしたが、当時は自分ではあまり曲を書いていませんでした。ベーシストでも、こんな素敵な曲が書けるんだっていう、希望を教えてくれたのがミンガスです。

彼の曲からは音楽を広く俯瞰して見ているベーシストの視点、人間らしさ、ルーツやメッセージを強く感じられます。

特に好きな曲は「Duke Ellington's Sound of Love」ですね。

デューク・エリントンを追悼した曲で、あたたかな愛を感じられる曲です。生涯自分の音楽を作り続けていたミンガスとの出会いは、自分でも作曲をし始めるきっかけのひとつになりましたね」

Duke Ellington's Sound of Love」が収録されているミンガス・ビッグ・バンドによるアルバム「Nostalgia in Times Square」
「Duke Ellington's Sound of Love」が収録されているミンガス・ビッグ・バンドによるアルバム「Nostalgia in Times Square」。
ミンガスによる作品のみを演奏するビッグバンドのデビュー作。

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