教えてくれた人:福井敬貴(昆虫標本作家)、阪本優介(日本蛾類学会・誘蛾会)
針刺し標本
昆虫針で固定する、最も一般的な昆虫標本。空中に固定することで、直接触れずに様々な角度から観察できる。残酷にも思えるが、最小限の加工で標本を大切に扱うための工夫だ。
立体的で趣味家向け⁉
欧州型展足スタイル。
欧州では、展足板に溝は彫らず、そのまま脚を板に下ろすように展足するのが一般的。爪は内側に寝かせ、脚を内側に湾曲するように固定する。脚の長い虫に似合うことが多い。コレクション性を重視した趣味家向けのスタイルとも言える。
台紙貼り標本
2㎝以下程度の小型の昆虫は、虫に直接針を刺さず台紙に貼る方法をとる。観察面で優れる三角台紙(右)と、保存性や移動に優れる四角台紙(左)の2つのスタイルがある。
三角台紙
四角台紙
立体標本
背中に針を刺さず、生きている姿そのままに固定する技術。動態標本やライブ標本とも呼ばれる。無数の針で、昆虫の体や手脚を躍動的に固定していく上級者向けの標本だ。
立体標本には、決まったフォーマットがないため、図鑑や生体をよく観察して、生きている姿をしっかりイメージするのが何より大切。これまでの標本とは違い、部分的に軟化させながら、根気よく調整を続け、左右対称にならないように動きのあるポーズを作り上げていく。
ラベルを付けてマウントし、完成!
標本には、産地が記入されたデータラベルを必ず付ける。学名を記した同定ラベルやコレクションラベルを付ける場合もある。基本は産地ラベルを一番上に、その下に同定ラベルを刺す。
文字が褪色しないように必ず中性紙と顔料インクで。横12〜15㎜、縦8〜12㎜程度。ラベルを付ける前に高さを揃えるための平均台を使って虫の高さを揃えておくと、箱に並べた際に整って見える。ラベルも同様に高さを揃えよう。
展翅標本
脚ではなく、翅(はね)を広げて作る標本。主に蝶や蛾などの標本に用いる方法。蝶や蛾の翅には剥がれやすい鱗粉がついているため、直接手で翅に触れないように、細心の注意が必要。
細部にもこだわった
美しい標本作りを!
触角が繊細な場合は、シール剥がしや薄めた中性洗剤などをつけた筆で、台の上でのばしながら形を整える。これまではこうした触角の処理をする人は少なかったが、近年、細部にもこだわった美しい標本を作る人が増えている。