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青葉市子にインタビュー。ライブをすることは、“呼吸”をすること

誰かの記憶や風景に語りかけるように。発表から2年を経たアルバム『アダンの風』が、改めて紡ぐ音とは。

photo: Kodai Kobayashi / text: Emi Fukushima

「ある意味ライブは生命線。作った曲を実際に聴いていただいて初めて、循環が整います。できなかった期間は、深く潜水していたような心地。再開してからは久しぶりに空気を吸えたようで、喜びを実感しています」。

こう話すのは、今年に入って特に、音楽を届ける活動に力を注ぐ青葉市子さん。この夏は、ヨーロッパと北米を巡る海外ツアーへ。「歌詞は変えずに、日本語でそのまま歌うつもりです。意味がはっきりとわからないからこそ浸透していく音楽の力を信じて、この機会を楽しみたいですね」。そんな彼女のアルバムへの思い、ライブについて話を聞いてみた。

誰かの記憶や風景に語りかけるように。

海外ツアー、そしてそれに先駆けて行われるブルーノート東京でのライブと、この夏大忙しの青葉市子さん。いずれも、2020年のアルバム『アダンの風』を再解釈して行われるものだ。

「制作に着手した時は、ちょうどコロナ禍の始まり頃。大海原に船を出すような、そしてその船が誰かのお守りになればとの思いで作っていったと記憶しています。そして結果、その通りになった。限られたメンバーだけで小さく制作したものが海を越えて伝わり、2年の時を経た今、改めて公演の機会を迎えることができた。見たことのない場所へ連れていってくれる大切な作品になりました」

昨年は、Bunkamuraオーチャードホールでは録音時のメンバーで、FUJI ROCK FESTIVALではフォノライトストリングスとの編成で、それぞれ『アダンの風』を奏でたが、今年のアレンジでは、音を足していくのではなく、引くことを意識しているという。

青葉市子にインタビュー。ライブをすることは、“呼吸”をすること。

「沖縄の島々への滞在に着想を得て、プロットを書くことから始めた作品なので、しっかりした物語が核にある。昨年はそれをできるだけわかりやすく音で表現していたんですが、今年は、もう少し抽象的なものにしたいなと。受け取ってくださる方々の中にもともとある記憶や風景と混ざり合うようなパフォーマンスになればと思っています」

演奏活動と並行して次回作に向けても動きだしている青葉さん。まずは感覚を研ぎ澄ますために、再び暇を見つけては沖縄の海を訪れているという。

「サンゴ礁の動きを見せてもらったり、水中に潜る練習をしながら、泳ぐ魚を下から眺めてみたり。知らなかった感覚をどんどん体に取り込んでいきたいんです。未知の環境に身を置きながら、自分がどんなものをキャッチし、何に反応していくのか、今はそこに興味があります」