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ドライブで行けちゃうアメリカ?古着屋然とした店内で宝探しを。茨城〈Paradise Valley〉

ここ数年、空前の古着ブームが巻き起こっている。都内はもちろん、その流れは全国に波及し、最近ではローカルの街にも老舗から新店まで、独自の世界観を尊重した感度の高い古着屋が増え、注目を集めている。特にこの〈Paradise Valley〉は、古着の“今の魅力”を知るには最高のお店だ。

photo: Keisuke Fukamizu / text: Kei Osawa

狭いあぜ道を抜けて山道でクルマを走らせていると、木々に囲まれた景色が延々と続き、キャンプ場へ向かっているかのような気持ちになる。果たしてこんなところに古着屋があるのか。不安になった瞬間、突如視界が開け、真っ白な一軒家に辿り着いた。

クラシック感の漂うアメリカンハウスならではの天井の高い店内では、ヴィンテージからレギュラーまで大量の古着がお出迎え。カウンターに立つ店主の結束(けっそく)嘉樹さんは、古着業界に30年以上も身を置く大ベテランだ。

1992年開業の古着店〈パラダイスバレー〉。2000年代前半まで関東で多店舗展開していた人気店だったため、店名を聞いてピンとくる人も少なくないはず。この地に移転したのは2011年のこと。1階がヴィンテージ、2階がレギュラーという商品構成だ。

茨城〈Paradise Valley〉店内
カバーオールやオールインワン、ショップコートなどロング丈のワークウエアも大充実。年代も40〜80年代のものがメイン。壁にはヴィンテージのロックTがずらり。

「数年前までは比較的年配のお客様が多かったのですが、最近は若い人たちも多く訪れてくれて、90年代の古着ブームの時と同じにおいを感じています。幅広い世代の人たちがある程度古着を認知して、レギュラー、ヴィンテージを問わず手に取ってくれるのは単純に嬉しいです」

店内の、良い意味で雑然としている雰囲気と独特のにおいが、昔ながらの古着屋さんを彷彿とさせる。鉄製のラックや木製のショーケースなど、使い込まれたクラシックな什器(じゅうき)が“古着欲”をさらにかきたてる。

「デニムやスエットをメインにミリタリー、ワーク、スポーツといった定番物はなるべく買い付けるようにしています。アイテムによりますが、30〜90年代のものまで幅広くセレクトしています。1階にもレギュラーがありますが、レギュラーとヴィンテージのくくりがだいぶ変わってきたので区別が怪しいです」

都内の人気店と遜色のないアイテムの質はもちろん、ものによってはアメリカ製の〈リーバイス®〉が1万円以下で、また70年代のプリントシャツが5,000円前後で買えるなど、都内からクルマで1時間かけて来てもお釣りがくるほど。ちょっと古着をかじったことのある人が見たらまさに“宝の山”。60〜70年代の染み込みプリントTやフットボールシャツなどレトロアメカジ感満載のカラフルで味わい深いアイテムが豊富に揃い、見ているだけで心が躍る。

「30年以上付き合いのあるアメリカ在住のバイヤーが、うちのカラーを熟知しているので、送られてくるアイテムにはいつも大満足です」

絶大な信頼を寄せるパートナーと結束さんは、共に今年で56歳。若いお客が増えたことなど、古着の価値の移ろいを肌で感じる今だからこそ決意したことがあるという。

「90年代製の物を古着として扱うには少し抵抗がありました。お店を始めた92年当時、数千円で販売していたTシャツを今、数倍の値段で売るのはどうなんだろうと。でもみなさん、喜んで買ってくれるんです。そうやって若者を中心に様々なお客さんが90年代のアイテムをヴィンテージとして理解し、価値を見出している現実を目の当たりにし、もっと自分の中でも古着の間口を広げなきゃいけないと思いました。今後はヴィンテージ&レギュラー共にトゥルーヴィンテージを揃えつつ、別目線の古着も積極的に取り入れていこうと思います」

茨城〈Paradise Valley〉店内
店内は360度、どこを見ても古着!Tシャツやベースボールシャツなど、アメカジの代名詞的アイテムが盛りだくさん。ガラスケース内にはデッドストックのデニムなど、貴重なお宝が揃っている。

買い物のあとに、古着メシ

茨城〈チムニー・ギオット〉貧乏人のパスタ
茨城〈チムニー・ギオット〉入口サイン

※紹介した古着の多くは一点物で、品切れの場合があります。価格等の情報は取材時のもので、変更になる場合があります。