アジアインディーシーンの両雄による、プロジェクトの裏側
〈AAA〉は、アジア発の音楽の中で、間違いなく今年のビッグボムだった。しかし、韓国のヒョゴと台湾のサンセットローラーコースター(以下サンセット)という、この2つのバンドのコラボは突然始まったものではない。そこで、それぞれのバンドのボーカルのオ・ヒョクとクオに、ここまでに至る流れ、そしてアルバムについて話を聞いた。そこから、国境や、メジャー/インディーという垣根を越えた、クリエイターたちのフレンドシップが、今アジアの音楽を途方もなく面白くしていることを感じてもらえるだろう。
——初めて出会ったのはいつですか。
オ・ヒョク
2017年にザ・ブラック・スカーツというバンドに誘われ、サンセットのライブに行ったときです。
クオ
そのときのオ・ヒョクさんの印象は、とにかくシャイだということ(笑)。でも、とてもロマンティックで、真っすぐな心を持っていて。
——最初のコラボレーションは、2020年のサンセットの「Candlelight」で、オ・ヒョクさんがゲストボーカルとして参加したときでしたね。
クオ
実は、その曲を作っている頃、2ヵ月ほど東京に滞在していたのですが、たまたまオ・ヒョクさんも日本ツアーで東京に来ていて、そうなったんです。だから、あの曲は歌詞もそうですが、コロナ禍に入ったその当時の東京滞在にとても影響を受けています。
——その後、サンセットがヒョゴの「Help」をリメイクするということもありましたが、記憶に新しいのが、BTSのRMのソロアルバムの中の「Come back to me」での共作だったと思います。どう実現したのですか。
オ・ヒョク
そのアルバムのクリエイティブディレクターのバーミング・タイガーというバンドのカン・サン(サン・ヤウン)という人がいるんですが、彼にデモを作ってほしいと頼まれて、私はボーカルと曲を提供し、ジャンクヤードに曲を仕上げてもらいました。
クオ
コロナが落ち着いてから、久しぶりにソウルでのライブに行く機会があったんですが、そのときにオ・ヒョクさんとカン・サンに会って、そこで頼まれたんです。私はかなり長いギターソロを提供しました。実は、まさにそのときに、オ・ヒョクさんと一緒に音楽がやれたらいいねという話をしたんですが、まさかそれがアルバムになるとは思ってもいませんでした。
——そこから〈AAA〉に繋がるのですね。アルバムはどのようにして制作されたのでしょうか。
オ・ヒョク
カピョン郡という田舎に、ミュージックヴィレッジというところがあって、そこのスタジオに1週間みんなで滞在しました。「Kite War」と「Y」「Young Man」という、2022年からずっと寝かせておいたデモを掘り返して、サンセットと一緒に作りました。
クオ
私たちは「Glue」というデモを持ち込んだんですが、これはアメリカのコーチェラにいたときに書き始めたもので、その頃マネージャーに聴かせたらあまり良くないと言われていたのが、みんなと一緒にやったら曲が生き返って、結局3時間くらいでできました。アルバム全体としては、ミキシングまで入れて1年半かかりましたね。
——「Young Man」のMVは日本の映像作家のペンナッキーが監督していました。また、「Antenna」のMVは、台湾のシュー・グァンハンと、香港のリア・ドウが共演と豪華でしたね。
オ・ヒョク
ペンナッキーは、以前から大ファンだったというのと、前に自分のソロで、ショートフィルムを撮ってもらったこともあって。彼はクオさんとも繋がりがあるんです。
クオ
「Antenna」は、アルバムで唯一広東語で歌う曲なので、中華系の良い俳優さんを使いたいと思っていて。偶然にもこの2人と友達だったのでお願いしました。こんなふうに、全部友達の力で実現しているんですよ。