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ジャンルを超えたスーパーグループの名作。『Heavy Weather』ウェザー・リポート。バラカンが選ぶ夏のレコード Vol.13

ピーター・バラカンが選ぶ32枚のレコードストーリー。「ピーター・バラカンがオーナーのリスニングバー〈cheers pb〉で夏にかけるレコードの話を聞きました」も読む

illustration: TAIZO / text: Kaz Yuzawa

『Heavy Weather』Weather Report(1977年)

ジャンルを超えた
スーパーグループの名作。

ウェザー・リポートについては、どのアルバムを入れるかでけっこう悩みました。前回のオールタイム・ベストの選曲で、当初『Mysterious Traveller』を候補に挙げていて、最終的にほかの作品と入れ替えてしまいました。

僕にとって彼らとの出会いでもあった『Mysterious Traveller』は捨てがたいですが、〈cheers pb・夏〉という今回のテーマがあって、しばらく悩んだ末、最終的にこちらの『Heavy Weather』にしたんです。夏らしさという点では、こちらに分があるかなと。このアルバムは、夏の日に気持ちよーく聴けるアルバムだと思います。場合によっては、台風の日でもダイジョーブかもしれない(笑)。

このバンドの中心人物はジョー・ザヴィヌルとウェイン・ショーター。2人ともマイルズ・デイヴィスのいわゆるエレクトリック・バンドに参加した後、新しい試みとしてこのウェザー・リポートを結成したわけです。ジャンル的に何とも表現しがたい音楽で、中心の2人のほかに毎回素晴らしい新人が次々と登場するグループでした。その一人が、ベイシストのアルフォンソ・ジョンスンです。彼の加入によって、このバンドはよりファンキーな側面を持つことになったんです。

そして1977年に出たこのアルバムでは、前作『Black Market』で2曲参加していたジャコ・パストリアスが、プロデューサーの一人としてもクレジットされています。それに3曲目の「Teen Town」では、若い頃にケガで断念したドラムを披露しているんです。多分ジャコは、ウェザー・リポートの3本目の柱になるつもりだったんじゃないかな。いずれにせよ、フレットレス・ベイスの鬼才が加わったことで、注目度がさらに上がったのは間違いありません。

また1stアルバムの頃、ジョー・ザヴィヌルはまだエレクトリック・ピアノを中心に演奏していましたが、この頃にはシンセサイザーの性能が向上したことで、彼のキーボードの表現力もその分複雑になっていました。このときのウェザー・リポートは、順風満帆に見えたんですけどね。

Weather Report

side A-1:「Birdland」

ウェザー・リポート史上最大のヒット曲。ベイスをリズム楽器からリード楽器へと格上げした、ジャコ・パストリアスの威力が存分に発揮されています。一度聴けば二度と忘れることがないこのシンプルで美しいメロディは、今やジャズのスタンダード・ナンバーとなっています。