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【3.1怖〜3.5怖】読み進めるほどに怖くなるホラーガイド444

映画やドラマから、アニメ、怪談、小説、漫画、ゲーム、YouTube、お化け屋敷まで。日々怖いものを追い求めるマニアたちが全ジャンルのホラーの名作を厳選し、その怖さを1.0から5.0の41段階で判定!読み進めるほどに怖くなる究極のホラーガイド、スタート。

text: Kazuaki Asato, Saki Miyahara, Emi Fukushima, Yoko Hasada, Masashi Tsuji, Ku Ishikawa, Minori Okajima, Ikuko Hyodo, Ryota Mukai, Shigeo Kanno, Koji Okano

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読み進めるほどに怖くなるホラーガイド

3.1怖

【映画】『ネオン・デーモン』
監督:ニコラス・ウィンディング・レフン/仏=デンマーク=米/2016年
モデルを夢見てロサンゼルスに上京してきた16歳のジェシーは、天性の魅力ゆえに順調なキャリアを開始。周囲の嫉妬心をものともせず、むしろ彼女は異常なまでの野心に目覚めていく。「エグい業界バトルがホラーの領域に!」(森 直人)

【映画】『X エックス』
監督:タイ・ウェスト/米/2022年
舞台は1979年のテキサス。自主映画の撮影をしに田舎のある農場を借りた3組のカップルたち。だがそこは、高齢の殺人鬼夫婦が暮らす恐怖の農場だった。「『悪魔のいけにえ』のフォーマットを現代風に焼き直した愉快なホラー。A24式の小洒落た仕掛けが効いています」(森 直人)

【映画】『悪魔の手毬唄』
監督:市川崑/日/1977年
文明社会から隔離され、古い因習が息づく山村・鬼首村(おにこうべむら)。私立探偵・金田一耕助はこの村で20年前に起きた、村に伝わる手毬唄になぞらえた未解決連続殺人事件の調査を依頼され、取り掛かる。原作は、横溝正史の同名長編推理小説。「結構泣けます。日本のジメッとした村社会の悲劇」(森 直人)

【小説】『秋雨物語』
著:貴志祐介/2022年
失踪した作家が遺した謎の転移現象の記録など、著者が10年以上にわたり書き続けた新シリーズ。「短編を4本収録した、『雨月物語』の令和版。超常現象や呪いなど非常に理不尽な運命に翻弄される人々が逃げ惑うけれど、綺麗事で終結しないところに人間の業と向き合う印象を受けました」(朝宮運河)

【漫画】『くつ箱の中から』
著:成毛厚子/1995年
夫がある日突然、妻と小さい娘を残して失踪。新たな人生を歩み始めた頃、思わぬ形で戻ってくる。「レディコミが主戦場の作家で絵柄もその系統ですが、ホラーも抜群にうまい。心の機微を丁寧に描きつつ、怪奇現象あり、超能力ありの、ごった煮みたいな訳のわからなさが最高」(緑の五寸釘)

【怪談】島田秀平「軽井沢大橋」
テレビのロケで自殺の名所として知られる橋へ。そこでやってはいけない2つのことを、あえてやった結果……。「お笑い芸人として、最初期に怪談に参加した島田さん。子供にも伝わるような表現、語りのうまさは聴きどころ」(吉田悠軌)

【映画】『スイート・マイホーム』
監督:齊藤工/日/2023年
愛する妻と娘とアパートで暮らす主人公・清沢賢二は、地下の巨大な暖房設備によって家中が暖められる理想の家に出会い転居を決める。しかし移り住んでから様々な怪奇現象が相次いで発生。賢二の隠された記憶も蘇り物語は思わぬ方向へ向かっていく。(BRUTUS編集部)

3.2怖

【映画】『​​ヴィジット』
監督:M・ナイト・シャマラン/米/2015年
休暇を利用して、祖父母の元に1週間滞在することになった姉妹。初めて会う祖父母に歓待を受ける一方で、3つの約束を言い渡される。そのうちの一つが奇妙なものだった。「怖い以上にくだらなくて爆笑。奇才シャマラン流『悪魔のいけにえ』的な珍・傑作!」(森 直人)

【映画】『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』
監督:アンディ・ムスキエティ/米/2017年
静かな田舎町で度重なる児童失踪事件が発生。弟が姿を消した内気な少年ビルは、自らを責め、悲しみに暮れる中、“それ”を目撃してしまう。「スティーヴン・キングの原作を上々に映画化。ペニーワイズというホラーアイコンも」(森 直人)

【小説】『怪奇日和』
著:ジョー・ヒル/訳:白石朗ほか/2019年
雷や死をもたらす雨など、奇妙な天気にまつわる4編を収録。「スティーヴン・キングの息子で、デビュー作で3冠に輝いた才能。4編ともアイデアに優れていてスタイリッシュ。アメリカ社会に潜む分断と多様な人間模様を描き、若い世代が共感できる作風です」(朝宮運河)

【漫画】『まほう少女トメ』
原作:武内優樹、作画:おおひなたごう/2011年
ギャグ漫画でお馴染みの作家が作画を担当した異色ホラーだが、しっかり怖い。「トメは人々の願いを純粋に叶えてくれる魔法少女なのですが、なぜか悲劇的な結末に。お願いをする人間たちの浅ましさがぶつかり合って起こる、どんでん返しが痛快」(緑の五寸釘)

【漫画】『死体あそび』
著:日菜さちこ/1995年
衝撃的な短編を何本か残してホラー界から消えてしまった、謎多き作家。「収録作品がどれも面白い、奇跡の一冊です。作者の趣味なのか、登場する小学生男子が異常な色気を放っているので要注意。その危うさがうまい具合にホラーと融合して、唯一無二の世界観を作り上げています」(緑の五寸釘)

【漫画】「虐殺者の王」
著:うぐいす祥子/2010年/『闇夜に遊ぶな子供たち』収録
身寄りのない兄妹が、いとこの遺体を不思議な力で探し当てる。この死体と同様、心臓を抜き取られる猟奇殺人が続いていて……。「今すぐ実写映画にしてほしい、ハイクオリティなオカルト作品。霊感幼女が、口から水分を垂れ流す姿が凄絶です」(緑の五寸釘)

【漫画】「時計屋敷の少女」
著:呪みちる/2001年/『青空の悪魔円盤 呪みちる作品集』収録
周りから浮いている美少女の転校生と仲良くなる主人公。美少女の家は機械時計で溢れ、彼女自身のおかしなところも見え始める。「どこか耽美な黒い線で描かれる、予測不能ホラーを生み出す作者のデビュー作。既に完成度が高すぎます」(緑の五寸釘)

【漫画】「エーテルの村」
著:伊藤潤二/2022年/朝日新聞出版/『幻怪地帯 Season2 エーテルの村』収録
言わずと知れた、ホラー漫画界の巨匠による最新作。「作画が手描きからデジタルに移行して、絵の雰囲気は多少変わったものの、天才であることはやはり変わりません」。エネルギーなしで仕事をする装置「永久機関」で成り立つ村に、かつて住んでいたという若者が潜入。「永久機関とホラーを繫げるなんて、一体誰が発想できるでしょう。怖さと奇妙さが拮抗しています」(緑の五寸釘)

「エーテルの村」

【怪談】伊山亮吉「新築マンション」
金縛りに遭ったり、蛇口という蛇口から水が出たり、と怪奇現象が続く新築のマンションの謎。「吉本興業に所属する芸人さんだけど、いい意味で語りが素人っぽいんです。話を聞いた体験者に憑依して怖がりつつしゃべるさまが魅力的(吉田悠軌)

【怪談】吉田悠軌「足が重い」
『うわさの怪談:異世界への扉は、すぐそこにある。』(王様文庫)収録
学生でモデルのリエは、ある日の通学路でバイク事故に遭遇する。以来、彼女の左足は次第に重くなり、ついには足を引きずるほどになってしまう。おかげで試験勉強にも身が入らず、ある日気分転換に図書館へ。そこで出会ったおばさんに言われた一言で足の違和感の正体に気がつく。「後半の衝撃的な展開に悲鳴!自分の足が重くなっていないか思わず確かめたくなる」(深津さくら)

吉田悠軌「足が重い」

【ゲーム】『The Dark Pictures MAN OF MEDAN』
Steam、PS4、Nintendo Switchほか/2019年
シネマティックホラーと呼ばれるホラー映画のような作品で、実際に俳優を起用。オンラインの友人や、ローカルオフラインでも遊べる。「友人と物語を完成させる気持ちで、様々な選択やチャレンジができるのが面白い」(人生つみこ)

【ドラマ】『悪鬼』
監督:イ・ジョンリム、キム・ジェホン/韓/2023年
「(取材時は)3話まで配信されたところですが、じわじわ恐怖感が増し、悪鬼の呪いを解くミステリーとしても見応えがあります。『哭声/コクソン』が好きな人におすすめですね。映像もハイクオリティで間違いないです」(DIZ)

【アニメ】『シゴフミ』
監督:佐藤竜雄/日/2008年
湯澤友楼原作のメディアミックス作品。謎の少女・フミカが、故人が大切な人宛てに書いた手紙“死後文”を届けるオムニバスストーリー。「学生いじめが題材の第6話は人の醜さや弱さを表現した、かなり後味の悪い話。救いのなさがトラウマ級とアニメファンの間では有名」(藤津亮太)

3.3怖

【映画】『SMILE スマイル』
監督:パーカー・フィン/米/2022年
精神科医のローズは、ある日患者の衝撃的な死を目撃。以来身の回りで不可解な出来事が起こるように。「謎の死を遂げる人たちの死に顔が皆笑顔というアイデアがユニーク。あり得ない設定も真面目に描いて浮かないのがホラーの醍醐味です」(人間食べ食べガエル)

【映画】『心霊×カルト×アウトロー』
監督:谷口猛/日/2018年
福岡県北九州市で繰り広げられる心霊調査ドキュメンタリー。「オカルト的な恐怖もありますが、何より怖いのが本作の舞台である北九州の治安の悪さ(笑)。ある意味では“最も怖い”人たちにも聞き込み取材をする恐怖が織り込まれた、前代未聞のホラーです」(人間食べ食べガエル)

【映画】『テリファイド』
監督:デミアン・ラグナ/アルゼンチン/2017年
ブエノスアイレスのある住宅で怪奇現象が続発。警察官のマザはその怪異の真相を解明しようと現地に向かうも、殺意に満ちた悪霊に襲われる。「ユニークなホラー表現が特徴の作品。人が宙に浮いたまま壁にゴンゴンと打ちつけられるシーンは斬新です」(人間食べ食べガエル)

【映画】『オキュラス 怨霊鏡』
監督:マイク・フラナガン/米/2013年/新居に越したばかりの4人家族に凄惨な事件が起きる。11年後、生き残った姉弟は事件の原因が新居にあった鏡の魔力によるものだと証明しようとする。「幽霊への対抗手段をしっかり練ったうえで鏡に立ち向かう設定が、あまりほかの作品にはなくユニークです」(人間食べ食べガエル)

【映画】『人肉ラーメン』
監督:ティワ・モエイサイソン/タイ/2009年
ラーメン屋を営む中年女性のバスとその娘は、人間を殺害しその肉を使ってラーメンを作っていた。「グロテスクな描写も醍醐味ですが、背後には女性の生きづらさも描かれていてドラマとしても見応えがある。世相をうまく反映しているのも良質なホラーといえます」(人間食べ食べガエル)

【映画】『屋敷女』
監督:ジュリアン・モーリー、アレクサンドル・バスティロ/仏/2007年
数ヵ月前に夫を亡くしたばかりのサラは出産を間近に控えていた。クリスマスイブの夜、彼女の元に黒ずくめの長い髪の不審な女が訪ねてくる。「容赦ない残虐な描写がある意味痛快な作品。ただひたすら絶望に突き進む展開に恐怖を感じます」(人間食べ食べガエル)

【小説】『消えた心臓/マグヌス伯爵』
著:M・R・ジェイムズ/訳:南條竹則/2022年
“イギリス怪談三羽烏”の一人である、1862年生まれのジェイムズによる短編が9作品。「『消えた心臓』は古い魔術に凝るインテリ男が、子供の心臓を生贄に捧げることで魔力を得ようとする話。19世紀末に人々が感じていた恐怖がわかります」(門賀美央子)

【小説】『ゆめこ縮緬(ちりめん)』
著:皆川博子/1998年/集英社
ヘビを扱う“蛇屋”を営む伯父の家に預けられた主人公。その記憶の中にある、妖しい世界を描いた表題作。このほか、川の中洲に住む奇怪な者たちと、そこに迷い込んだ男との交流を官能的に描き出す「文月の使者」など、大正・昭和初期を舞台にした怪奇幻想文学8編を収録。「とにかく文章が素晴らしい。一行読むたび、ため息をつくような美しさ。冷たい湿気を感じるジメッとした世界観。妖(あやかし)ものが好きな人は必読の一冊」(門賀美央子)

【漫画】『廃屋の住人』
著:袈裟丸周造/2017年
酔った勢いで不気味な廃屋に忍び込んで以来、霊が見えるようになってしまった男子大学生と、事故死した幼稚園の同級生の似顔絵を描くいとこの息子。「一見つながりのない2つの怪異が交差した時、本物の恐怖の扉が開く。鮮血や内臓に頼らない、Jホラーの真骨頂が味わえます」(緑の五寸釘)

【怪談】ファンキー中村「魔守りの虎」
『真不安奇異夜話 完全版DVD4 真説「魔守りの虎」追跡版』収録
ドライブに出かけた中村さんら5人は、浜辺で焼身自殺を遂げた遺体を発見し、交番を訪ねる。この発見をきっかけに次々と不可解な現象に見舞われていく。「2時間を超える超長編。その語り口は生っぽくリアリティがあるから、ずっと聴いていられるんです。不良のようなやんちゃさがあるファンキーさんならではの、意外な行動力が発揮されるシーンが聴きどころ」(吉田悠軌)

【ドラマ】『ほぼ日の怪談。』
監督:永江二朗、山田雅史ほか/日/2020年
人気サイト「ほぼ日刊イトイ新聞」の連載をドラマ化。「ハロー!プロジェクトのメンバーが出演する怪談ドラマということで、僕が観ないわけにはいかない。一見地味でもじわじわ怖い話が多く、アンジュルムの笠原桃奈さん主演の『高笑いする女』が好きです」(劔 樹人)

【映画】『戦慄怪奇ワールド コワすぎ!』
監督:白石晃士/日/2023年
白石監督率いる怪奇系フェイクドキュメンタリーシリーズ『コワすぎ!』の8年ぶりの最新作。呪われた廃墟で撮影された投稿映像に収められていたのは、不気味な祭壇と全身血まみれの“赤い女”、どこにも映っていない赤ん坊の泣き声だった。(BRUTUS編集部)

3.4怖

【ゲーム】『Phasmophobia』
Steam、Xbox、PS5ほか/2020年
幽霊調査ホラー代表作。様々な道具を使ってゴーストと交信し、屋敷に潜むゴーストの種類を特定するという推理要素が面白い。「1人でプレーすると空気がすごく重く感じられてとても怖い思いができますが、協力プレーでも遊べるので気軽にチャレンジしやすいです」(人生つみこ)

【映画】『簞笥』
監督:キム・ジウン/韓/2003年
舞台はソウル郊外に佇む一軒家。美しい姉妹を待ち受けていたのは、どこか冷ややかな継母と、“家”自体が放つ禍々しい怪奇現象だった。韓国に伝わる古典怪談『薔花紅蓮伝』がベースになっている。「韓国のジメッとしたホラーの良作です。押し入れやクローゼットが怖くなります」(森 直人)

【映画】『震える舌』
監督:野村芳太郎/日/1980年/松竹/3,080円(DVD)
千葉郊外の団地で平穏に暮らす3人家族。ある日、おとなしい娘は埋立地での泥遊びに起因する破傷風菌に侵されてしまう。両親は伝染の恐怖に怯えながら看病を続けるが、次第に精神を蝕まれていく。原作は芥川賞作家・三木卓の同名の小説。「昭和に作られた田舎や村を舞台にした土着ホラーで、とにかく気持ち悪い!ドロッと迫ってくる恐怖は今まさに盛り上がりを見せるアジアホラーにも通じます」(森 直人)

【映画】『鮮血の美学』
監督:ウェス・クレイヴン/米/1972年
凶悪な殺人犯によって強姦された末惨殺されてしまった2人の少女。少女の親は捜索願いを出すも警察に相手にされない。しかし彼らはひょんなことから娘を殺害した犯人を知る。「後に『エルム街の悪夢』を手がける監督のデビュー作。クラシックとしての影響力は大きい」(森 直人)

【映画】『イノセンツ』
監督:エスキル・フォクト/ノルウェー=デンマーク=フィンランド=スウェーデン/2021年
不思議な力に目覚めた子供たちの遊びが次第におかしく。「大友克洋さんの『童夢』から露骨に影響を受けた北欧のサイキックスリラーです。怒りがコントロールできなくなる怖さを上手に描いていて、感覚がすごく繊細」(森 直人)

【小説】『地獄の門』
著:モーリス・ルヴェル/訳:中川潤/2022年
江戸川乱歩も絶賛したルヴェルの全36編をまとめた新訳短編集。「フランスのグラン・ギニョールという残酷劇専門の劇場の、座付き作家だった著者。神も仏もないほどに、残酷な人間という闇の中から聞こえる叫び。短いなりにピリッと読み応えがあります」(朝宮運河)

【小説】『隣の家の少女』
著:ジャック・ケッチャム/訳:金子浩/1989年
隣に越してきた美しい少女が叔母に監禁・虐待されていたという、残酷な実事件がモチーフ。「人間の残酷性から目をそらしてはならないと、悲劇をテーマに書く著者。“読まなきゃよかった”と言われる鬱小説ですが、ある種人間の実像なのかもしれません」(朝宮運河)

【小説】『怪奇小説集 蜘蛛』
著:遠藤周作/2021年/角川文庫
夜道を走るタクシー運転手が話し始めた奇妙な話「蜘蛛」を含む、人一倍怖がりな著者が遭遇した15編の恐怖譚を収録。「実は怪奇小説が好きなベストセラー作家が贈る、著者の代表作の一つ。怪談史上最も有名な、熱海の宿で遭遇した幽霊の話など、どの作品も語り口が巧妙で真に迫る怖さがあります。また、著者のテーマである“人間の弱さ”がどの怪談にも浮かび上がってきて、小説としても読み応えがあります」(朝宮運河)

【小説】『闇祓』
著:辻村深月/2021年
転校生に不審な委員長、助けを求めた先で出会うカリスマ夫婦の洗脳——著者初のホラーミステリー長編。「距離感が異常だったり、さりげない悪意を向けることを“闇ハラスメント”と命名。著者らしい人間への解像度の高さと数々の闇ハラから、現代の人間関係の危うさが浮かび上がります」(朝宮運河)

【漫画】『ひとりかごめ』
著:雨がっぱ少女群/2019年
背後に感じる気配に怯えるあまり、奇行に走る女子高生を描いた表題作を含む、12本の短編集。「ロリータ系成人漫画で人気だった作家が描いたホラー。こちらはエロ要素はほぼありませんが、“超画力”はしっかり引き継がれています。内容もへんてこな話ばかりで、最高です」(緑の五寸釘)

【怪談】安曇潤平「顔なし地蔵」
『山の霊異記 黒い遭難碑』(角川文庫)収録
山頂にお寺の奥社が立つ、信仰の山へ登った3人の登山者たち。8合目の木陰で発見した数十体の地蔵はのっぺらぼうだったり、妙にリアルな顔だったり。その地蔵たちにまつわる、恐るべき法則とは。「理不尽な恐怖を描く、山怪談の第一人者」(吉田悠軌)

【アニメ】『Another』
監督:水島努/日/2012年
原作・綾辻行人の学園ミステリー×ホラーアニメ。夜見山北中学校三年三組が持つ“秘密”。次々と降りかかる惨劇を避けられるのか。「キャラクターはアニメ的に華やかですが、死亡シーンはしっかり残酷。メリハリある語り口が、突如起こる惨劇をショッキングに際立たせています」(藤津亮太)

3.5怖

【映画】『ドーン・オブ・ザ・デッド』
監督:ザック・スナイダー/米/2004年
一人の少女の変貌を皮切りに、町の住民が次々と凶暴化していくパニックホラー。「ゾンビ映画の古典、ジョージ・A・ロメロ監督の『ゾンビ』をリメイクした一作で、ゾンビの造形がより現代的かつおぞましく進化。21世紀型の速いゾンビはここから!」(森 直人)

【映画】『サンゲリア』
監督:ルチオ・フルチ/伊=米/1979年
舞台はカリブ海の島々。疫病により死んだ人間が、ブードゥー教の呪術によっておぞましい形相のゾンビになって蘇り、人々に襲いかかり恐怖に陥れる。「ホラーファンならば欠かせない一作。過剰なまでに残酷な描写が特徴のイタリアンホラーを象徴する作品です」(森 直人)

【映画】『ミスト』
監督:フランク・ダラボン/米/2007年
激しい嵐の翌朝、町には深い霧が立ち込め始める。それと同時にその中で不可解な出来事が巻き起こり始め、人々は次第に秩序を失っていく。「SFホラーミステリーの超人気作。深い霧の中に正体不明の生物が潜んでいるという設定も秀逸。後味の絶望感が半端ない」(森 直人)

【小説】『幻想の坩堝』
著:トーマス・オーウェンほか/編訳:岩本和子ほか/2016年
自らの認識と現実とが乖離(かいり)し、常に何かに怯える男。その身を襲う奇妙な出来事の数々。1933年発表のオーウェン「不起訴」など、ベルギーの作品を9つ収めたアンソロジー。「英米以外の怪奇小説を求める方に。特に『不起訴』はタイトル含め秀逸」(門賀美央子)

【小説】『天来の美酒/消えちゃった』
著:A・E・コッパード/訳:南條竹則/2009年
妻と友人と車で旅行に出た男。辿り着いた町で彼女らがいなくなる恐怖を味わう「消えちゃった」。ほか、20世紀前半に活躍した英国の短編職人・コッパードによる11編を収録。「“消失”の怖さが様々な形で仕掛けられた、読み応えのある作品です」(門賀美央子)

【小説】『新編 日本の怪談』
著:ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)/2005年
日本の怪談や民話を文学として蘇らせた八雲の怪談集。鳥取で実際に伝わる「幽霊滝の伝説」などを収録。「禁忌の場所へ行くと酷い目に遭うという日本怪談の典型の一つ。様々な翻訳がありますが、八雲の構想も丁寧に汲み取った池田雅之さんの訳がイチオシ」(門賀美央子)

【小説】『高橋克彦の怪談』
著:高橋克彦/2006年/祥伝社文庫
“怪談こそ物語の原点”という信念を持つ著者。長年にわたって書き続けてきた200近い短編から、怪奇怪談短編や妖しき身辺エッセイといった21編を厳選して収録。「娘の亡霊に一目会おうと、廃屋に赴いた父が恐るべき真実を知る『幽霊屋敷』や、幼き日の罪の記憶が緋色の恐怖に豹変する『大好きな姉』など。直木賞をはじめ数々の文学賞を受賞した著者による、怪談の真髄とも言える上質な物語に触れられます」(門賀美央子)

【小説】『影を踏まれた女』
著:岡本綺堂/1988年/光文社時代小説文庫/往来で影踏みをして遊ぶ子供たち。その子らに影を踏まれてしまった糸屋の娘・おせきは、以来自分の影を映すすべてに恐怖心を覚え始め徐々に弱っていく。彼女は一体どうなってしまうのか。怪奇怪談の名手、岡本綺堂による必読のオールタイムベスト作。「因果をハッキリさせる江戸怪談と違い、多様な解釈が可能な結末の描き方が魅力的。近代文学として江戸話を再構成した、明治生まれの綺堂ゆえの作品」(門賀美央子)

【漫画】『厭談夜話』
怪談:夜馬裕、漫画:外本ケンセイ/2023年
ブーム再来中の怪談もので、“三代目怪談最恐位”の怪談師の夜馬裕が、20年以上にわたって全国から収集した実話怪談のコミカライズ。「実話とはにわかに思えない、禍々しい話のオンパレードです」。外本ケンセイの迫力のある絵柄も、臨場感を盛り上げる。(緑の五寸釘)

【漫画】『裏バイト:逃亡禁止』
著:田口翔太郎/2020年~/小学館
ハイリスク・ハイリターンの裏バイトに挑む、訳あり女子2人。「バイトのたびに何かしら怪異が起こるのですが、一回読んだだけでは理解できない難解な話も。なのに惹きつけられる、圧倒的パワーのある作品です。バディ感が楽しく、ギャグっぽいパートもあるので気張らずに読めます。10巻が出て間もないですが、短編が多いホラー漫画で2桁の巻数になる作品は珍しいという点でも人気の高さを物語っています」(緑の五寸釘)

【漫画】『スケアリー・キャンパス・カレッジ・ユニバーシティ』
著:永椎晃平/2022年
花のキャンパスライフに憧れる女子学生が、とある霊に憑(つ)かれ、学内の怪しい専門家に助けを求める。「大学生の欲望と怪異をうまく絡めた作品で、再起不能者や死者が大量に発生。それらをどう対処するのか、オチが読めないところがいい」(緑の五寸釘)

【怪談】ぁみ「通学バス」
女子高生が普段から乗る通学バスに、ある日、不思議な女が乗り込んできた。女は明らかに様子がおかしいけれど、周りは無反応。どんどん女子高生に近づいてきて……。「次々と恐怖がやってくる、ジェットコースターのような語り口が魅力」(深津さくら)

【怪談】村上ロック「捧げ物」
霊感が強いという女性が冬の海岸へ。荒廃した海の家に入ると「かなったかなったねがいがかなった……」と書かれたチラシを見つける。これは一体?「ロックさんの高めで素敵な声色が“かなった……”を一層不気味に響かせるんです」(吉田悠軌)

【ゲーム】『Five Nights at Freddy's』
Steamほか/2014年
ジャンプスケアホラーの代表作で、天下のブラムハウス・プロダクションズによる映画化も決定している点でも面白さは折り紙付き。「もしこの作品が好みなら、グッズも比較的たくさん展開しているので、推しアニマトロニクスの推し活もできるかも(笑)」(人生つみこ)

【ドラマ】『サーヴァント ターナー家の子守』
製作総指揮:M・ナイト・シャマランほか/米/2019年~/AppleTV+オリジナル
生後間もない子供を失った夫婦。妻は人形を赤ん坊だと思い込み、ベビーシッターに子守をさせるが——。「夫婦とベビーシッター、おかしいのはどっちなのか。心理的に参ってしまうドラマです」(DIZ)

【ドラマ】『ダムド・ファイル』
監督:万田邦敏、七字幸久ほか/日/2003年~
名古屋テレビ制作のオムニバスドラマ。名古屋を中心とした心霊スポットなど、ローカルな怪談話がテーマになっている。「へたに凝らない映像や演出、身近にいそうな俳優さんなど、低予算感を感じさせる作りがますます恐怖を増幅させます」(劔 樹人)

【アニメ】『PERFECT BLUE』
監督:今敏/日/1997年
アニメ界の鬼才と称される今敏の初監督作品。事務所の方針で女優に転向した、元アイドルの霧越未麻。ファンらしき人物から脅迫めいたファクスが届くなど、次第に身の危険を感じ始める。「現実と幻想が混在していく恐怖が、映画的な画(え)と演出で巧みに表現されています」(藤津亮太)

【アニメ】『整形水』
監督:チョ・ギョンフン/韓/2020年
オムニバス漫画『奇々怪々』の一編をアニメ化。韓国社会を取り巻くルッキズムを題材に、“美”に取り憑(つ)かれた主人公の姿を描く。「3DCGアニメならではの硬く整った絵の印象と、肉体が変化していくグロテスクな描写が対照的。ショッキングな映像になっています」(藤津亮太)

【お化け屋敷】『怨霊座敷』
東京ドームシティ/東京・水道橋/無休
ごく日本的な和風の一軒家が舞台。かつてはこの家に住み、夫との諍(いさかい)の末に亡くなった女性・夜雨子の怨霊を鎮めるべく来場者は与えられたミッションに挑戦する。「純和風のお化けたちの表情と動きに震えます」。現在は、特別演出『呪いの硝子窓』を開催中。(ジェットコ社会人)

【心霊ドキュメンタリー】『裏ホラー』
監督:白石晃士/日/2008年
『リング』などを手がけた一瀬隆重がプロデュースした12編のリアルホラー映像。「リアリティよりもエンタメに振り切った恐怖短編集。ネットでも拡散されていて断片的に目にしたことがある人も多いはず。収録されている『幽体離脱』という映像は衝撃的です」(皆口大地)

【心霊ドキュメンタリー】『境界カメラ』
監督:寺内康太郎/日/2018年/AMGエンタテインメント/2,310円(DVD)
1年前に失踪したあるディレクターから届いた奇怪な映像。その謎を解明すべく、スタッフは調査を進める。「ニコニコ生放送でやっていた企画で、怪異の解明に向け、視聴者に“詳細を知らないか”と投げかけ参加型で展開していた斬新なものでした。それが進化した今作も、リアリティがあってハラハラドキドキするシリーズ。映像のガチ感を楽しみたい方にオススメです」(皆口大地)

©︎エル・エー

【心霊ドキュメンタリー】『意味が分かると怖いビデオ 意味怖』
監督:坂本一雪/日/2016年~
入手した数々の恐怖映像を取材し、専門家とともにその恐怖の裏を検証する。「答えが明確になっていないのがコンセプトのドキュメンタリーシリーズで、映像と構成、展開のクオリティが高い。『地獄の夜行バス』という映像が特に印象に残っています」(皆口大地)

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