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劇団ひとりにインタビュー。監督最新作は、ビートたけしの自叙伝が原作の『浅草キッド』

ビートたけしの自叙伝が原作の『浅草キッド』の映画化がついに実現。監督を務める劇団ひとりに話を聞いた。

Photo: Koichi Tanoue / Text: Chisa Nishinoiri / Styling: Kazumi Hoshino (MIXX JUICE) / Hair&make: Misa Koide (MIXX JUICE)

「初監督作品『青天の霹靂』(2014年公開)を撮って、とにかく映画を作ることが面白くて。頭の中に描いていたものが形になるのはすごくシビれます。映画に携わっている時の僕って、すごくピュアなんです。本当に素直に裸になって作品と向き合えるというか、それが心地よいなって思います」
そんな劇団ひとりさん監督最新作が、ビートたけしの自叙伝が原作の『浅草キッド』だ。

「前作を撮り終えた直後から、さっそく次を撮りたいと思い、いろいろ脚本を書くんだけど、結局本棚にある『浅草キッド』が気になっちゃって。あぁ、やっぱり僕は『浅草キッド』が撮りたいんだなぁって。でも、いま自分がやる理由なんかないし、一回忘れようと別の本を書こうとする。でもやっぱり、しばらくすると『浅草キッド』が気になっちゃう」

そこから実に足掛け7年。劇団ひとり脚本・監督によって『浅草キッド』の映画化がついに実現。ビートたけしさんは芸人を目指すきっかけになった憧れの男であり、ひとりさんがこれまで手がけてきた数々の作品には、そのエッセンスが脈々と流れているという。

「『青天の霹靂』、あれはもうまんま浅草キッドの世界観(笑)。風間杜夫さんに演じてもらった劇場支配人は深見(千三郎)師匠をイメージしてるし、最初の小説『陰日向に咲く』も浅草のストリップ小屋が舞台。根底にはずっと浅草キッドがある。そのエッセンスをちょこちょこ入れながら、自分をごまかしごまかし納得させてたんですけど、やっぱり浅草キッドをやらないことには俺、もう前に進めないって思ったんですね」

お笑い芸人・劇団ひとり

中3の頃、近所の古本屋でその本を手に取って以来、彼を心酔させる“浅草キッド感”とはいかなるものなのか?「当時の浅草芸人たちの、あの泥くささは自分の中の一つの指針ですね。かっこ悪いことがかっこいい的なね。ストレートに優しい人には興味が湧かないですし、あまり魅力的に思わない。めんどくさい人たち、素直じゃない人々が好きなんです。そういう部分がセリフのやりとりにも表れてくる。

でも僕、浅草にはなんの縁もゆかりもないんですよね(笑)。僕自身、全然粋じゃないし、浅草に住みたいと思ったこともない。距離を置いて、勝手に憧れて勝手に思い描いてるから、憧れのままでいられる。今回、自分の中にあったものをすべて吐き出した感があるので、そろそろ脱・浅草をしなくちゃいけないな、と思っているんです。ただね、いま書いている小説の設定が、すでに浅草なんですよ(笑)」