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ポケモン GO、マクドナルドetc.話題を生み続ける仕掛け人、足立 光に学ぶ。世間の心が動く6つのツボ

世の中に認められるようなことを成し遂げるための一番の近道はマーケティングを学ぶことです。マーケティングは、あらゆる仕事に役に立つ普遍的スキル。ファミリーマート、ポケモン GO、マクドナルドなどを渡り歩き、数々のヒットを重ねてきた、マーケター・足立光さんに、人の心のツボの押さえ方をテーマに、マーケティング思考を学びます。前編はこちら

photo: Jun Nakagawa / text: Junya Hirokawa

感情に訴える世の中の6つのツボ

世間の心が動く6つのツボ

method 1

ぱっと見てわかるインパクトにグッとくる

一目で「でかい!」と思わせるファミリーマート「40%増量作戦」

ファミリーマート「40%増量作戦」

ファミリーマート創立40周年を記念して2021年に実施したのが、人気商品の価格はそのままに、「とにかく40%大きくして販売する!」という老若男女が一瞬で理解できる、わかりやすさMAXの増量キャンペーン。店舗の棚に並ぶ、あからさまに大きくなった見慣れぬ「ファミチキ」やサンドイッチのど迫力のビジュアル。その後、毎年開催する人気定番キャンペーンに成長している。

「要は量。見た目が大きいというニュース性で食べたいと思ってもらう。多すぎて、先日、増量のカルビ重を買ったら食べ切れなかった(笑)」と足立さん。20%でも30%でもなく、40%という思い切りのいいボリューム感がポイント。中には、明らかに40%以上の巨大化を遂げた商品も。

method 2

ツッコミどころがあるとつい気になる

マクドナルドの新バーガーの名前を大募集。「名前募集バーガー」

マクドナルドの新バーガーの名前を大募集。「名前募集バーガー」

2016年、マクドナルド史上初のバーガーの名前募集キャンペーンを実施した。北海道産食材を使った新商品のバーガーを、「北海道産ほくほくポテトとチェダーチーズに焦がし醤油風味の特製オニオンソースが効いたジューシービーフバーガー(仮称)」としてキャンペーンを告知。

グランプリとなった命名者には、バーガー10年分に相当する賞金を贈呈するなど、いちいちツッコミどころ満載で、つい気になってしまう仕掛けに、SNSも盛り上がりを見せた。500万件を超える大量の応募を集めた結果、「北のいいとこ牛(ぎゅ)っとバーガー」という予想外にシンプルなネーミングに決定した。隙を残しておくことで、より多くの人々を巻き込むことに成功。

method 2

思いがけない偶然に心惹かれる

品切れ続出、ファミリーマートの「コンビニエンスウェア」

ファミリーマートの「コンビニエンスウェア」

ファミマカラーの靴下に始まり、2023年にはショートパンツが品切れになるなど、ファミリーマートに行くとついチェックしてしまうのが「コンビニエンスウェア」。ファッションデザイナーの落合宏理さんと共同開発した高品質で新鮮なカラーリングのアパレルを、店舗数の多さを強みにコンビニで売り出すという、誰も予想しなかった出会いを堂々と演出し、ヒットを生んだ。

「実は、ちょっとお洒落なソックスやパンツって、ネットでも買いにくいし、意外と買えるところが少なかった」と足立さん。

これまで緊急需要だったコンビニ衣料の高いファション性や品質にギャップを感じ、思わず手に取り、話題にしたくなる。

method 4

日常の生活の延長で使いたい

ライトユーザーを狙った『ポケモン GO』のキャンペーン

ライトユーザーを狙った『ポケモン GO』のキャンペーン
©getty images

リリースから3年が経過し、『ポケモン GO』ブームが沈静化しつつあった2018年。開発元のナイアンティックに移籍した足立さんのミッションはアジアでユーザーを増やすこと。そこで、散歩や旅行が楽しくなるといった価値を訴求。例えば「#旅ポケGO」というポケモン GOを旅先で利用した写真をSNSで投稿してもらうキャンペーンを実施。

当時、社内では、新しい機能をリリースしユーザー獲得につなげるのが定石だったが、足立さんが考えたのはむしろ逆。ヘビーユーザーではなく、「ゲーム名は知っている」「プレーしたものの離脱してしまった」など、よりパイが大きく伸びしろがありそうなライトユーザーにターゲットを再定義した。

method 5

想像できると欲しくなる

「プリングルズ」とコラボした「ファミチキ」「クリスピーチキン」

「プリングルズ」とコラボした「ファミチキ」「クリスピーチキン」

2023年2月、発売から3日間で合計販売数100万食を突破したのが、「プリングルズ」の「サワークリーム&オニオン」とコラボしたファミリーマートの「ファミチキ」と「クリスピーチキン」。コラボ企画は、「森永ミルクキャラメル」×「マックシェイク」など、マクドナルドCMO時代から、足立さんが得意としてきた手法の一つ。

食品同士のコラボが実売につながる理由を、「味のコミュニケーションをする必要がないから」と足立さんは解説する。確かに、誰もが一度は口にしたことがある有名商品なら、名前を聞くだけでどんな味か瞬時に想像でき、コミュニケーションが一手間減る。どんな味がするか、想像させることで、買いたいと思わせる。

method 6

やっぱり“いいこと”を応援したい

世界に拡大、ヘンケルジャパン「未来をつなぐ夢はさみ」活動

ヘンケルジャパン「未来をつなぐ夢はさみ」活動

ドイツの消費財メーカー、シュワルツコフヘンケルの日本法人(現・ヘンケルジャパン)の代表時代の足立さんが2008年に始めたのが、「未来をつなぐ夢はさみ」というCSRの取り組み。日本の美容師をボランティアトレーナーとしてカンボジアのストリートチルドレン収容施設に派遣し、15~18歳の若者たちにヘアカットの技術を教え、手に職をつけさせて自立を支援するという社会貢献活動だ。

「自分たちの会社が社会貢献していると社内外に示すことで、会社全体の士気が上がりましたね」と足立さん。社員にも消費者にも共通する、いいことを応援したいという気持ちを喚起、それが最終的にはブランド力を高めることに繋がった。