新たなパッケージが映す、島の自然と暮らし、そして人
「爽やかで明るいパッケージになりましたね。以前のヴァイキングをイメージした無骨で重厚感のある佇まいも、伝統的で格式高いウイスキーらしくて素敵でしたが、ナチュラルな印象になったことで、より幅広い人が手に取りやすいお酒になったのではないでしょうか」
白を基調に、繊細な木目のモチーフがあしらわれた新しいパッケージの〈ハイランドパーク〉を手に、そう話す江﨑文武さん。バンドやソロでの活動、そして近年は映画音楽の制作に力を注ぐなど、音楽家としてのせわしない日々のなかで、お酒を嗜むひとときが束の間の安らぎになっているのだそう。なかでもウイスキー好きの彼にとって、ハイランドパークは日頃から愛飲する銘柄のひとつだ。
「12年、15年、18年と熟成期間の異なる3種類を飲み比べるのが楽しいですね。フルーティーでスモーキーな〈ハイランドパーク〉そのものの味わいを感じたくて、基本的にはどれもロックかストレートで飲むのが好きなんですが、軽やかな12年や15年は、ソーダや水で割って味わうこともあります。妻と晩酌したり、友人たちを招いたりして日頃から親しんでいるので、今日のイベントで、また新しい一面と出会えることがとても楽しみです」

『HIGHLAND PARK “Different by Nature Experience”』と名付けられたこの日のイベント。装いを新たにした〈ハイランドパーク〉がずらりと並ぶのみならず、このウイスキーの個性を育んだ故郷であり、今回のリニューアルにも大きなインスピレーションを与えた、スコットランド・オークニー諸島の自然や風土、文化などを、展示やテイスティングなどのさまざまな形で体感することができる機会となった。
まずは、島に自生し、味わいの決め手にもなっているヘザーの花があしらわれた会場内を歩く江﨑さん。「SKY」「MOOR」「HEATHER」「SEA」という、この地を構成する4つの自然のエレメントをテーマにした写真やテキスト、映像などの展示を視線でなぞりながら、「島の暮らしぶりが見えてくるところに、新鮮な驚きがあります」と言葉を添える。
「もともと〈ハイランドパーク〉には、オークニー諸島の過酷な自然のなか、閉ざされた場所で寡黙な職人たちが黙々と造り続けているような、どこかミステリアスなイメージがあったんです。でも今回の展示では、職人はもちろん、ダンサーや農民、アーティストの女性たちなど、島で暮らすさまざまな人たちに光が当たっている。稀有な自然環境のみならず、クリエイティブで生き生きとした島民たちの存在からインスピレーションを受けている“開かれた”お酒であることは新たな発見でした。土地の暮らしや、人と人とのリアルなコミュニケーションの先にものづくりが育まれているところに共感します」

かくいう江﨑さんにも最近、音楽家としてものづくりに向き合うなかで、リアルなコミュニケーションの大切さを再認識する出来事があった。
「今年3月、〈WONK〉では久々の海外公演となる台湾のフェスに参加しました。僕らは現地ではまだまだ無名のバンドですが、現地の若い音楽ファンたちが凄まじい熱量で音にノってくれて。彼らの音楽へのまっすぐな向き合い方に触れて、大きな刺激をもらいました。それにライブ中だけでなく、地元の市場で麺をすすったり、そこで出会った人と言葉を交わしたりする時間も特別でした。
コロナ禍を経て忘れがちだった、場所が持つエネルギーを感じさせられる旅になりましたね。テクノロジーが発達した今、知った気になったり、行った気になったりするのは簡単だけれど、自分の足を使って五感を駆使する経験はやっぱり別物。創作する上でも、リアルな感覚やつながりを大切にしたいなと思います」
気鋭のバーやレストランとのコラボレーションも

続いて会場の一角にあるバーエリアへ。ここでは、〈ハイランドパーク〉各種のほか、大阪・梅田のバー〈CRAFTROOM〉による3種類のオリジナルカクテルも振る舞われた。江﨑さんも「HEATHER」と名付けられたカクテルを一口。ハイランドパーク12年に、巨峰とハーブのリキュールを組み合わせた、創意に富んだ一杯だ。

「ウイスキーと巨峰の甘みがどっしり効いていて、とても華やかです。12年は、果実味が強い印象なので、僕も日頃は柑橘類やドライフルーツをおつまみにして楽しむこともあるんです。今日のようなアレンジもすごく面白いなと思いました」
また当日は、西麻布のイノベーティブレストラン〈AC HOUSE〉が手がけたフィンガーフードも。自家製のチャイガナッシュと桜と苺を合わせた「桜チャイマカロン」と、カクテルのペアリングを堪能しながら、改めて会場全体を見渡す江﨑さん。
そのなかで目に留まったのは、今回のイベントタイトルに冠されている“Different by Nature”というブランドメッセージだ。「生まれながらの違い」を意味する言葉で、〈ハイランドパーク〉のオリジナリティが、オークニー諸島の唯一無二の自然や風土、文化によって育まれていることを示している。そんなブランドの姿勢に触れたことをきっかけに、江﨑さんは自身のオリジナリティについても話してくれた。
「僕が意識しているのは、さまざまな領域で活躍する人たちと手を結ぶことでしょうか。音楽を作る人のなかには、外界との接触を断って自分の内的世界に入り込んでいくタイプもいるし、強固なチームを組んでそのなかで表現を模索していくタイプもいる。そうしたなかで僕は、音楽家だけでなくて、映画監督、建築家、ペインターなど、領域を超えていろんな才能を持つ人と関わってものづくりをしたいという思いを持っています。
今注力している映画音楽の仕事の面白さも、いろんなクリエイターと関わることができるところにある。アイデアをもらいながら、引き出しを増やしていく過程が楽しいんですよね。とはいえ、まだようやく自分の足で歩み始められたばかりなので、そうした豊かな旅の中で、結果的にオリジナリティと言える何かがかたちづくられていけば嬉しいです」
時折自身の創作活動にも思いを馳せつつ、イベントをひと通り満喫した江﨑さん。
「新しいパッケージやブランドメッセージ、ユニークなカクテルやペアリングなどの提案を通じて、従来のイメージを覆し、ウイスキーの裾野を広げようと果敢に挑戦されているところが素敵だなと思いました。僕も夜にしっぽり、だけでなく、今度は昼間に外で、妻や友人たちと気軽な一杯を楽しんでみたいなと思います」
ハイランドパーク
