2010年から最新号まで。『BRUTUS』が見つめる時代とは

三宅香帆:懐かしい!読んでいた号がたくさんあります。
佐伯ポインティ:「珍奇植物」「珍奇鉱物」とか、珍奇シリーズも登場しますね。
三宅:「日曜美術館」の特集(2015年6月15日発売号)も覚えてますね。松本隆特集!(2015年7月1日発売号)これも買いました。

佐伯:80年代の『BRUTUS』は『島耕作』とか『サラリーマン金太郎』みたいだったけど、この頃になると「松本大洋」みたいな雰囲気になってますね(笑)。
三宅:たくさんの人が自分の好きなものを語るスタイルも、この頃に定着したんですかね。
佐伯:「うまい肉。誰かに話をしたくなる。誰かを連れていきたくなる。」(2012年8月15日発売号)。ああ、まさにこの感じ!想像上の『BRUTUS』みたい。
三宅:「漫画ブルータス」(2016年2月1日発売号)読んだ!懐かしい!
佐伯:懐かしいですよね!漫画がしっかりカルチャーになっていくのも感じますね。
三宅:「ことば、の答え。」(2019年8月1日発売号)。こういう抽象的な企画も、この頃の『BRUTUS』っぽいです。あと、全体的に「好き」の話になっていくんですよね。昔は「好き」というよりも、「学」だった。
佐伯:たしかに、昔は「知らねば」という感じだった。

三宅:「マンガが好きで好きで好きでたまらない」(2020年6月1日発売号)も。「好き」こそがセンスであるという。センスがいいからとか、モテるからではなく、好きだからやってるんだと。「推し」みたいな感覚も関係があるのかもしれないです。
佐伯:タイトルの末尾に「。」をつけるのも『BRUTUS』ですよね。何だろう、煽るわけではないけど、答えはある、みたいな。優等生っぽい。ノートをきれいにとっていて、写させてくれるやさしい優等生みたいな感じがします。

三宅:「恋の、答え。」(2020年10月15日発売号)、「お金の、答え。」(2017年5月15日発売号)。昔はあんなにモテるためのものだった2つが「の、答え。」ですから。
佐伯:「最高」とか「夢中」とか、そういう言葉も『BRUTUS』っぽいです。「酒場」も。
三宅:「本屋好き。」(2011年5月15日発売)、これも覚えてます。この頃、独立系書店が盛り上がっていたんですよね。「危険な読書」(2017年12月15日発売)。これは、私がこの直前の2017年の9月に『人生を狂わす名著50』という本を出していたのに、全く呼ばれなかった記憶があります(笑)。

佐伯:80年代に欲望から始まって、90年代にその対象がだんだんわからなくなり、00年代のハテナ、そして10年代には「答え」になった。『BRUTUS』がカルチャーを牽引する立場になっていった変遷が現れてましたね。それにしてもこれだけ一気に振り返ると、タイムリープ感がすごい。
三宅:犬特集とか動物園特集も、80年代の『BRUTUS』だったら考えられないです。本当に、同じ雑誌とは思えない。でも、たしかに雑誌って一つの人格っぽいなと思いました。

『BRUTUS』のすべてを学習したAI。あなたは何を話しかける?
三宅香帆さんと佐伯ポインティさんとともに、駆け足でたどった『BRUTUS』45年分の歴史。そこには日本のポップカルチャーの移り変わりや、人々の関心や価値観の変化が刻まれていた。
まるで一つの人格のように、時代によって様々に移り変わりながらも、変わらない視点を持って社会を見つめ続けてきた『BRUTUS』。そのバックナンバーのすべてを学習した対話型AIが「もしもし、ブルータス。」だ。雑誌と話すことができる、世界初のAI。さて、あなたは何を話しかける?










