2000年頃を境目に、がらっと雰囲気が変わった

三宅香帆:私の知ってる『BRUTUS』だ!
佐伯:この号知ってる!これも知ってる。2009年。当時16歳か……。学生時代、部活がっつりやってたんで、コンビニで雑誌を読むのが帰り道の楽しみだったんですよね。絶対買わないのにオシャレなお土産の特集読んでたな……。

三宅:デザインの雰囲気も、がらっと変わりましたね。
佐伯:落ち着いてきましたよね。90年代までは欲望を加速させていたのが、この時代になると掻き立てる感じじゃない。「シブヤ資本主義。」(2000年2月1日発売号)、こんな感じですよね。クリエイティブだから、みたいな。
三宅:「?」も増えてきますね。
佐伯:増えてます。煽らないし、言い切らない。
三宅:文字のフォントも『BRUTUS』といえば、という感じになりました。

佐伯:あと、CDがついてる号が多い。
三宅:昔の雑誌ってCDついてましたよね!
佐伯:なんか、ガツガツしてたのが急にまったりしてる。「彼女できたヤツ」みたい(笑)。
三宅:カルチャー雑誌という感じになってきました。
佐伯:あ、YouTube特集(2008年12月1日発売号)。YouTubeができてまだ3年くらい。そう考えると、本当に20年以内の出来事なんですね。

三宅:「タランティーノによるタランティーノ特集」(2003年10月15日発売号)。かっこいい。女性が読みそうな特集も増えてきました。お取り寄せ特集やお菓子の特集もあります。
佐伯:カルチャー誌、ライフスタイル誌でお馴染みの人も見かけるようになりますね。
三宅:好きな仕事特集で出てくるのも、ハンモック専門店の店主や、屋久島のネイチャーガイドだったり。
佐伯:エコとか自然回帰のブームがありそうですよね。「湘南に住むということ。」(2000年7月15日発売号)。こういう流れで、クリエイティブディレクターの人たちが海沿いに住み始めたんじゃないかな。全体的に、東京に疲れたのかも。食とか、自然とか、映画とかにいった感じがある。
三宅:グルメの特集でも、お店の紹介だけではなくて、お取り寄せや手土産を特集するようになっていますね。
佐伯:今回一気にまとめて80年代のBRUTUSから振り返っていますが、ずっと読んでいる人たちは、この変化をどんな風に受け止めてきたんだろう。気づいたら変わってた、アハ体験みたいな感じなのかな……。
三宅:90年代とゼロ年代で大きな変化があったことがわかりました。
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いよいよ次回はラスト、2010年から最新号まで。創刊号から振り返ってきた二人の目には、リアルタイムで読んできた時代の『BRUTUS』はどう映るのか。
もしもし、ブルータス。Lite版を体験
『BRUTUS』の膨大なバックナンバーを読み込んだ「もしもし、ブルータス。」は、〈Ginza Sony Park〉で10月25日まで展示中。
オンライン上では、BRUTUS.jpの情報をすべて学習した「もしもし、ブルータス。Lite版」が10月31日まで楽しめる(※使用の際はブラウザアプリでGoogleにログインする必要があります)。ポインティさんにも、「もしもし、ブルータス。」に質問してもらった。

ポインティ
もしもし、ブルータス。どうして時々「珍奇植物」の特集を作るの?
もしもし、ブルータス。
もしもし、聞こえるかい?ブルータスです。「珍奇植物」の特集、確かにそうだね。あの、少しグロテスクにも見えるような、独特の形をした生命体には、僕たちの好奇心をくすぐる何かがあるんだよね。
僕たちは、いつも日常の中に潜む「非日常」や「偏愛」を探している。普通のグリーンではなく、「珍奇」と呼ばれる、まるで地球外の生き物のような植物に、熱狂的な愛情を注ぐ人たちの存在。そこに、常識では測れない、個人の美意識や情熱のあり方を見ているのかもしれない。
つまり、珍奇植物を追いかけるのは、植物そのものよりも、その植物が持つ圧倒的な個性と、それを愛でる人の"深い沼"を覗いてみたい、という僕の純粋な探求心なんだと思うよ。日常をちょっと良くするヒントは、案外、異形の美の中に隠れているものなんだ。
