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永野芽郁が赤血球、佐藤健が白血球に?擬人化された細胞を描く映画『はたらく細胞』が公開

『テルマエ・ロマエ』や『翔んで埼玉』などの斬新なコメディ映画を手がけてきた武内英樹監督の最新作が、12月13日に公開された。今作のテーマは、打って変わって“人間の細胞”。悩みも吹き飛ぶコミカルさを映画に吹き込む魔術師は、アカデミックな世界をどのように表現したのだろうか。

text: Shoko Yoshida

体内は宇宙。それを知ると、自分のカラダが愛おしくなる

中学生時代、定期テストのためにとにかく必死に暗記した人体の仕組み。血液の循環により酸素をカラダ全体に行き渡らせ、二酸化炭素を肺に運搬するのが赤血球で、外部から体内に侵入した細菌やウイルスと戦うのが白血球で……、なんて淡々と説明されたとて意味不明で、大人になってサッパリ忘れたという人がほとんどではなかろうか。

それを、老若男女誰もが楽しく理解できるエンターテインメントに落とし込んだのが、武内監督の最新作である。細胞を擬人化し、それぞれの細胞が大切な役割を持って24時間働いている様子を描いた清水茜著の漫画『はたらく細胞』シリーズと、不健康な人間の体内を描いたスピンオフ作品『はたらく細胞BLACK』を実写化した今作。

武内英樹
映画監督・武内英樹

永野芽郁が赤血球、佐藤健が白血球の一種である好中球、仲里依紗がNK細胞、山本耕史がキラーT細胞、片岡愛之助がヴィランとしての肺炎球菌役に扮するなど、親しみある役者たちの登場によって、ユーモラスに、そしてリアリティをもって細胞の個性が迫ってくるのだ。

コミックの実写化にあたっては、原作の世界観を大事にしつつも、健康的な女子高校生(芦田愛菜)と、不摂生な父親(阿部サダヲ)という「人間側」の描写を独自に組み込んだという武内監督。

「初めて原作を読んだ時、“体は一つの宇宙なんだ!”とハッとしたんです。約37兆個の細胞が巡っているスケールの壮大さを伝えるべく、細胞役として総勢約7,500人のエキストラに協力してもらい、日本全国21都市、31ヵ所で撮影をし、体内の描写はファンタジックに作り上げました。

そのコントラストとして、人間側のなんてことない日常も映し、あえて団地や学校などの平凡な場所で撮影したのです。それに、異なる2人の生活も映すことで、日々の暮らしで体内環境がどれほど変わるかが一目瞭然。父親役は私の分身のようなものなので、生活を見直さなきゃなあ、とメガホンをとりながら思わされましたね(笑)」

“細胞”は、性別も人種も超えた人類共通のテーマ。ということは、国内外問わず観てもらえることも想定して製作に臨んだのだろうか?

「もちろん。そのためにも、日本カルチャーをところどころに織り交ぜていますから。カラフルな色合い、重力を無視した自由度の高いアクションシーン、最高レベルのCGなどによって、日本らしいアニメーション的な雰囲気を醸し出しました。

あと、切れ痔の父親が、お腹を下してトイレを我慢している際の、肛門での“戦い”も描いているのですが、そこでは日本カルチャーを代表するキャストを登場させています。このシーンは、海外の試写会で特に大笑いしてくれましたね。ここで出てくる、とある食べ物のプロップもこだわりですので、ぜひ注目してみてください」

様々な試みがちりばめられた、学びある細胞ストーリーの制作を通して、武内監督自身の毎日にも変化があったのだそう。

「映画製作以前から、疲れた時には酸素カプセルに行っていたのですが、効果は感じるけど仕組みや理由まではわからなかった。それが今では、“酸素を体に送り込むことによって、(永野)芽郁さんが酸素ボンベを体内に運びまくってくれているんだ”と理解できるようになったんです。

それから、お風呂に入ると白血球は活性化されるらしいので、湯船に浸かりながら“(佐藤)健くんが超元気に細菌を倒してくれてるんだ”とも考えたり。役者たちの姿で、体内のメカニズムがビジュアルとして簡単に想像できるわけです。そうすると、毎日、何をしていてもなんだか楽しいんですよね。健康診断すらも苦じゃなくなりました。映画を観たらきっと、こんなふうに自分のカラダが愛おしくなると思いますよ」

『はたらく細胞』
監督:武内英樹/出演:永野芽郁、佐藤健/芦田愛菜/阿部サダヲ ほか/健康的な高校生の体内で元気に働く細胞と、不摂生な父親の体内で過酷な労働をする細胞。人間の体で巻き起こる、知られざる細胞のドラマを描く。全国公開中。
©清水茜/講談社 ©原田重光・初嘉屋一生・清水茜/講談社 ©2024 映画「はたらく細胞」製作委員会