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写真家・平野太呂が見つけた近所の市民農園。仕事で汗をかくことの清々しさ

土に触れると、地球が持つ体温を感じる。普段の暮らしでは出会うことのない虫や動物が、循環する世界を作っていることに気づく。収穫した作物を食べる幸せだけでなく、自分で育てている実感が、未来と希望を生む。不確かな時代に確かな何かを求め、畑へ。

Photo: Taro Hirano / Text: Chizuru Atsuta

平野家の畑は2年目に突入

静な住宅街の一角にある緑豊かな市民農園。写真家の平野太呂さん一家が自宅から歩いて6〜7分のこの場所で畑を始めたのはコロナ禍に陥った1年ほど前のこと。

いわく「都心に遊びに行くこともなくなり、近所を散歩していたら偶然見つけた」。今人気の区画貸しは、抽選制や数ヵ月待ちも多いそうだが、この時は空きがあり、すんなり契約。3坪ほどの区画は月 ¥6,000。しかも必要な堆肥や道具も揃っていて、初心者でもすぐ始められる。現在育てているのはトマト、ナス、キュウリなどの夏野菜、パセリ、ケールなどの葉物、コリアンダーやコヘンルーダなどのハーブまでざっと二十数種類。

「最初は見よう見まねで。地主さんは300年ほど続く農家で、周りの畑にも高齢者が多くて、みんな親切に教えてくれる。“これ今収穫した方がいいよ”とか(笑)」

週1〜2回の畑仕事を終えると、ジムなどで汗をかくのとはまた違った清々しさがあるという。

「正直畑に行くのが面倒くさいと思うこともあるんですが、耕した後には、やっぱり来てよかったって思う」
夏野菜を片づけ、そろそろ冬野菜の準備に入る。去年はニンジンが思うようにできなかったので、妻とともにリベンジしたいそうだ。平野家の畑は2年目に突入した。

今年作った夏野菜の数々。家族で食べる分はほぼこの畑でまかなうことができ、店で野菜を買うことがなくなった。