Play

Play

遊ぶ

〈ATLUS〉橋野桂の、思い出のゲーム。『真・女神転生』

ゲーマーを魅了してやまない名作の作り手が、どんなゲームで遊び、育ってきたのかを知りたい!〈ATLUS〉橋野桂さんを作り上げた思い出のタイトル、ゲーム作りの心構えについて尋ねました。

illustration: Shuichi Hayashida / text: Neo Iida

ゲームクリエイター:〈ATLUS〉橋野桂

林田秀一 イラスト
はしの・かつら/1994年にアトラスに入社。『真・女神転生if…』以降開発に関わり、『真・女神転生Ⅲ-NOCTURNE』のディレクションを手がけた。『ペルソナ3』『ペルソナ4』『ペルソナ5』のディレクションとプロデューサーを兼任。現在『メタファー:リファンタジオ』を開発中。

思い出のゲーム

ゲーム『真・女神転生』
真・女神転生
©ATLUS ©SEGA All rights reserved.

学びがあるエンタメ。生きるヒントを教わった、自由で多様なゲーム

昔から『ウィザードリィ』や『MOTHER』のような物語性のあるRPGやシミュレーションゲームが好きでした。中でも惹かれたのが、『真・女神転生』。神につくか悪魔につくか、結末はプレイヤー次第という、勧善懲悪でない、当時にしては珍しいゲームでした。社会というのは決めつけが多いけれど、もっと自由かつ多様でいいんだと思わせてくれた。

学びがあり、それでいてエンタメで面白い。そのリッチさにしびれて、アトラスに入ろうと思いました。といっても、自分も『真・女神転生』を作りたい!というのとは少し違って、“あの作品を良しと思って世に出した人たちがいる!”というリスペクトが強かったですね。

ゲームを作る時はゴールから考えます。クリアした時、プレイヤーがどんな気持ちになるとやってよかったと思えるかな、と思いを巡らせる。そして結末を作り、ラストの手前にどんでん返しを置いて、辿り着くための肉付けをしていきます。意味付けも大事です。

『ペルソナ』はユング心理学における、社会上身につける仮面「ペルソナ」がテーマ。僕にはディレクターとしての顔、インタビューを受ける顔、家で家族と過ごす顔と、様々な顔がある。どれが本当の自分かといえば怪しいけれど、でも全部自分じゃないですか。それが生きていく力なんだろうなと思うんです。

制作時、親戚の高校生の悩み相談に乗ったことがあるんですが、親やクラスメイト、バイト仲間くらいしかコミュニティがなくて、チャンネルが少ないなと感じました。僕みたいな日頃ゲームを作っているおじさんが介入するだけでも、新しい顔ができますよね。いろんな人と付き合っていろんな顔を持てば、流されずに済む力が身につくはず。そのことをゲームを通じて伝えられたらと思って「コミュ」や「コープ」といったコミュニティを作るシステムに落とし込みました。

普段からゲームに限らず、アニメや映画、音楽など、世の中で爆発的にムーブメントになっている作品を見るようにしています。『進撃の巨人』や『鬼滅の刃』『呪術廻戦』『VIVANT』。みんなが面白いと夢中になっているものを、自分も同じように思えるか気になってしまう。ゲームも同じように夢中で遊んでほしいし、想像以上のものを感じて、リッチな体験をしてもらいたいですから。

橋野さんの代表作

ゲーム『ペルソナ5』
ペルソナ5
©ATLUS ©SEGA All rights reserved.
ゲーム『メタファー:リファンタジ』
メタファー:リファンタジオ
©ATLUS ©SEGA All rights reserved.