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空音央監督の初長編『HAPPYEND』がSF設定ながら、現実的な理由

NYと東京を拠点に活動する、空音央監督の初の長編映画『HAPPYEND』が完成。舞台になっているのは、地震アラートが鳴りっぱなしの近未来の日本。そんな中、人種や環境は異なりながらも、音楽を共有し、学園生活を送る5人を中心にした青春映画になっている。

photo: Masataka Kougo / text: Katsumi Watanabe

「映画の舞台が、日本の高校になったのは、僕にとっては必然的でした。大学生の頃、東日本大震災のニュースを見てから、社会の理不尽で、矛盾のある構造について考えるようになりました。その後、日本で蔓延っていたヘイトスピーチの動画を見て“日本って、こんなに差別的だったかな?”と感じ、関東大震災などの過去の事件を調べ、政治的な意識が芽生えていきました。2016年頃“過去を反省しないまま、また大地震が来たらどうなるのか?”と妄想を始め、それがストーリーの着想になったんです」

空音央

「音楽」も重要なテーマの一つだ。
「大学時代にパーティやライブの際、自分たちで低音を出すためのサブウーハーを台車に載せて運んでいたこともあって、主人公たちがデカい四角いものを運ぶというイメージは、最初からありました。劇伴を担当したリア・オユヤン・ルスリは、テクノやアンビエントのほか、クラシックの素養もあり、話が早かった。編集中の映像をスタジオで見ながら、シンセで音を出してもらい、アイデアを話して、それを持ち帰って仕上げてもらった。今はパレスチナと深く関わるようになったので、よくネットラジオ『Radio Alhara』を聴いています」

『HAPPYEND』
監督・脚本:空音央/出演:栗原颯人、日高由起刀ほか
青春映画にありがちなカタルシスを排除した演出が、物語に現実味を出すことに成功している。ギャグの間も小気味いい。10月4日、新宿ピカデリーほかで全国公開。