「映画の舞台が、日本の高校になったのは、僕にとっては必然的でした。大学生の頃、東日本大震災のニュースを見てから、社会の理不尽で、矛盾のある構造について考えるようになりました。その後、日本で蔓延っていたヘイトスピーチの動画を見て“日本って、こんなに差別的だったかな?”と感じ、関東大震災などの過去の事件を調べ、政治的な意識が芽生えていきました。2016年頃“過去を反省しないまま、また大地震が来たらどうなるのか?”と妄想を始め、それがストーリーの着想になったんです」
「音楽」も重要なテーマの一つだ。
「大学時代にパーティやライブの際、自分たちで低音を出すためのサブウーハーを台車に載せて運んでいたこともあって、主人公たちがデカい四角いものを運ぶというイメージは、最初からありました。劇伴を担当したリア・オユヤン・ルスリは、テクノやアンビエントのほか、クラシックの素養もあり、話が早かった。編集中の映像をスタジオで見ながら、シンセで音を出してもらい、アイデアを話して、それを持ち帰って仕上げてもらった。今はパレスチナと深く関わるようになったので、よくネットラジオ『Radio Alhara』を聴いています」